35章 その再会は幸か不幸か
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新しい拠点で生活を始めた若葉が最初に感じたのは”平穏”だ。
大都市の中心に密かに用意されていた拠点は表向きは害の無い一般施設を装っているが、エレベーターで地下に降りると一変する。
銃を所持した物々しい軍人達やらが行き交う物々しい軍事施設の顔へと変貌している。
そんな施設の片隅で若葉は暮らしていた。
「施設内であれば自由に出歩いて構わんぞ」
意外なことにメガトロンは若葉に行動制限をしなかった。
今までに対応に若葉は内心首をかしげたが、この施設は様々なセキュリティがあるため外に出るのは容易なことでは無い。
尤も若葉自身、施設の外に出るつもりはない。それは此処が日本ではないからだ。仮に外に出たとしても拙い英語しかしゃべることのできない自分がどんな目に遭うのかなど解りきっていた。
「まぁやることは変わらないし」
日中はオンラインで授業を学び、それが終わればメガトロンに連れられて母の見舞いに向かう。
食事はメガトロンが用意したり、若葉が作っていた。
デリバリーも頼めるとメガトロンが言っていたので、一度だけデリバリーを使った事もある。
TVドラマで見たことがある中華デリバリーを若葉は何気なく頼んだ。
「ご、ご注文の品をお届けに参りました」
紙のように白い顔色、ダラダラと冷や汗を流しながら口角を必死に上げて笑っている配達員が若葉の部屋の前まで注文品を持ってきてくれた。
今にも倒れてしまいそうな配達員は恐怖で震えていた。
その理由は両サイドに武装した軍人が鋭い視線で配達員の一挙手一投足を監視していたからだ。あまりにもその姿がかわいそうであった為、若葉はデリバリーを頼むことはしないことを決めた。
外に出ない、他人と会わない、そんな生活は息が詰まると思っていた若葉であったが、そこは流石のメガトロンと言うべきなのかすぐに対処をした。
若葉の自由時間になるとスコルポノックやらドリラーが主と共に遊びに来る。
他愛ない話をしたり、一緒にゲームをしたり、映画を見たり、有意義な時間を過ごしている。先日、怪我が治ったスタースクリームがやって来て「ここはいつから幼稚園になったんだ?」と揶揄ってドローン達から攻撃をされている。
「貴方は来てくれないね」
脳裏に浮かんだ一人の青年の姿。
他人からの視線を気にしている少しばかり卑屈で、世渡りが不器用で、優しい人。
彼は若葉の元には来ていない。
お菓子目当てでやって来たバリケードが意気消沈している若葉に気づくと、面倒くさいという顔をしつつも話しを聞いてくれた。
話を聞き終えたバリケードは手錠を取り出すと「連行してくるか?」と提案してきたが若葉はそれを丁重に断った。
彼の意思でここに来てくれなければ意味がないことのように感じたのだ。
誰かからここに連れてこられれば”義務感”になってしまう。
それは嫌だと若葉が思った時だ。
「……あれ?」
何故、自分は義務感で彼が此処に来ることを嫌なのだろうか?
そう考えたとき冷たい何かが背筋を伝い落ちていく感覚に若葉はヒュッと息を呑む。
次いで若葉の思考を埋め尽くしたのはかつて母と交際していた男達の姿。
母との関係を壊した若葉に対して向けられる敵意。
去って行く恋人の後ろ姿を見つめる母の後ろ姿。
過去の記憶が鮮明に思い出されるのと同時にこれ以上、この考えを理解しては駄目だ、と脳が警告を出す。
「母親を不幸にしたのに自分は幸せになるの?」
暗く淀んだ自分の声に若葉は何もできずに立ち尽くしていたときだ。
来客を知らせるインターフォンの音が鳴ったため、若葉はひどくゆっくりとした動きで玄関に向かいロックを解除するとドアを開く。
大都市の中心に密かに用意されていた拠点は表向きは害の無い一般施設を装っているが、エレベーターで地下に降りると一変する。
銃を所持した物々しい軍人達やらが行き交う物々しい軍事施設の顔へと変貌している。
そんな施設の片隅で若葉は暮らしていた。
「施設内であれば自由に出歩いて構わんぞ」
意外なことにメガトロンは若葉に行動制限をしなかった。
今までに対応に若葉は内心首をかしげたが、この施設は様々なセキュリティがあるため外に出るのは容易なことでは無い。
尤も若葉自身、施設の外に出るつもりはない。それは此処が日本ではないからだ。仮に外に出たとしても拙い英語しかしゃべることのできない自分がどんな目に遭うのかなど解りきっていた。
「まぁやることは変わらないし」
日中はオンラインで授業を学び、それが終わればメガトロンに連れられて母の見舞いに向かう。
食事はメガトロンが用意したり、若葉が作っていた。
デリバリーも頼めるとメガトロンが言っていたので、一度だけデリバリーを使った事もある。
TVドラマで見たことがある中華デリバリーを若葉は何気なく頼んだ。
「ご、ご注文の品をお届けに参りました」
紙のように白い顔色、ダラダラと冷や汗を流しながら口角を必死に上げて笑っている配達員が若葉の部屋の前まで注文品を持ってきてくれた。
今にも倒れてしまいそうな配達員は恐怖で震えていた。
その理由は両サイドに武装した軍人が鋭い視線で配達員の一挙手一投足を監視していたからだ。あまりにもその姿がかわいそうであった為、若葉はデリバリーを頼むことはしないことを決めた。
外に出ない、他人と会わない、そんな生活は息が詰まると思っていた若葉であったが、そこは流石のメガトロンと言うべきなのかすぐに対処をした。
若葉の自由時間になるとスコルポノックやらドリラーが主と共に遊びに来る。
他愛ない話をしたり、一緒にゲームをしたり、映画を見たり、有意義な時間を過ごしている。先日、怪我が治ったスタースクリームがやって来て「ここはいつから幼稚園になったんだ?」と揶揄ってドローン達から攻撃をされている。
「貴方は来てくれないね」
脳裏に浮かんだ一人の青年の姿。
他人からの視線を気にしている少しばかり卑屈で、世渡りが不器用で、優しい人。
彼は若葉の元には来ていない。
お菓子目当てでやって来たバリケードが意気消沈している若葉に気づくと、面倒くさいという顔をしつつも話しを聞いてくれた。
話を聞き終えたバリケードは手錠を取り出すと「連行してくるか?」と提案してきたが若葉はそれを丁重に断った。
彼の意思でここに来てくれなければ意味がないことのように感じたのだ。
誰かからここに連れてこられれば”義務感”になってしまう。
それは嫌だと若葉が思った時だ。
「……あれ?」
何故、自分は義務感で彼が此処に来ることを嫌なのだろうか?
そう考えたとき冷たい何かが背筋を伝い落ちていく感覚に若葉はヒュッと息を呑む。
次いで若葉の思考を埋め尽くしたのはかつて母と交際していた男達の姿。
母との関係を壊した若葉に対して向けられる敵意。
去って行く恋人の後ろ姿を見つめる母の後ろ姿。
過去の記憶が鮮明に思い出されるのと同時にこれ以上、この考えを理解しては駄目だ、と脳が警告を出す。
「母親を不幸にしたのに自分は幸せになるの?」
暗く淀んだ自分の声に若葉は何もできずに立ち尽くしていたときだ。
来客を知らせるインターフォンの音が鳴ったため、若葉はひどくゆっくりとした動きで玄関に向かいロックを解除するとドアを開く。
