31章 天秤は傾く
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情緒がジェットコースターのように激しく上下する若葉の姿をスタースクリームは黙って見つめることしかできない。
スタースクリームの知っている若葉はいつだって上辺の取り繕いが年の割には上手く、それでいて本心は酷く子供である存在だ。自身の短所を隠すかのように”聞き分けの良い娘”という仮面をかぶって上手く誤魔化している人間。
けれど今、自分の目の前に居る若葉はむき出しの感情を露わにしている。
幼子のように声を上げて泣きじゃくる若葉の姿が信じられずスタースクリームは自身の目の前中に居る存在を持て余していた。
『(俺は何をやっているのだ?)』
状況は一刻の猶予もない。
いつ追撃があるのかも解らない以上、この場から迅速に避難をしなければならない。
若葉の事を思えば今すぐにでもロックダウンに身柄を預けて避難行動をすべきなのだ。
それなのに何故かスタースクリームは若葉を他者へと託すことができない。
気づけば若葉へと再度指を伸ばしており、恐る恐る触れた先には自分たちとは違う柔らかな感触があった。
その感触は少し前の自分であれば酷く不快であったはずなのに、今は何故か解らないが以前ほど不快ではない。
『(むしろ)』
愛おしむかのように、慈しむかのように、そっと若葉の輪郭を撫でる。
少し力加減を間違えてしまえば一瞬で壊してしまいそうな脆弱な存在。
自身の中に産まれた感情をスタースクリームは歓迎などできず、ただ、何かを必死に堪えるかのようにキュッと目を細めていたが、結局のところ自分は絆されてしまったのだと理解するとゆっくりと体内にたまっていた熱気を排出する。
思っていたよりも強い熱気は水蒸気となって辺りに満ちていくのはスタースクリームにとって想定外であったが、敵に対する目くらましとしてある意味で都合が良いとも思えた。
水蒸気に紛れながらスタースクリームは自身の体を人間へと変化させる。
「若葉」
名を呼べば目の前に居る若葉はスンッと鼻を鳴らしながらスタースクリームを見上げる。
涙で濡れたその目に今だ潰えぬ意思が、この現状を打破しようとしている強い光があることにスタースクリームは満足そうに笑う。
まだ辛うじて勝機は潰えていない、運はまだ自分たちの方に向いている。
「ロックダウン。若葉と俺を空港まで運べ」
『……良いだろう。だが次の手はあるのか?』
「なければ作るだけだ」
『ソレでこそお前だな』
返された言葉にスタースクリームはチッと舌打ちをすると若葉へと視線を向ける。
「俺は今から自己修復に入る。ロックダウンはいけ好かない奴だが仕事はきっちりするから安心しろ」
「うん」
「そう不安がるな。空港に着くまでには何とか動けるまでにはなっているだろうさ」
いつもと同じように不遜な態度と笑みを浮かべているがその顔色が悪いことくらい誰の目から見ても明らかで、ソレを指摘したとしてこの状況がどうにかなるわけでもないことくらい若葉にも容易く理解できた。
そんなスタースクリームに対する言葉が見つからない若葉が唇を噛んだ時だ。
「安心しろ」
大きな手が力なく頭に乗せられる。
それだけで若葉はスタースクリームがどれだけ酷い負傷をしているのか解ってしまう。
縋るようにその手に触れた瞬間、スタースクリームの目は静かに閉じられぐらりとその体が若葉の方へと倒れ込む。
咄嗟に受け止めた若葉であったが、元々の体格差がある以上受け止めることは困難であった。
堪えるかのように何度か蹈鞴を踏んだ若葉であったが、バランスを崩し倒れそうになった瞬間、背中に硬く冷たい金属の感触がした。
『このまま車内に入れるが良いか?』
咄嗟に支えてくれたのはロックダウンの掌だ。
願ってもいないその申し出に若葉はスタースクリームを抱きかかえながら、何度も首を縦に振った。
スタースクリームの知っている若葉はいつだって上辺の取り繕いが年の割には上手く、それでいて本心は酷く子供である存在だ。自身の短所を隠すかのように”聞き分けの良い娘”という仮面をかぶって上手く誤魔化している人間。
けれど今、自分の目の前に居る若葉はむき出しの感情を露わにしている。
幼子のように声を上げて泣きじゃくる若葉の姿が信じられずスタースクリームは自身の目の前中に居る存在を持て余していた。
『(俺は何をやっているのだ?)』
状況は一刻の猶予もない。
いつ追撃があるのかも解らない以上、この場から迅速に避難をしなければならない。
若葉の事を思えば今すぐにでもロックダウンに身柄を預けて避難行動をすべきなのだ。
それなのに何故かスタースクリームは若葉を他者へと託すことができない。
気づけば若葉へと再度指を伸ばしており、恐る恐る触れた先には自分たちとは違う柔らかな感触があった。
その感触は少し前の自分であれば酷く不快であったはずなのに、今は何故か解らないが以前ほど不快ではない。
『(むしろ)』
愛おしむかのように、慈しむかのように、そっと若葉の輪郭を撫でる。
少し力加減を間違えてしまえば一瞬で壊してしまいそうな脆弱な存在。
自身の中に産まれた感情をスタースクリームは歓迎などできず、ただ、何かを必死に堪えるかのようにキュッと目を細めていたが、結局のところ自分は絆されてしまったのだと理解するとゆっくりと体内にたまっていた熱気を排出する。
思っていたよりも強い熱気は水蒸気となって辺りに満ちていくのはスタースクリームにとって想定外であったが、敵に対する目くらましとしてある意味で都合が良いとも思えた。
水蒸気に紛れながらスタースクリームは自身の体を人間へと変化させる。
「若葉」
名を呼べば目の前に居る若葉はスンッと鼻を鳴らしながらスタースクリームを見上げる。
涙で濡れたその目に今だ潰えぬ意思が、この現状を打破しようとしている強い光があることにスタースクリームは満足そうに笑う。
まだ辛うじて勝機は潰えていない、運はまだ自分たちの方に向いている。
「ロックダウン。若葉と俺を空港まで運べ」
『……良いだろう。だが次の手はあるのか?』
「なければ作るだけだ」
『ソレでこそお前だな』
返された言葉にスタースクリームはチッと舌打ちをすると若葉へと視線を向ける。
「俺は今から自己修復に入る。ロックダウンはいけ好かない奴だが仕事はきっちりするから安心しろ」
「うん」
「そう不安がるな。空港に着くまでには何とか動けるまでにはなっているだろうさ」
いつもと同じように不遜な態度と笑みを浮かべているがその顔色が悪いことくらい誰の目から見ても明らかで、ソレを指摘したとしてこの状況がどうにかなるわけでもないことくらい若葉にも容易く理解できた。
そんなスタースクリームに対する言葉が見つからない若葉が唇を噛んだ時だ。
「安心しろ」
大きな手が力なく頭に乗せられる。
それだけで若葉はスタースクリームがどれだけ酷い負傷をしているのか解ってしまう。
縋るようにその手に触れた瞬間、スタースクリームの目は静かに閉じられぐらりとその体が若葉の方へと倒れ込む。
咄嗟に受け止めた若葉であったが、元々の体格差がある以上受け止めることは困難であった。
堪えるかのように何度か蹈鞴を踏んだ若葉であったが、バランスを崩し倒れそうになった瞬間、背中に硬く冷たい金属の感触がした。
『このまま車内に入れるが良いか?』
咄嗟に支えてくれたのはロックダウンの掌だ。
願ってもいないその申し出に若葉はスタースクリームを抱きかかえながら、何度も首を縦に振った。
