29章:砂時計の砂が落ちきる前に
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その音の発生源がどこなのかなどスタースクリームもサイドスワイプも解っていた。
二人が恐る恐る音の発生源、 若葉へと視線を向けると目元を微かに赤くして唇を軽く噛んでいる若葉の姿があった。
一瞬にして車内の雰囲気が張り詰めたものへと変わる。
まるで戦場だと思ってしまうかのような緊迫感にスタースクリームもサイドスワイプも口を開くことはできずにいたときだ。
「この服、母さんが買ってくれたのに」
消えそうなほど小さな声で言われた言葉は人とは違う存在の耳に確かに届いた。
実母との色々なことがあって単身帰国することになった若葉に対し、オートボットもディセプティコンも配慮するようにという厳命が下されている。
それ故に今の発言は若葉以外のもの達の心に深く突き刺さった。
スタースクリームとしては弁償することくらいなんてことの無い値段の衣服であったし、代わりとしてハイブランドの物を買っても良いと思っていたのだが実母からのプレゼントとなれば話は違う。
俗に言う「完全にやっちまった」案件であることを悟ったスタースクリームのスパークが嫌な音を立てる。
このことがメガトロンに知られれば間違いなく自分の命は無い、そう判断したスタースクリームは必死に保身に走る。若葉だけならば言葉巧みに騙せそうだが、この場に居るサイドスワイプの存在が厄介なことこの上ない。
日課報告として各々が上げる報告書にこのことが書かれれば、いくらスタースクリームが若葉を納得させたとしても意味は無い。
間違いなくメガトロンからの制裁が与えられる。
それだけは絶対に阻止したいスタースクリームは必死に起死回生の策略を立てるが、最終的にどれも自分自身が一番のダメージを受ける結果となった。
「(あぁ……終わった)」
そう思いながら若葉へと視線を向けるとこの世の終わりと言うかのような顔をしている若葉の横顔を見た瞬間、スタースクリームは自分でも何故だか解らないが口を開いていた。
「悪かった」
謝罪の言葉を口にした自分を信じられないと言うかのように呆然としていたスタースクリームに対し、若葉は少しばかり震える声で応える。
「わざとやったわけじゃないことくらい解ってる」
スタースクリームが若葉の襟首を掴む切っ掛けとなったのは若葉が乗車拒否をしたからだ。一時の感情により迷惑をかけ、その結果がコレであることを理解している若葉は自業自得だと解っている。
だからスタースクリームを責めることができない。
「あの……このことは黙っていてくれると助かります」
たかが服一枚であるが色々と言ってくる者が居るのもまた事実。
身重の母に対して心労を与えたくは無い若葉は今回の件を母に伝えるつもりは無かった。
「俺としては報告するつもりは無い」
『俺もねぇけどお前はソレで良いのか?博士から買ってもらった服なんだろ?』
サイドスワイプからの指摘にスタースクリームは「余計なことを言うな」と思いながらハンドルを睨み付けていた時だ。
「そうですね。確かに思い入れのある服ですけれど……」
言葉を探すかのように声を詰まらせた若葉へと二人の視線が向けられる。
「でもきっと、今の母は気にしないと思いますから」
言いたいことを心の奥底でかみ殺したかのような笑みを浮かべながら若葉が告げた言葉。
自分との思い出など母にとってはきっと忘れ去れて、いつかは捨て去られるものだ。と、言うかのような若葉の顔を見たスタースクリームは無意識のうちにハンドルを握る手に力を込める。
「あの子の悪癖も貴方ならばうまく手綱を掴めるでしょう?」
意味深な目をしてそう告げた女の言葉を思い出すのと同時に、スタースクリームは自分は嵌められたのだと悟った。
二人が恐る恐る音の発生源、 若葉へと視線を向けると目元を微かに赤くして唇を軽く噛んでいる若葉の姿があった。
一瞬にして車内の雰囲気が張り詰めたものへと変わる。
まるで戦場だと思ってしまうかのような緊迫感にスタースクリームもサイドスワイプも口を開くことはできずにいたときだ。
「この服、母さんが買ってくれたのに」
消えそうなほど小さな声で言われた言葉は人とは違う存在の耳に確かに届いた。
実母との色々なことがあって単身帰国することになった若葉に対し、オートボットもディセプティコンも配慮するようにという厳命が下されている。
それ故に今の発言は若葉以外のもの達の心に深く突き刺さった。
スタースクリームとしては弁償することくらいなんてことの無い値段の衣服であったし、代わりとしてハイブランドの物を買っても良いと思っていたのだが実母からのプレゼントとなれば話は違う。
俗に言う「完全にやっちまった」案件であることを悟ったスタースクリームのスパークが嫌な音を立てる。
このことがメガトロンに知られれば間違いなく自分の命は無い、そう判断したスタースクリームは必死に保身に走る。若葉だけならば言葉巧みに騙せそうだが、この場に居るサイドスワイプの存在が厄介なことこの上ない。
日課報告として各々が上げる報告書にこのことが書かれれば、いくらスタースクリームが若葉を納得させたとしても意味は無い。
間違いなくメガトロンからの制裁が与えられる。
それだけは絶対に阻止したいスタースクリームは必死に起死回生の策略を立てるが、最終的にどれも自分自身が一番のダメージを受ける結果となった。
「(あぁ……終わった)」
そう思いながら若葉へと視線を向けるとこの世の終わりと言うかのような顔をしている若葉の横顔を見た瞬間、スタースクリームは自分でも何故だか解らないが口を開いていた。
「悪かった」
謝罪の言葉を口にした自分を信じられないと言うかのように呆然としていたスタースクリームに対し、若葉は少しばかり震える声で応える。
「わざとやったわけじゃないことくらい解ってる」
スタースクリームが若葉の襟首を掴む切っ掛けとなったのは若葉が乗車拒否をしたからだ。一時の感情により迷惑をかけ、その結果がコレであることを理解している若葉は自業自得だと解っている。
だからスタースクリームを責めることができない。
「あの……このことは黙っていてくれると助かります」
たかが服一枚であるが色々と言ってくる者が居るのもまた事実。
身重の母に対して心労を与えたくは無い若葉は今回の件を母に伝えるつもりは無かった。
「俺としては報告するつもりは無い」
『俺もねぇけどお前はソレで良いのか?博士から買ってもらった服なんだろ?』
サイドスワイプからの指摘にスタースクリームは「余計なことを言うな」と思いながらハンドルを睨み付けていた時だ。
「そうですね。確かに思い入れのある服ですけれど……」
言葉を探すかのように声を詰まらせた若葉へと二人の視線が向けられる。
「でもきっと、今の母は気にしないと思いますから」
言いたいことを心の奥底でかみ殺したかのような笑みを浮かべながら若葉が告げた言葉。
自分との思い出など母にとってはきっと忘れ去れて、いつかは捨て去られるものだ。と、言うかのような若葉の顔を見たスタースクリームは無意識のうちにハンドルを握る手に力を込める。
「あの子の悪癖も貴方ならばうまく手綱を掴めるでしょう?」
意味深な目をしてそう告げた女の言葉を思い出すのと同時に、スタースクリームは自分は嵌められたのだと悟った。