36章 彼の葛藤
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自分の手を握っている若葉の手は小さい。
小さくて、暖かくて、それでいて柔らかく、サイドウェイズが力の入れ方を間違えれば一瞬で壊してしまいそうなほどだ。
「(こんな小さな手で俺のことを守ろうとしたんだよな)」
脳裏に浮かんだのは若葉の実父から必死にサイドウェイズを守ろうとした姿。
守るべき存在に守られてしまった自分。
あの時からずっとサイドウェイズの中では何かが燻り続けていた。
意味の解らぬソレが明確になったのは若葉が日本に帰国したと聞いたときだ。
知らぬ間にアメリカから手の届かない場所へと向かってしまったと聞いた瞬間、サイドウェイズの中で不明確だったソレが明確な形となった。
あぁ。嫌だ。
若葉が誰かの側で笑っているのは。
そう自覚したのと同時にサイドウェイズは決意した。
震える足を叱咤しながら向かったのは同じ斥候仲間のバリケードの元だ。突然現れた意外な人物にバリケードは一瞬だけ深紅の目を驚かせた後、すぐに嘲笑を浮かべながらその視線を手にしていたゴシップ雑誌へと向ける。
いつものサイドウェイズならばバリケードの態度に憶して踵を返していたがその日は違った。
「何のようだ?」
「相談をしたくて」
「悪いが俺の席はすでに満席だ。他を当たれ」
「それはできない。勿論、報酬なしに相談にのって欲しいと思っていない」
そう告げるのと同時にサイドウェイズは大量のお菓子を差し出す。
途端にバリケードの目が輝く。
「菓子がなくなるまでは聞いてやる」
あくまでも聞くだけだ。
案にそう告げられたがサイドウェイズはポツリポツリと自分の気持ちを口にする。
お菓子を咀嚼する音、頼りないサイドウェイズの声だけが部屋の中に響く。
どれくらいの間そうしていたのかは解らないが、最後のお菓子を食べ終えたバリケードがゴミを捨てたのと同時に口を開いた。
「前置きが長ぇ。お前の気持ちとかどうでも良い。端的に目的だけを話せ」
「わ、悪い」
「それで?お前は結局どうしたいんだ?」
鋭い視線がサイドウェイズを射貫く。
いつものサイドウェイズならば視線の強さから逃れるかのように顔をうつむけていただろうが、その日の彼は違った。
まっすぐバリケードの目を見つめる。
「俺は俺のできることをしたい」
あの子の隣に誰かが立つのは嫌だ。
「でも、今の俺にはできないことが多すぎる」
目を背け続けていた。けれど、これからは違う。
「ちゃんと向き合いたいんだ」
自分にできることを成し遂げたい。
若葉の隣に立つ自分が堂々としていたい。
自分とは異なる赤い目がまっすぐ自分を見つめてくることにバリケードは鼻で嗤う。
こういう奴は不快だ。
けれど嫌いではない。
「泣き言を一つでも言ったら即スクラップだ……それでも良いのならば俺が斥候のなんたるかを教えてやる」
ニタリと嗤ったその笑みにサイドウェイズは引きつった笑みを浮かべながらも力強く頷いた。
小さくて、暖かくて、それでいて柔らかく、サイドウェイズが力の入れ方を間違えれば一瞬で壊してしまいそうなほどだ。
「(こんな小さな手で俺のことを守ろうとしたんだよな)」
脳裏に浮かんだのは若葉の実父から必死にサイドウェイズを守ろうとした姿。
守るべき存在に守られてしまった自分。
あの時からずっとサイドウェイズの中では何かが燻り続けていた。
意味の解らぬソレが明確になったのは若葉が日本に帰国したと聞いたときだ。
知らぬ間にアメリカから手の届かない場所へと向かってしまったと聞いた瞬間、サイドウェイズの中で不明確だったソレが明確な形となった。
あぁ。嫌だ。
若葉が誰かの側で笑っているのは。
そう自覚したのと同時にサイドウェイズは決意した。
震える足を叱咤しながら向かったのは同じ斥候仲間のバリケードの元だ。突然現れた意外な人物にバリケードは一瞬だけ深紅の目を驚かせた後、すぐに嘲笑を浮かべながらその視線を手にしていたゴシップ雑誌へと向ける。
いつものサイドウェイズならばバリケードの態度に憶して踵を返していたがその日は違った。
「何のようだ?」
「相談をしたくて」
「悪いが俺の席はすでに満席だ。他を当たれ」
「それはできない。勿論、報酬なしに相談にのって欲しいと思っていない」
そう告げるのと同時にサイドウェイズは大量のお菓子を差し出す。
途端にバリケードの目が輝く。
「菓子がなくなるまでは聞いてやる」
あくまでも聞くだけだ。
案にそう告げられたがサイドウェイズはポツリポツリと自分の気持ちを口にする。
お菓子を咀嚼する音、頼りないサイドウェイズの声だけが部屋の中に響く。
どれくらいの間そうしていたのかは解らないが、最後のお菓子を食べ終えたバリケードがゴミを捨てたのと同時に口を開いた。
「前置きが長ぇ。お前の気持ちとかどうでも良い。端的に目的だけを話せ」
「わ、悪い」
「それで?お前は結局どうしたいんだ?」
鋭い視線がサイドウェイズを射貫く。
いつものサイドウェイズならば視線の強さから逃れるかのように顔をうつむけていただろうが、その日の彼は違った。
まっすぐバリケードの目を見つめる。
「俺は俺のできることをしたい」
あの子の隣に誰かが立つのは嫌だ。
「でも、今の俺にはできないことが多すぎる」
目を背け続けていた。けれど、これからは違う。
「ちゃんと向き合いたいんだ」
自分にできることを成し遂げたい。
若葉の隣に立つ自分が堂々としていたい。
自分とは異なる赤い目がまっすぐ自分を見つめてくることにバリケードは鼻で嗤う。
こういう奴は不快だ。
けれど嫌いではない。
「泣き言を一つでも言ったら即スクラップだ……それでも良いのならば俺が斥候のなんたるかを教えてやる」
ニタリと嗤ったその笑みにサイドウェイズは引きつった笑みを浮かべながらも力強く頷いた。
