31章 天秤は傾く
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相変わらず法定速度を無視したままロックダウンは空港へと向かって走向している。
車内には先ほどまで流れていたはずのラジオは聞こえてはこない。
それは自分たちの状況が悪いことを若葉に伝えないための配慮なのか、もしくはすでに包囲網が敷かれており逃げることが困難なことを知らせないようにしているのか、もしくは何らかの思惑があるからなのかは解らない。
ロックダウンという金属生命体の事を若葉は知らないが故の判断だ。
縋るようにスタースクリームを抱きしめる。
「(酷い姿)」
着ている衣服はスタースクリーム曰くお気に入りのブランドのものだったはずだ。
若葉がブランドのサイトをこっそり調べてみたら目を剥く金額が表示されており、ソレを見たスタースクリームが勝ち誇った顔をしていた。
その衣服は今も無残なほどに所々裂けていたり、焼け焦げていたりしている。
「(それでも生きていてくれる)」
衣服越しに伝わってくる温もりが、微かに呼吸している胸が上下していることが、若葉にはどうしようもないほど安心できた。
『安心すると良い。スタースクリームの自己修復能力は高いからな。こいつが回復に集中すると宣言した以上、それなりの状態にまで回復するだろうさ』
「そうなんですか?」
『メガトロンに腕を引き千切られたがくっつけたら直ったらしいと聞いている』
ロックダウンとしては安心させるために告げた他愛ない向かい話なのだが、それを聞かされた若葉が思ったのは閣下もスタースクリームも一体何をやっているのだ?という考えだ。
「なんとも恐ろしいことをしていますね」
呆れたような口調でそう呟いた直後、ラジオから微かに押し殺したかのような笑い声が聞こえてくる。
『お嬢さんはどうやら見た目に反して覚悟ができているようだな』
少しばかり若葉を試すかのようかのような声での問いかけ、それが若葉に対する逃げ道であることくらい理解できた。
隠された言葉に気づけぬのならばロックダウンは恐らくこのまま他愛ない話をして空港まで向かう。
けれど若葉が隠された意図に気づいたのならばロックダウンは全てを話すつもりだ。
それがメガトロン達にとって望まぬ事だとしても。
『俺の雇い主は善人の皮を被った政治家だ』
「それは残酷な大人ですね」
ロックダウンの雇い主が誰であるのか解った上で若葉は応える。
あの女傑が優しさだけで友人の娘に好待遇をすることがないことくらい若葉とて解っていた。そうでなければきっと母の友人ではなかった。
優しさと狡猾さを自覚した上でソレを自らの意思で巧みに他人に使うことができるからこそ、きっと母と彼女は友人としてお互いを認められたのだろう。
「同じ穴の狢」
研究者と政治家としてソレは必要不可欠な要素なのかもしれない。
彼女たちと同じとなれと言われれば若葉は無理だということくらい解っている。物事を達観的に見ることなど若葉にはできないし、恐らく彼女たちも解っているのだろう。
ならば自分に求められているのは一体何だ?そう疑問を抱く。
けれど頭の良い人が何を考えているのかなど若葉には解らない。
「(私は所詮凡人だ)」
可もなく不可もなく考えることしかできないし、動くこともできないのだ。
「貴方は私の知らないことをたくさん知っているのですか?」
『あぁ。そうだ』
「では貴方に許された権限、貴方に咎が及ばぬで構いません。貴方が知っていることを全て私に教えてください。……きっとそれが彼女たちの狙いでしょうから」
覚悟を決めて若葉が告げた言葉に対し、ロックダウンは一瞬の沈黙の後、満足そうな声音で応えた。
車内には先ほどまで流れていたはずのラジオは聞こえてはこない。
それは自分たちの状況が悪いことを若葉に伝えないための配慮なのか、もしくはすでに包囲網が敷かれており逃げることが困難なことを知らせないようにしているのか、もしくは何らかの思惑があるからなのかは解らない。
ロックダウンという金属生命体の事を若葉は知らないが故の判断だ。
縋るようにスタースクリームを抱きしめる。
「(酷い姿)」
着ている衣服はスタースクリーム曰くお気に入りのブランドのものだったはずだ。
若葉がブランドのサイトをこっそり調べてみたら目を剥く金額が表示されており、ソレを見たスタースクリームが勝ち誇った顔をしていた。
その衣服は今も無残なほどに所々裂けていたり、焼け焦げていたりしている。
「(それでも生きていてくれる)」
衣服越しに伝わってくる温もりが、微かに呼吸している胸が上下していることが、若葉にはどうしようもないほど安心できた。
『安心すると良い。スタースクリームの自己修復能力は高いからな。こいつが回復に集中すると宣言した以上、それなりの状態にまで回復するだろうさ』
「そうなんですか?」
『メガトロンに腕を引き千切られたがくっつけたら直ったらしいと聞いている』
ロックダウンとしては安心させるために告げた他愛ない向かい話なのだが、それを聞かされた若葉が思ったのは閣下もスタースクリームも一体何をやっているのだ?という考えだ。
「なんとも恐ろしいことをしていますね」
呆れたような口調でそう呟いた直後、ラジオから微かに押し殺したかのような笑い声が聞こえてくる。
『お嬢さんはどうやら見た目に反して覚悟ができているようだな』
少しばかり若葉を試すかのようかのような声での問いかけ、それが若葉に対する逃げ道であることくらい理解できた。
隠された言葉に気づけぬのならばロックダウンは恐らくこのまま他愛ない話をして空港まで向かう。
けれど若葉が隠された意図に気づいたのならばロックダウンは全てを話すつもりだ。
それがメガトロン達にとって望まぬ事だとしても。
『俺の雇い主は善人の皮を被った政治家だ』
「それは残酷な大人ですね」
ロックダウンの雇い主が誰であるのか解った上で若葉は応える。
あの女傑が優しさだけで友人の娘に好待遇をすることがないことくらい若葉とて解っていた。そうでなければきっと母の友人ではなかった。
優しさと狡猾さを自覚した上でソレを自らの意思で巧みに他人に使うことができるからこそ、きっと母と彼女は友人としてお互いを認められたのだろう。
「同じ穴の狢」
研究者と政治家としてソレは必要不可欠な要素なのかもしれない。
彼女たちと同じとなれと言われれば若葉は無理だということくらい解っている。物事を達観的に見ることなど若葉にはできないし、恐らく彼女たちも解っているのだろう。
ならば自分に求められているのは一体何だ?そう疑問を抱く。
けれど頭の良い人が何を考えているのかなど若葉には解らない。
「(私は所詮凡人だ)」
可もなく不可もなく考えることしかできないし、動くこともできないのだ。
「貴方は私の知らないことをたくさん知っているのですか?」
『あぁ。そうだ』
「では貴方に許された権限、貴方に咎が及ばぬで構いません。貴方が知っていることを全て私に教えてください。……きっとそれが彼女たちの狙いでしょうから」
覚悟を決めて若葉が告げた言葉に対し、ロックダウンは一瞬の沈黙の後、満足そうな声音で応えた。
