34章:願いは手の中に
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
メガトロンは物事をはっきりとするタイプだ。
そんな人物が問いかけに対する明確な返答をしなかった。そのことに気づいた若葉が声を出すよりも早く、母の穏やかな声が病室に響く。
「触ってみる?」
「え?」
突然のことに驚いた顔をしている若葉に向かい、母は満面の笑みを浮かべながら自身の腹部を撫でる。
「えぇっと……」
私が触っても良いのか、触れても許されるのか?と言うかのような目をした若葉に向かい、母はおいでと言うかのように手招きをする。
その手に引き寄せられるかのように若葉は恐る恐る手を伸ばす。
最初に指先が触れ、ゆっくりと掌が添えると伝わってきた母の体温は思っていたよりも熱かったことに若葉が驚いていたときだ。
掌に突然、トンッと軽い衝撃が伝わってきたことに若葉は母に触れていた手を勢いよく引き離す。
「え?なに?……なに!?」
混乱した様子のまま自身の手と母の腹を交互に見る若葉の姿を見た母が声を上げて笑う。
「そっかぁ。触れたのがお姉ちゃんだって解ったのねぇ」
両手で自身の腹を撫でる母の姿を見た若葉は先ほどの衝撃は、母の中に居る赤子からの反応だったことに気づく。
ソレを自覚した瞬間、言いようのない感情が胸を支配する。
幸せでいて、それでいて少しばかりの息苦しさが体の中に浸透していく感覚、母の腹部へと若葉が視線を向けていたときだ。
「……俺が触れても何の反応もないのは何故だ?」
酷く不満げな声が聞こえたことに母と若葉は驚いたようにパチパチと無言のまま瞬きをした後、声の主へと視線を向ける。
そこには今までないほど眉を寄せ不機嫌そうに腕を組んでいるメガトロンの姿があった。
けれどいつもはピンッと伸ばされている背中は少しばかり丸められており、肩も下がっている気がした若葉が思わず声を上げて笑うと、メガトロンは不機嫌そうに目を眇めると若葉の額をペシリと軽く叩く。
「笑った罰だ。何か飲み物を買ってこい。俺には無糖のコーヒー、こいつは水、お前は好きな物を買え」
妙に分厚い財布を渡してきたメガトロンに対し、笑ってしまったという罪悪感があった為か若葉は素直に従う。
若葉が病室を出たのと同時に笑っていた2人の雰囲気は変わる。
「解っているのでしょう?」
「黙れ。俺たちも軍医も全力で対処している」
「駄目よ。無駄な労力は使わないで……私を愛するのならばこそ」
メガトロンが言うだろう言葉を制止するかのように、ソレは許されないのだと咎めるかのような鋭い声で最愛は続きを言わせない。
「子供達をたくさん、たくさん、愛してあげて」
私の分まで。
満ち足りた笑みを浮かべて微笑むメガトロンの最愛は自身の運命を受け入れていた。
残酷なまでに、当たり前のことのように、ソレが自分の宿命だったかのように。
「お願い」
脳裏に浮かぶのは生まれてから今日まで育ってきた若葉の姿。
今後の姿を見守れないことが、見る事ができないことがただ、悲しい。
まだ見ぬ我が子の顔も恐らく自分は見ることすら叶わぬことくらい解っている。
名を呼べぬまま、どんな生き方をするのかも知らぬまま別れてしまうことがただ、悲しい。
幼い我が子達を残したまま命絶える我が身が嘆かわしい。
助けを求めるかのように、縋るように伸ばされた手をメガトロンは壊れ物に触れるかのようにそっと触れれば、伝わってくる相手の温もりに2人は何も言わず、ただ、黙って愛する者の顔を見つめ続けた。
その目から溢れる涙も、胸を締め付ける痛みも、これから訪れるだろう最愛を失った喪質感も、今だけは忘れるかのように。
そんな人物が問いかけに対する明確な返答をしなかった。そのことに気づいた若葉が声を出すよりも早く、母の穏やかな声が病室に響く。
「触ってみる?」
「え?」
突然のことに驚いた顔をしている若葉に向かい、母は満面の笑みを浮かべながら自身の腹部を撫でる。
「えぇっと……」
私が触っても良いのか、触れても許されるのか?と言うかのような目をした若葉に向かい、母はおいでと言うかのように手招きをする。
その手に引き寄せられるかのように若葉は恐る恐る手を伸ばす。
最初に指先が触れ、ゆっくりと掌が添えると伝わってきた母の体温は思っていたよりも熱かったことに若葉が驚いていたときだ。
掌に突然、トンッと軽い衝撃が伝わってきたことに若葉は母に触れていた手を勢いよく引き離す。
「え?なに?……なに!?」
混乱した様子のまま自身の手と母の腹を交互に見る若葉の姿を見た母が声を上げて笑う。
「そっかぁ。触れたのがお姉ちゃんだって解ったのねぇ」
両手で自身の腹を撫でる母の姿を見た若葉は先ほどの衝撃は、母の中に居る赤子からの反応だったことに気づく。
ソレを自覚した瞬間、言いようのない感情が胸を支配する。
幸せでいて、それでいて少しばかりの息苦しさが体の中に浸透していく感覚、母の腹部へと若葉が視線を向けていたときだ。
「……俺が触れても何の反応もないのは何故だ?」
酷く不満げな声が聞こえたことに母と若葉は驚いたようにパチパチと無言のまま瞬きをした後、声の主へと視線を向ける。
そこには今までないほど眉を寄せ不機嫌そうに腕を組んでいるメガトロンの姿があった。
けれどいつもはピンッと伸ばされている背中は少しばかり丸められており、肩も下がっている気がした若葉が思わず声を上げて笑うと、メガトロンは不機嫌そうに目を眇めると若葉の額をペシリと軽く叩く。
「笑った罰だ。何か飲み物を買ってこい。俺には無糖のコーヒー、こいつは水、お前は好きな物を買え」
妙に分厚い財布を渡してきたメガトロンに対し、笑ってしまったという罪悪感があった為か若葉は素直に従う。
若葉が病室を出たのと同時に笑っていた2人の雰囲気は変わる。
「解っているのでしょう?」
「黙れ。俺たちも軍医も全力で対処している」
「駄目よ。無駄な労力は使わないで……私を愛するのならばこそ」
メガトロンが言うだろう言葉を制止するかのように、ソレは許されないのだと咎めるかのような鋭い声で最愛は続きを言わせない。
「子供達をたくさん、たくさん、愛してあげて」
私の分まで。
満ち足りた笑みを浮かべて微笑むメガトロンの最愛は自身の運命を受け入れていた。
残酷なまでに、当たり前のことのように、ソレが自分の宿命だったかのように。
「お願い」
脳裏に浮かぶのは生まれてから今日まで育ってきた若葉の姿。
今後の姿を見守れないことが、見る事ができないことがただ、悲しい。
まだ見ぬ我が子の顔も恐らく自分は見ることすら叶わぬことくらい解っている。
名を呼べぬまま、どんな生き方をするのかも知らぬまま別れてしまうことがただ、悲しい。
幼い我が子達を残したまま命絶える我が身が嘆かわしい。
助けを求めるかのように、縋るように伸ばされた手をメガトロンは壊れ物に触れるかのようにそっと触れれば、伝わってくる相手の温もりに2人は何も言わず、ただ、黙って愛する者の顔を見つめ続けた。
その目から溢れる涙も、胸を締め付ける痛みも、これから訪れるだろう最愛を失った喪質感も、今だけは忘れるかのように。
