7章:母が隠していた秘密
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ラチェットの目に映った若葉の姿は、途方に暮れたような顔をして自身の足下へと視線を落として立ち尽くしていた。
何かを堪えるかのようにきつく握られている拳が若葉の心情をこれ以上ない程物語っていて、その姿を見たラチェットは子供なのだから我慢をしなくても良いのになぁと思いながら若葉へと近づくとそっと頭を撫でてやる。
「君も行ってくると良い」
「・・・・私は、後で行きます」
母の元に今行くことが間違いであると言うかのような若葉の言葉にラチェットは無言のまま若葉の頭を撫で続ける。
人間の医者ではないが、在り方は違えど医療に携わる者としてラチェットはこの不器用で頑固者の少女の心をどうやって解きほぐそうかと考えていた。
ある意味ではオートボットの誰よりも頑なで手を焼く存在だ。
けれどその相手をすることが少しも苦では無いと思える自分が居る事をラチェットは少しだけ誇らしく思った時、処置室での博士が混濁した意識で誰の名を呼んでいたのか思いだす。
「博士は君の事を呼んでいたよ」
独り言のようにポツリと言われた言葉を聞いた瞬間、若葉は信じられないと言うかのように目を開くのと同時に弾かれたかのように顔を上げてラチェットを見る。
縋るように向けられた若葉の目をラチェットはジッと見つめながら静かではあるがしっかりとした声音で告げた。
「若葉、若葉、と君の名を何度も呼んでいた。私は仕事柄博士と話すことが良くあってね、博士は君の事を話してくれていた。日本に独りで残してきてしまった君の事が心配だということも、ソレをメガトロンに相談して、メガトロンが君に内緒で部下に君の事を守らせていたことも知っている」
自分の知らないところで沢山の人達が動いていた事も驚いたが、まさか母が自分の事をラチェットに話していて、そしてメガトロンに相談していたなんて若葉は想像すらしていなかった。
出張だと言って母が家を空ける度に、誰かがひっそりと自分を守っていてくれていたと知った瞬間、自分のやっていることがどうしようもなく恥ずかしくて、そして情けないような気持ちになったときだ。
「君はまだ若い。時には選択を間違え、そしてソレを悔いるだろう・・・君自身が答えを見つけられず戸惑うこともたくさんある。そんな時は誰かの手助けが必要で、誰かの導きが必要なんだ」
「・・・私はいつも誰かに迷惑を掛けてばかりで」
「そうかもしれない。けれど、君にそんな風に頼られるということを嬉しく思っている者が少なからず居る。オプティマスもその一人だし・・・そして、メガトロンもそうだ。口や態度には出してはいないが、君の事を実の娘のように思っている。彼は本当にどうでも良い者に対しては無関心になるからね」
たった一人の人間の機嫌を損ねることを何よりも恐れているかのようなメガトロンの姿は、少しばかりラチェットにとっても意外だった。
破壊大帝と言われていたメガトロンらしくは無い行動と言動にも驚きだが、部下に対し二人への対応を徹底するということから、それだけメガトロンが博士と若葉の事を大切に想っているのだという何よりの証明でもあった。
ディセプティコンの中には、色々な考えからメガトロンにとって大切な存在が出来る事を良しとはしない存在が居る事は知っている。それがメガトロンの信頼厚い参謀の地位を持っている者達だ。
だが彼等も少なからず博士とその娘の存在を容認している。
「(こうなるのは少しばかり意外だったのが本心だが、彼等のそんな変化を喜ばしい)」
メガトロンと博士の事を切っ掛けに、少しずつではあるが人間との繋がりを持とうとするディセプティコン達の姿を見てNESTの者達、政府役人達、トランスフォーマー達の存在を知っている者達が機械生命体に対する認識を改めていっている事をラチェットは知っていた。
ディセプティコン達が人間に受け入れられていっている、その事を知ったオプティマスが何よりもそれを喜んでいる事をラチェットは知っていた。
「ラチェットさん」
か弱い声が自分の名を呼んだ事にラチェットの聴覚センサーが反応をする。
「・・・私、母さんと閣下の所に行ってきます」
至極当たり前の事のように若葉の口から出た閣下という単語にラチェットは絶句する事しか出ずに居る中、若葉は一礼をすると母とメガトロンが居るだろう病室へと向かって歩き出した。
残されたラチェットは今の言葉を笑うべきなのか、それとも堪えるべきなのか必死に考えるが、自分の中の感情を偽る事は結局出来なかった。
何かを堪えるかのようにきつく握られている拳が若葉の心情をこれ以上ない程物語っていて、その姿を見たラチェットは子供なのだから我慢をしなくても良いのになぁと思いながら若葉へと近づくとそっと頭を撫でてやる。
「君も行ってくると良い」
「・・・・私は、後で行きます」
母の元に今行くことが間違いであると言うかのような若葉の言葉にラチェットは無言のまま若葉の頭を撫で続ける。
人間の医者ではないが、在り方は違えど医療に携わる者としてラチェットはこの不器用で頑固者の少女の心をどうやって解きほぐそうかと考えていた。
ある意味ではオートボットの誰よりも頑なで手を焼く存在だ。
けれどその相手をすることが少しも苦では無いと思える自分が居る事をラチェットは少しだけ誇らしく思った時、処置室での博士が混濁した意識で誰の名を呼んでいたのか思いだす。
「博士は君の事を呼んでいたよ」
独り言のようにポツリと言われた言葉を聞いた瞬間、若葉は信じられないと言うかのように目を開くのと同時に弾かれたかのように顔を上げてラチェットを見る。
縋るように向けられた若葉の目をラチェットはジッと見つめながら静かではあるがしっかりとした声音で告げた。
「若葉、若葉、と君の名を何度も呼んでいた。私は仕事柄博士と話すことが良くあってね、博士は君の事を話してくれていた。日本に独りで残してきてしまった君の事が心配だということも、ソレをメガトロンに相談して、メガトロンが君に内緒で部下に君の事を守らせていたことも知っている」
自分の知らないところで沢山の人達が動いていた事も驚いたが、まさか母が自分の事をラチェットに話していて、そしてメガトロンに相談していたなんて若葉は想像すらしていなかった。
出張だと言って母が家を空ける度に、誰かがひっそりと自分を守っていてくれていたと知った瞬間、自分のやっていることがどうしようもなく恥ずかしくて、そして情けないような気持ちになったときだ。
「君はまだ若い。時には選択を間違え、そしてソレを悔いるだろう・・・君自身が答えを見つけられず戸惑うこともたくさんある。そんな時は誰かの手助けが必要で、誰かの導きが必要なんだ」
「・・・私はいつも誰かに迷惑を掛けてばかりで」
「そうかもしれない。けれど、君にそんな風に頼られるということを嬉しく思っている者が少なからず居る。オプティマスもその一人だし・・・そして、メガトロンもそうだ。口や態度には出してはいないが、君の事を実の娘のように思っている。彼は本当にどうでも良い者に対しては無関心になるからね」
たった一人の人間の機嫌を損ねることを何よりも恐れているかのようなメガトロンの姿は、少しばかりラチェットにとっても意外だった。
破壊大帝と言われていたメガトロンらしくは無い行動と言動にも驚きだが、部下に対し二人への対応を徹底するということから、それだけメガトロンが博士と若葉の事を大切に想っているのだという何よりの証明でもあった。
ディセプティコンの中には、色々な考えからメガトロンにとって大切な存在が出来る事を良しとはしない存在が居る事は知っている。それがメガトロンの信頼厚い参謀の地位を持っている者達だ。
だが彼等も少なからず博士とその娘の存在を容認している。
「(こうなるのは少しばかり意外だったのが本心だが、彼等のそんな変化を喜ばしい)」
メガトロンと博士の事を切っ掛けに、少しずつではあるが人間との繋がりを持とうとするディセプティコン達の姿を見てNESTの者達、政府役人達、トランスフォーマー達の存在を知っている者達が機械生命体に対する認識を改めていっている事をラチェットは知っていた。
ディセプティコン達が人間に受け入れられていっている、その事を知ったオプティマスが何よりもそれを喜んでいる事をラチェットは知っていた。
「ラチェットさん」
か弱い声が自分の名を呼んだ事にラチェットの聴覚センサーが反応をする。
「・・・私、母さんと閣下の所に行ってきます」
至極当たり前の事のように若葉の口から出た閣下という単語にラチェットは絶句する事しか出ずに居る中、若葉は一礼をすると母とメガトロンが居るだろう病室へと向かって歩き出した。
残されたラチェットは今の言葉を笑うべきなのか、それとも堪えるべきなのか必死に考えるが、自分の中の感情を偽る事は結局出来なかった。