29章:砂時計の砂が落ちきる前に
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若葉が今夜過ごす部屋はモノトーン調のシックで落ち着いた色合いをしていた。置かれているソファも調度品も素晴らしいものであることは間違いない。
実際に座ってみると今まで体験したことがないような素晴らしい座り心地で、このソファから動きたくないと若葉は思った。
「ほぅ。なかなか良い酒があるじゃないか」
ご機嫌そうな声とともにスタースクリームが部屋の奥にあるミニバーへと近づき、棚に並べられている酒瓶を手に取ると口笛を吹く。
「それって凄く高いお酒じゃないの?」
「オールインクルーシブだから安心しろ。まぁ仮に支払いが必要となったとしても問題はない」
ニヤリと笑ったスタースクリームはグラスを手に取ると氷を一つ入れるとご機嫌な様子で酒を注ぐ。
バーの引き出しから小袋を手にしたスタースクリームはソファに座ると、袋を破き中に入っていたモノを口にする。おかき系だったらしく静かな部屋の中にバリバリという軽快な咀嚼音が響く。
初めて見るほどご機嫌なスタースクリームの姿に若葉は今はそっとしておくべきだと判断すると、TVのリモコンを手に取ると電源を入れる。
聞こえたのはニュースキャスターが最近あった話題を説明している。事故や殺傷事件等をわかりやすく説明するニュースキャスターの声を聞きながら若葉は側にあったクッションを抱きかかえた時だ。
「なんとも平和ぼけした国だな」
銃撃戦があったわけでもなく、カーチェイスによる多重事故でもないのに、TVから伝えられるニュースは重大事件だと言うかのような物言いであることに対し、スタースクリームは心底つまらない、という言葉に若葉は困ったように眦を下げて笑いながら答える。
「でもそれが私の日常でした」
TV越しに聞こえてくる物騒な事件はいつだって他人事でしかなかった。
凄惨な映像だって自分や自分に近しい人達が関わっていなければ、どこか違う場所で起きた悲しい出来事でしかなかったが、今後の生活拠点をアメリカへと移したのならば今までのように過ごすことはできないことくらい若葉とて解っている。
銃とは無縁の生活だった若葉にとって銃撃戦など映画でしか見ることのない事であった。
だから銃の危険性は解っていても実際には経験をしていないため、危機感がいまいち欠如していることくらい若葉が一番よく解っている。
「(一度だけあったけど)」
殺意を宿した目でこちらを睨めつけながら銃口を向けてきたレノックスの姿。
最もあれは後日、メガトロンから「スタンガンのようなものだ」と教えられ、少しだけホッとした。
けれど自分へと向けられた武器に若葉は現実を理解できず、頭が真っ白になって何もできなかった。
「(きっとこれからは駄目なんだろうな)」
自分の身は最低限守れるように行動できるようにならなければならない、否、そうしなければ命を落とす可能性とてある。
事実、メガトロン本人が自分には敵が多く、その敵が若葉を利用する可能性もあると言っていたのだから。
「今までみたいに過ごすことができないことは解ってる」
平和ぼけした世界から荒々しい暴力で満ちた世界へと移るのだから相応の覚悟は必要だということくらい若葉も理解しているのだ。
けれどどれだけ頭が理解していても怖いものは怖い。
「私は」
「お前はお前自身が願うままに生きれば良い」
感情の宿らない平坦な声音でスタースクリームは告げる。
それはそれが当たり前なのだと言うかのようなものであったことに若葉は驚きながらスタースクリームを見る。
「俺はお前に何度も言っているぞ」
日本に居る間に身の振り方を考えろ。
「願わくばそれがお前もお前の周りの者達も幸せになれることを願うがな」
らしくもない発言であることくらいスタースクリームは解っていた。
出会ってからそれほど良い関係ではないが、けれどこの哀れな小娘一人くらいの幸せを願っても良いと思うくらいには若葉のことをそれなりに気に入っていることはスタースクリーム自身が一番よく解っていた。
実際に座ってみると今まで体験したことがないような素晴らしい座り心地で、このソファから動きたくないと若葉は思った。
「ほぅ。なかなか良い酒があるじゃないか」
ご機嫌そうな声とともにスタースクリームが部屋の奥にあるミニバーへと近づき、棚に並べられている酒瓶を手に取ると口笛を吹く。
「それって凄く高いお酒じゃないの?」
「オールインクルーシブだから安心しろ。まぁ仮に支払いが必要となったとしても問題はない」
ニヤリと笑ったスタースクリームはグラスを手に取ると氷を一つ入れるとご機嫌な様子で酒を注ぐ。
バーの引き出しから小袋を手にしたスタースクリームはソファに座ると、袋を破き中に入っていたモノを口にする。おかき系だったらしく静かな部屋の中にバリバリという軽快な咀嚼音が響く。
初めて見るほどご機嫌なスタースクリームの姿に若葉は今はそっとしておくべきだと判断すると、TVのリモコンを手に取ると電源を入れる。
聞こえたのはニュースキャスターが最近あった話題を説明している。事故や殺傷事件等をわかりやすく説明するニュースキャスターの声を聞きながら若葉は側にあったクッションを抱きかかえた時だ。
「なんとも平和ぼけした国だな」
銃撃戦があったわけでもなく、カーチェイスによる多重事故でもないのに、TVから伝えられるニュースは重大事件だと言うかのような物言いであることに対し、スタースクリームは心底つまらない、という言葉に若葉は困ったように眦を下げて笑いながら答える。
「でもそれが私の日常でした」
TV越しに聞こえてくる物騒な事件はいつだって他人事でしかなかった。
凄惨な映像だって自分や自分に近しい人達が関わっていなければ、どこか違う場所で起きた悲しい出来事でしかなかったが、今後の生活拠点をアメリカへと移したのならば今までのように過ごすことはできないことくらい若葉とて解っている。
銃とは無縁の生活だった若葉にとって銃撃戦など映画でしか見ることのない事であった。
だから銃の危険性は解っていても実際には経験をしていないため、危機感がいまいち欠如していることくらい若葉が一番よく解っている。
「(一度だけあったけど)」
殺意を宿した目でこちらを睨めつけながら銃口を向けてきたレノックスの姿。
最もあれは後日、メガトロンから「スタンガンのようなものだ」と教えられ、少しだけホッとした。
けれど自分へと向けられた武器に若葉は現実を理解できず、頭が真っ白になって何もできなかった。
「(きっとこれからは駄目なんだろうな)」
自分の身は最低限守れるように行動できるようにならなければならない、否、そうしなければ命を落とす可能性とてある。
事実、メガトロン本人が自分には敵が多く、その敵が若葉を利用する可能性もあると言っていたのだから。
「今までみたいに過ごすことができないことは解ってる」
平和ぼけした世界から荒々しい暴力で満ちた世界へと移るのだから相応の覚悟は必要だということくらい若葉も理解しているのだ。
けれどどれだけ頭が理解していても怖いものは怖い。
「私は」
「お前はお前自身が願うままに生きれば良い」
感情の宿らない平坦な声音でスタースクリームは告げる。
それはそれが当たり前なのだと言うかのようなものであったことに若葉は驚きながらスタースクリームを見る。
「俺はお前に何度も言っているぞ」
日本に居る間に身の振り方を考えろ。
「願わくばそれがお前もお前の周りの者達も幸せになれることを願うがな」
らしくもない発言であることくらいスタースクリームは解っていた。
出会ってからそれほど良い関係ではないが、けれどこの哀れな小娘一人くらいの幸せを願っても良いと思うくらいには若葉のことをそれなりに気に入っていることはスタースクリーム自身が一番よく解っていた。