もしもフォールンの言うように解っていたのならばもっと違う選択肢をしたはずだ。
　早い段階でメガトロンへと頼み、母へと協力を仰ぎ、皆で手と手を取り合ってこのような未来にならないようにしたはずだ。

　「私が漠然ですが理解していたことは一つだけです」

　「何だ？」

　「私がいたから母は不幸になっていた。だから母が幸せになる時、きっと私は何かしらの償いをするだろうなぁってことくらいです」

そうならないようにメガトロンが動いていてくれたことも解っていた。
　なれど彼にとって敵になった者達は質が悪くて、そして強すぎたのだ。



　「若葉。お前の願いは何だ？これから先の未来でアイツが幸せに微笑むその未来を遠目から見続けることがお前の願いか？」

傲慢でありながらも若葉を案じている言葉。

　「若葉。お前が願う未来を口にしろ」

我儘を許してくれた優しい人。

　「迷うな、若葉」

全てを受け入れてくれた。



きっと母は後に若葉が下した決断を知ったのならば悔やむだろう。
　だからこそ若葉はフォールンを利用する事を思いついた。
　フォールンもまた自分にとって大切な者を守ろうとしているから。
　共に自分にとって大切な人を守りたい。
　互いに守りたい者が想い合っていて、だからこそこの約束には、思惑が一致した関係はこれ以上ないと言うほどに互いにとって利となり、害となることは無い。
　そのために自らが犠牲になることも厭わないと言うかのような若葉の献身的な考え方は、生き方はフォールンにとって都合の良いはずだ。
　　
　「だから・・・だからフォールン様」

縋るように懇願するかのように目の前にいる人の名を呼ぶ事しか若葉には出来ない。
　無力な自分がどうしようも無く悔しい。
　他人に託すしか出来ない自分がどうしようもなく妬ましい。
　もっと大人であれば、もっと賢ければ、もっと強ければ・・・。
　もしもの選択肢ともしもの未来がどうしようも無いほどに若葉を責め立てる。

　「母さんと閣下と赤ちゃんの事をお願いします」

深々と頭を下げた若葉をフォールンは黙って見つめる事しか出来なかった。