31章 天秤は傾く
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泣き腫れて痛々しい目元。
けれどその目に宿る強い意志を感じ取ったロックダウンは少しばかり若葉に対する認識を改める。
若葉という人間を見た最初の印象は”博士とは似ても似つかぬ普通の人間”という評価だ。
『(あの博士もそうだったな)』
手弱女そうな外見と穏やかな口調から件の博士を御すことなど容易いと思えるが、実際のところはそうではない。
見かけとは裏腹に内情には益荒男を宿しており、下手なことをしたのならば相応の返しをしてくる女傑だ。
そんな人物の娘だからこそロックダウンもそれなりに警戒をしていたのだが、若葉自身は母親と外見こそ似ているものの性格はまるで似ていなかった。そのことに少しばかり落胆しつつも、スタースクリームと和気藹々としている姿を見ると少しばかり認識を改めた。
けれど結局のところは博士を超えることはできないだろう、というのがロックダウンが最終的に出した結論だ。
『(てっきり心が折れたものだと思ったのだが……)』
自分をまっすぐ見据えてくるその目には恐怖こそあるが、けれど揺るがぬ意思が確かにある事に気づいたロックダウンは内心『面白い』と思うと若葉が何をこれから言うのか期待する。
『お嬢さん。何か言いたいことが?』
「はい……母達の避難はどれくらい終わっていますか?」
出てきた言葉に対しロックダウンはすぐに返答できなかった。
答えなどすでに出ているが、それを伝えたところで若葉にはどうすることもできない。
故に言葉巧みに納得させ、大人しく飛行機に乗せてしまおう。
そう結論したロックダウンは静かな声で告げる。
『ほぼ終わっているな』
具体的なことは何も言わず、漠然とした言葉ではあるが納得できる言葉を口にしたロックダウンは若葉がこの返答で納得しただろうと判断したときだ。
「完全ではないのですね」
若葉から返された感情の宿らぬ声。
それは博士ととてもよく似ていて、ロックダウンは自分が失態をしたことを悟る。
「避難が完了していないのならば……敵の注意をこちらに引きつけておく必要がありますよね。それこそがフォールン様の狙いだから」
フォールンは若葉が囮役にされたことに気づくことも想定してる。あの人はそういう人なのだ。
自分たちの思惑に若葉が気づき、そしてそのために動くことも解った上で策を練っている。
「ロックダウンさん。母達の避難はどれくらい終わっていますか?」
再度問われた言葉。
全てを見透かしているかのような口調で若葉が答えを求めてきたことに対し、ロックダウンは早々に白旗を上げる。
『博士の避難完了は現時点では60%だ』
「それは……」
何とも微妙な数値に若葉が返す言葉を見つけられずにいると、察したらしいロックダウンが答えをくれる。
『当初の予定よりも大幅に遅れている。博士の体調は問題ないから安心すると良い。……本来ならばお嬢さんが日本に居る間に避難が完了しているはずだったのだがな。雇い主からはお嬢さんの身に危険が迫った場合は俺の独断で早急に退避しろとのことだ』
「その場合、母どうなりますか?」
『……さぁな。俺のような雇われには情報は入ってこない』
「嘘」
にっこりと微笑みながら若葉が告げた言葉に対し、ロックダウンはすぐに反応することができなかった。
けれどその目に宿る強い意志を感じ取ったロックダウンは少しばかり若葉に対する認識を改める。
若葉という人間を見た最初の印象は”博士とは似ても似つかぬ普通の人間”という評価だ。
『(あの博士もそうだったな)』
手弱女そうな外見と穏やかな口調から件の博士を御すことなど容易いと思えるが、実際のところはそうではない。
見かけとは裏腹に内情には益荒男を宿しており、下手なことをしたのならば相応の返しをしてくる女傑だ。
そんな人物の娘だからこそロックダウンもそれなりに警戒をしていたのだが、若葉自身は母親と外見こそ似ているものの性格はまるで似ていなかった。そのことに少しばかり落胆しつつも、スタースクリームと和気藹々としている姿を見ると少しばかり認識を改めた。
けれど結局のところは博士を超えることはできないだろう、というのがロックダウンが最終的に出した結論だ。
『(てっきり心が折れたものだと思ったのだが……)』
自分をまっすぐ見据えてくるその目には恐怖こそあるが、けれど揺るがぬ意思が確かにある事に気づいたロックダウンは内心『面白い』と思うと若葉が何をこれから言うのか期待する。
『お嬢さん。何か言いたいことが?』
「はい……母達の避難はどれくらい終わっていますか?」
出てきた言葉に対しロックダウンはすぐに返答できなかった。
答えなどすでに出ているが、それを伝えたところで若葉にはどうすることもできない。
故に言葉巧みに納得させ、大人しく飛行機に乗せてしまおう。
そう結論したロックダウンは静かな声で告げる。
『ほぼ終わっているな』
具体的なことは何も言わず、漠然とした言葉ではあるが納得できる言葉を口にしたロックダウンは若葉がこの返答で納得しただろうと判断したときだ。
「完全ではないのですね」
若葉から返された感情の宿らぬ声。
それは博士ととてもよく似ていて、ロックダウンは自分が失態をしたことを悟る。
「避難が完了していないのならば……敵の注意をこちらに引きつけておく必要がありますよね。それこそがフォールン様の狙いだから」
フォールンは若葉が囮役にされたことに気づくことも想定してる。あの人はそういう人なのだ。
自分たちの思惑に若葉が気づき、そしてそのために動くことも解った上で策を練っている。
「ロックダウンさん。母達の避難はどれくらい終わっていますか?」
再度問われた言葉。
全てを見透かしているかのような口調で若葉が答えを求めてきたことに対し、ロックダウンは早々に白旗を上げる。
『博士の避難完了は現時点では60%だ』
「それは……」
何とも微妙な数値に若葉が返す言葉を見つけられずにいると、察したらしいロックダウンが答えをくれる。
『当初の予定よりも大幅に遅れている。博士の体調は問題ないから安心すると良い。……本来ならばお嬢さんが日本に居る間に避難が完了しているはずだったのだがな。雇い主からはお嬢さんの身に危険が迫った場合は俺の独断で早急に退避しろとのことだ』
「その場合、母どうなりますか?」
『……さぁな。俺のような雇われには情報は入ってこない』
「嘘」
にっこりと微笑みながら若葉が告げた言葉に対し、ロックダウンはすぐに反応することができなかった。
