34章:願いは手の中に
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
久方ぶりに見た母はベッドの上で穏やかな顔をして眠っている。
ただ、その体には点滴やら医療機器などが刺さっており、痛々しいその姿に若葉は言葉を失って立ち尽くしていたときだ。
人の気配に気づいたらしい母の目がゆっくりと開かれ、入り口へと向けられる。
そこに立って居た人物の姿を見た瞬間、母の双眸が大きく見開かれた。
「若葉ちゃん?」
この場に若葉が居る事が信じられない、そう言うかのような顔をした母が掠れた声で若葉の名を呼ぶ。
その声にすぐに応えられなかった若葉であったが、小さく頷くのと同時に母が体を起こそうとした事に気づいた若葉が駆け寄るも早く、若葉の側を足早にメガトロンが通り過ぎる。
起き上がろうとした母の肩を押さえベッドに横になるように告げるメガトロンの言葉に対し、母は抗うかのように自身の邪魔をするメガトロンを押しのけ続けており、さすがに今の母に無理をさせるわけにはいかないと判断した若葉は母の側へと近づく。
「母さん」
メガトロンと同じく母の肩に手を置きベッドに横になるように促す。
触れた場所から伝わってくる若葉の体温に母はゆるく息を吐き出すのと同時に体から力を抜いた。
勢いよくベッドへと倒れそうになる母の姿に若葉が動くよりも早くメガトロンが母の背を支え、ゆっくりとベッドに体を横たえる。
2人の姿を見つめながら若葉は先ほど母に触れた掌をきつく握りしめた。
「(痩せてる)」
母に触れた掌に伝わってきた感触は硬い骨の感触だった。
元々痩せていた母であったが骨の感触がダイレクトに伝わってくるほど痩せてはいなかったはずだ。母の顔をよく見てみると頬は痩け、目は微かに落ちくぼんでおり、明らかに病人という姿に若葉は言葉を失う。
「若葉」
自分の名を呼んだ母の方へと若葉は恐る恐る視線を向ける。
母と目が合った瞬間、母の目が嬉しそうに柔らかく細められた。
「びっくりしちゃった?」
困ったように微笑む母に向かい若葉は頷く。
「そうよねぇ……でもね、見た目ほど体調が悪いって訳じゃないの」
「摂取した栄養が全て赤子に流れていると軍医が言っていた」
母の言葉を補うかのようにメガトロンが告げた言葉に若葉は納得したかのように一つ頷く。
「ご飯もきちんと食べているのだけれど、それでもやっぱり体が子供を優先してしまうのは人間が持って生まれた本能ね」
楽しげに笑った母の手が自身の腹部を撫でる。
やせ細った手首、青白い腕に刺さっている管、至る所にある注射の跡、見るからに病人の腕であるのに、その腕が、その手が愛おしげに撫でている場所は若葉が最後に見たときよりも膨らんでいた。
「人間の妊娠経過とは少しばかり違うらしいわ」
ちらりとメガトロンへと目配せをした母につられるかのように若葉もメガトロンへと視線を向けると、彼はしかめっ面をしながらガリッと乱暴に頭を掻くと口を開く。
「お前達と俺達とでは体の構造は違うからな……いくらこの姿がお前達に”寄せて”いたとしても”本質”は異なっている。いわば異種族が交わった事によって生まれた新たな存在に関して弊害が出るのは仕方のないことだ」
人間と金属生命体は根本的に違う存在だ。
故に二者の間に新しい生命が生まれることはない、と誰もが判断していた。
けれど現実とは実に不可思議なもので、誰もが予想もしない結果をもたらしている。
「母さんは大丈夫なんだよね?」
不安げな面持ちでメガトロンに問いかけた若葉に対してメガトロンはしっかりと頷く。
「あぁ。問題はない」
その返答に若葉は妙な違和感を感じ取った。
ただ、その体には点滴やら医療機器などが刺さっており、痛々しいその姿に若葉は言葉を失って立ち尽くしていたときだ。
人の気配に気づいたらしい母の目がゆっくりと開かれ、入り口へと向けられる。
そこに立って居た人物の姿を見た瞬間、母の双眸が大きく見開かれた。
「若葉ちゃん?」
この場に若葉が居る事が信じられない、そう言うかのような顔をした母が掠れた声で若葉の名を呼ぶ。
その声にすぐに応えられなかった若葉であったが、小さく頷くのと同時に母が体を起こそうとした事に気づいた若葉が駆け寄るも早く、若葉の側を足早にメガトロンが通り過ぎる。
起き上がろうとした母の肩を押さえベッドに横になるように告げるメガトロンの言葉に対し、母は抗うかのように自身の邪魔をするメガトロンを押しのけ続けており、さすがに今の母に無理をさせるわけにはいかないと判断した若葉は母の側へと近づく。
「母さん」
メガトロンと同じく母の肩に手を置きベッドに横になるように促す。
触れた場所から伝わってくる若葉の体温に母はゆるく息を吐き出すのと同時に体から力を抜いた。
勢いよくベッドへと倒れそうになる母の姿に若葉が動くよりも早くメガトロンが母の背を支え、ゆっくりとベッドに体を横たえる。
2人の姿を見つめながら若葉は先ほど母に触れた掌をきつく握りしめた。
「(痩せてる)」
母に触れた掌に伝わってきた感触は硬い骨の感触だった。
元々痩せていた母であったが骨の感触がダイレクトに伝わってくるほど痩せてはいなかったはずだ。母の顔をよく見てみると頬は痩け、目は微かに落ちくぼんでおり、明らかに病人という姿に若葉は言葉を失う。
「若葉」
自分の名を呼んだ母の方へと若葉は恐る恐る視線を向ける。
母と目が合った瞬間、母の目が嬉しそうに柔らかく細められた。
「びっくりしちゃった?」
困ったように微笑む母に向かい若葉は頷く。
「そうよねぇ……でもね、見た目ほど体調が悪いって訳じゃないの」
「摂取した栄養が全て赤子に流れていると軍医が言っていた」
母の言葉を補うかのようにメガトロンが告げた言葉に若葉は納得したかのように一つ頷く。
「ご飯もきちんと食べているのだけれど、それでもやっぱり体が子供を優先してしまうのは人間が持って生まれた本能ね」
楽しげに笑った母の手が自身の腹部を撫でる。
やせ細った手首、青白い腕に刺さっている管、至る所にある注射の跡、見るからに病人の腕であるのに、その腕が、その手が愛おしげに撫でている場所は若葉が最後に見たときよりも膨らんでいた。
「人間の妊娠経過とは少しばかり違うらしいわ」
ちらりとメガトロンへと目配せをした母につられるかのように若葉もメガトロンへと視線を向けると、彼はしかめっ面をしながらガリッと乱暴に頭を掻くと口を開く。
「お前達と俺達とでは体の構造は違うからな……いくらこの姿がお前達に”寄せて”いたとしても”本質”は異なっている。いわば異種族が交わった事によって生まれた新たな存在に関して弊害が出るのは仕方のないことだ」
人間と金属生命体は根本的に違う存在だ。
故に二者の間に新しい生命が生まれることはない、と誰もが判断していた。
けれど現実とは実に不可思議なもので、誰もが予想もしない結果をもたらしている。
「母さんは大丈夫なんだよね?」
不安げな面持ちでメガトロンに問いかけた若葉に対してメガトロンはしっかりと頷く。
「あぁ。問題はない」
その返答に若葉は妙な違和感を感じ取った。
