3章:最悪な初顔合わせ
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ぼんやりとTVを見ていた若葉だが、少しずつその頭が船をこぎ始める。
母が帰ってくるまでは起きていなければならない、そう自分に言い聞かせて若葉は途切れそうになる意識を必死に繋ぎ止めていたが、その意思に反するかのように瞼がゆっくりと閉じられていく。
「あー・・・駄目だ。コーヒーでも飲もう」
熱いコーヒーは眠気覚ましに丁度良いと思った若葉は眠い目を擦りながらソファから立ち上がろうとしたが、その身体がソファから立ち上がることはない。
母と見知らぬ誰かとの寝室が脳裏に浮かんだからだ。
もしも、キッチンで揃いのカップを見つけたら?
それを誰かが使っているような形跡があったら?
その疑問を抱いた瞬間、酷く不快な何かが背筋を撫でた。ソレの嫌な感触は消えること無く若葉の身体の奥底深く、深く、音も無く沈んでいく。
得体の知れないナニかが自身の身体の奥底でぐるぐるとうごめく感覚は不快なものでしかなく、若葉は眉間に深い皺を寄せたままその場から動くことは出来なかった。
「最悪」
苦々しい口調で出た言葉は若葉の本心だった。
この環境が、この状況が、この家に居るのが、この場所に居るのが、全てが若葉にとって何一つとして良いことではない。
何よりも一番最悪なこととは、そう思ってしまう自分の考えだ。
このままでは母の幸せをまた壊してしまう。
酷い自己嫌悪に支配された若葉は自嘲の笑みを浮かべると、目元を右手で覆い隠しながらソファに倒れ込む。
慣れぬ旅路で疲弊していた身体に加えられた精神的疲労は若葉が思っている以上に酷いものだった。
ゆっくりと近づいてきた睡魔を若葉は抗う事をせず受け入れる。
若葉が完全に眠りに落ちた直後、玄関のドアのロックを解除する音が静かな室内に響く。
音も無く入ってきた男は当たり前のような顔をしてリビングへと向かう。
ドアを開けたのと同時に聞こえてきたTVの音に怪訝な顔をしたまま固まる。
「消し忘れたか」
家を出る前にTVの電源を切ったはずだと思ったが、家を出る準備をしている最中に届けられたいくつかの案件に気を取られ消し忘れてしまったと思った男は顔をしかめつつも、TVを消そうとするために動いた男だったがいつも所定の位置に置かれているリモコンがないことに気づくと不思議そうに小首を傾げた時だ。
「かあさん」
吐息混じりの消えそうな声を男の耳が拾い上げる。
何だと思いながら視線を向ければソファの上で丸くなって眠っている若葉の姿がそこにはあった。
「・・・・あぁ、今日だったか」
眠っている若葉を起こさないように細心の注意を払いながら男はそっと寝顔をのぞき込むのと同時にスキャンを開始する。
規則的な穏やかな寝息、一定のリズムを保っている心音、深い眠りに落ちていることを意味する脳波にホッと胸をなで下ろした時だ。
眠っていた若葉が1つクシャミをする。
「人とは本当に軟弱だな」
呆れたように呟いた言葉であったがその声には優しさが含まれている。
ベッド下の収納スペースからブランケットを取り出した男は若葉にそれを掛けてやれば、若葉は突然の刺激に対し警戒するかのようにモゾモゾと身じろぎをしていたが、再び眠りに陥るのに相応しいポジションを見つけるとそのまま動かなくなる。
ソレを見届けた男はホッとした顔をしながらブランケット越しに若葉の頭を優しく撫でる。
「お前達はスリープモードの時に夢を見るそうだな」
最愛の女性がいつも楽しげに話す言葉を思い出しながら男は若葉の頭を撫でながら呟く言葉に対し、返答は何も無いが男は満足そうに手を動かし続ける。
「良い夢を・・・若葉」
予め聞いていた娘の名前を男はそっと呟くと手を離す。
起こさないようにするためにも寝室に向かい、仕事をすべきだとは解っているのだが何故かそうすることが出来なかった男は空いている椅子に腰掛けると部下へと通信を繋ぐ。
『メガトロンからサウンドウェーブへ。ディエゴガルシア基地に到着してからの娘に関する情報を報告せよ』
職権乱用とも言える命令に対して部下はすぐさまテキストによる報告書を送信してきた。
母が帰ってくるまでは起きていなければならない、そう自分に言い聞かせて若葉は途切れそうになる意識を必死に繋ぎ止めていたが、その意思に反するかのように瞼がゆっくりと閉じられていく。
「あー・・・駄目だ。コーヒーでも飲もう」
熱いコーヒーは眠気覚ましに丁度良いと思った若葉は眠い目を擦りながらソファから立ち上がろうとしたが、その身体がソファから立ち上がることはない。
母と見知らぬ誰かとの寝室が脳裏に浮かんだからだ。
もしも、キッチンで揃いのカップを見つけたら?
それを誰かが使っているような形跡があったら?
その疑問を抱いた瞬間、酷く不快な何かが背筋を撫でた。ソレの嫌な感触は消えること無く若葉の身体の奥底深く、深く、音も無く沈んでいく。
得体の知れないナニかが自身の身体の奥底でぐるぐるとうごめく感覚は不快なものでしかなく、若葉は眉間に深い皺を寄せたままその場から動くことは出来なかった。
「最悪」
苦々しい口調で出た言葉は若葉の本心だった。
この環境が、この状況が、この家に居るのが、この場所に居るのが、全てが若葉にとって何一つとして良いことではない。
何よりも一番最悪なこととは、そう思ってしまう自分の考えだ。
このままでは母の幸せをまた壊してしまう。
酷い自己嫌悪に支配された若葉は自嘲の笑みを浮かべると、目元を右手で覆い隠しながらソファに倒れ込む。
慣れぬ旅路で疲弊していた身体に加えられた精神的疲労は若葉が思っている以上に酷いものだった。
ゆっくりと近づいてきた睡魔を若葉は抗う事をせず受け入れる。
若葉が完全に眠りに落ちた直後、玄関のドアのロックを解除する音が静かな室内に響く。
音も無く入ってきた男は当たり前のような顔をしてリビングへと向かう。
ドアを開けたのと同時に聞こえてきたTVの音に怪訝な顔をしたまま固まる。
「消し忘れたか」
家を出る前にTVの電源を切ったはずだと思ったが、家を出る準備をしている最中に届けられたいくつかの案件に気を取られ消し忘れてしまったと思った男は顔をしかめつつも、TVを消そうとするために動いた男だったがいつも所定の位置に置かれているリモコンがないことに気づくと不思議そうに小首を傾げた時だ。
「かあさん」
吐息混じりの消えそうな声を男の耳が拾い上げる。
何だと思いながら視線を向ければソファの上で丸くなって眠っている若葉の姿がそこにはあった。
「・・・・あぁ、今日だったか」
眠っている若葉を起こさないように細心の注意を払いながら男はそっと寝顔をのぞき込むのと同時にスキャンを開始する。
規則的な穏やかな寝息、一定のリズムを保っている心音、深い眠りに落ちていることを意味する脳波にホッと胸をなで下ろした時だ。
眠っていた若葉が1つクシャミをする。
「人とは本当に軟弱だな」
呆れたように呟いた言葉であったがその声には優しさが含まれている。
ベッド下の収納スペースからブランケットを取り出した男は若葉にそれを掛けてやれば、若葉は突然の刺激に対し警戒するかのようにモゾモゾと身じろぎをしていたが、再び眠りに陥るのに相応しいポジションを見つけるとそのまま動かなくなる。
ソレを見届けた男はホッとした顔をしながらブランケット越しに若葉の頭を優しく撫でる。
「お前達はスリープモードの時に夢を見るそうだな」
最愛の女性がいつも楽しげに話す言葉を思い出しながら男は若葉の頭を撫でながら呟く言葉に対し、返答は何も無いが男は満足そうに手を動かし続ける。
「良い夢を・・・若葉」
予め聞いていた娘の名前を男はそっと呟くと手を離す。
起こさないようにするためにも寝室に向かい、仕事をすべきだとは解っているのだが何故かそうすることが出来なかった男は空いている椅子に腰掛けると部下へと通信を繋ぐ。
『メガトロンからサウンドウェーブへ。ディエゴガルシア基地に到着してからの娘に関する情報を報告せよ』
職権乱用とも言える命令に対して部下はすぐさまテキストによる報告書を送信してきた。