避難警報が発令されているのか空港には車の数が少ない。飛行機の離着陸も無い滑走路を我が物顔で走行していたロックダウンはある格納庫へと入るとゆっくりと走行スピードを落とす。
　格納庫に入るのと同時にシャッターが閉じられるのを確認したロックダウンがドアを開けた為、若葉は恐る恐る外の様子を窺おうとした時だ。

　「小娘。お前は俺の後ろに居ろ」

鋭い声でそう告げたのはスタースクリームだ。
　先ほどまでピクリとも動かなかった男が突然、何事もなかったかのように体を起こした事に若葉は悲鳴を上げそうになったがソレを必死に堪える。
　ここで悲鳴なんて上げてしまえばスタースクリームが何をするのか解らないと思ったからだ。

　『予定通り空港へと到着している。後は飛行機に乗るだけだろう？何をそんなに警戒をしている？』

　「黙れ。貴様に答える義理はない」

フンっと鼻を鳴らしたスタースクリームは車から降りると辺りを見渡す。
　少し離れたところにイェーガー一家の姿があり、目が合うとヒラヒラと手を振りながら笑いかけてきてくれたケイドに対し若葉はすぐに応えることができなかった。
　彼らは知らないのだ。
　自分たちが若葉を守るために囮として使われていることを。

　「平静を装え」

　「え？」

　「あいつ等に知られれば厄介だ」

　「けどッ！！」

　「一家揃って無事に国に帰らせたいのならば言うとおりにしろ」

淡々と告げられるスタースクリームの言葉はいつになく棘のあるものだ。
　スタースクリームの顔を見上げてみると赤い目が常に何かを警戒しているかのように忙しなく動いていることから、彼が敵襲があることを確信しているのだと若葉は理解すると、ケイドに向かいぎこちなく微笑みながら手を振る。

　「体は大丈夫なの？」

　「動くのに支障はない」

言葉少なくそう告げたスタースクリームが歩き出す。
　慌てて車から降りた若葉がスタースクリームの後ろを少し遅れてついて行く。
　向かう先に居るのはサイドスワイプで、彼は青い目を鋭く細めながら近づいてくるスタースクリームを見つめていたが意を決したかのように荒々し足取りでこちらへと近づいてきた。

　「ディセプティコンの本質は変わらねぇってことだな」

スタースクリームがサイドスワイプの前で立ち止まるのと同時に、サイドスワイプはスタースクリームの胸ぐらを乱暴に掴み上げると吐き捨てるかのような口調で話しかける。
　殺意の高さを表すかのようにギラリと光る青い目をジッと見つめていると、サイドスワイプの視線が若葉へと向けられた。
　突然のことにビクリと肩を震わせた若葉の姿にサイドスワイプは蔑むかのような顔をした。

　「何怖がっているんだよ。お前は死なねぇのに」

ケイド達が犠牲になるのだから。
　声には出さないがそう言われた気がした若葉は目を伏せた時だ。

　「小僧。俺達を恨むのは構わん。暴言を吐くのも許そう……だが若葉への侮辱は認められんぞ」

スタースクリームの声に若葉は驚いたようにスタースクリームを見上げた時だ。

　「黙れよッ！！！」

言い放つのと同時にサイドスワイプの拳がスタースクリームの顔面へと叩きつけられた。
　その気になればソレを避けられるはずなのにスタースクリームはあえて受けたかのように若葉には見えた。