23章:青と赤の狡猾な者
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凄まじい威圧感と隠すことのない殺意に誰もが息をするのを忘れる。
長い間、戦場に立ち続けた者達ですら恐れを抱く程の気迫。
それをただの一般人でしかない若葉はそれに耐える事が出来ずガクリとその場に膝を着く。
許されるのならば今すぐこの場から逃げ出したいのに、恐怖で震える脚は満足に動かず、ただこの場に留まり続ける事しかできない。
心臓の辺りがギュッと何かに掴まれているかのような感覚、身体の奥底からジワジワと全身に伝わっていく何かにより若葉はガタガタと震え続ける事しかできず、気づけば両目からボロボロと涙が溢れ衣服の上に落ちていくのを他人事のような感覚で見つめていた時だ。
「ッ・・・」
息苦しさを感じた若葉は息をしなければと思い口を開こうとするのだが、身体は呼吸の仕方を忘れてしまったかのように息をすることができず、若葉は苦悶の表情を浮かべながら口を開いたり閉じたりすることを繰り返す。
殺気に耐えきれずにその場に座った若葉の苦しげな姿をしばしの間ジッと見つめていたセンチネルであったが、掴んでいた右腕を持ち上げ無理矢理立たせようとする。
「センチネルッ!やめてくれ・・・彼女はもう限界だ」
「お前は黙っていろ。お前がそんな生ぬるい対応しかこの娘にしないから、この娘はいつまで経っても自らの立場を理解することをしないのだ」
「彼女は十分すぎる程に自分の置かれている状況を認識している。だが彼女はまだ幼く、なにもかも受け入れるのには時間が必要なんだ」
「・・・受け入れる?何を甘いことを言っているのだ」
オプティマスとセンチネルの会話が薄い壁を隔てて聞いているかのような、まるで見えない膜越しに聞いているかのように若葉の耳に届けられる。
霞む視界の中で自分を見下ろす青に微かな苛立ちが見え隠れしていて、これ以上センチネルの不興を買えばどうなるのか解らない事くらい若葉とて理解をしていた。すぐに立ち上がらなければと思うのに力が抜けてしまった脚では立ち上がることすら不可能だった。
頭上で尚も続けられているオプティマスとセンチネルの会話、けれど彼等が何を話しているのか若葉には理解することが出来ず、ただぼんやりと言い争う二人の姿を見つめていた時だ。
「抗う術すら持たぬ無抵抗なお嬢さん相手に随分と酷い扱いをするものだな。センチネル・プライムの名が泣くぞ?」
低く掠れた声が若葉の耳に届けられる。
声のした方へと視線を向けてみれば、そこには杖を手にした老人の姿があった。
仕立ての良いスーツを身に纏っている老人は杖をコツコツと床へと突きながらゆっくりとした足取りで近づいてくる。
「何故貴様がここにいる?隠居したのではなかったのか?」
今まで聞いたことがないような強ばった声でセンチネルは老人に対して問う。
コツン、という音を最後に老人は歩みを止めると朗らかな声音でセンチネルの問いに答えるため口を動かす。
「可愛い弟子に頼まれてなぁ。あのプライドの高い奴が私に頭を下げて「娘を守ってくれ」と懇願してきたからには師として出来る事をしてやろうと思ってな・・・・少しばかり調べてみた所、何やらよからぬ謀り事を企てている者が居て、其奴のせいで可愛い弟子の可愛い娘が酷い目に遭いそうだった為、こうして老体に鞭を打って出てきたというわけだ」
老人の言う弟子が言った「娘を守ってくれ」という言葉を若葉が認識したのと同時に、頭に浮かんだのはメガトロンの姿だった。
自分を守ってくれる存在が居る事を思い出した若葉は、少しだけ気持ちが楽になる。ゆっくりとだが呼吸をすることができ、酸欠気味だった頭が微かに発していた頭痛が薄れた時だ。
目の前に誰かが膝を着く。
若葉と視界を合わせるためか頬に手が添えられる。
温かな掌が冷たく強ばっていた頬を優しく包み込むのと同時に、頬を幾重も伝い落ちていた涙を優しく拭う。
「君が若葉だね?」
嬉しそうに赤い瞳をキラキラと輝かせる老人の目は赤い。
その赤に若葉は見覚えがあった。
「・・・閣下?」
掠れた声でそう呟けば老人は驚いたように目を見開いた後、すぐさま至極楽しげな笑みを浮かべると声を上げて笑い始める。
長い間、戦場に立ち続けた者達ですら恐れを抱く程の気迫。
それをただの一般人でしかない若葉はそれに耐える事が出来ずガクリとその場に膝を着く。
許されるのならば今すぐこの場から逃げ出したいのに、恐怖で震える脚は満足に動かず、ただこの場に留まり続ける事しかできない。
心臓の辺りがギュッと何かに掴まれているかのような感覚、身体の奥底からジワジワと全身に伝わっていく何かにより若葉はガタガタと震え続ける事しかできず、気づけば両目からボロボロと涙が溢れ衣服の上に落ちていくのを他人事のような感覚で見つめていた時だ。
「ッ・・・」
息苦しさを感じた若葉は息をしなければと思い口を開こうとするのだが、身体は呼吸の仕方を忘れてしまったかのように息をすることができず、若葉は苦悶の表情を浮かべながら口を開いたり閉じたりすることを繰り返す。
殺気に耐えきれずにその場に座った若葉の苦しげな姿をしばしの間ジッと見つめていたセンチネルであったが、掴んでいた右腕を持ち上げ無理矢理立たせようとする。
「センチネルッ!やめてくれ・・・彼女はもう限界だ」
「お前は黙っていろ。お前がそんな生ぬるい対応しかこの娘にしないから、この娘はいつまで経っても自らの立場を理解することをしないのだ」
「彼女は十分すぎる程に自分の置かれている状況を認識している。だが彼女はまだ幼く、なにもかも受け入れるのには時間が必要なんだ」
「・・・受け入れる?何を甘いことを言っているのだ」
オプティマスとセンチネルの会話が薄い壁を隔てて聞いているかのような、まるで見えない膜越しに聞いているかのように若葉の耳に届けられる。
霞む視界の中で自分を見下ろす青に微かな苛立ちが見え隠れしていて、これ以上センチネルの不興を買えばどうなるのか解らない事くらい若葉とて理解をしていた。すぐに立ち上がらなければと思うのに力が抜けてしまった脚では立ち上がることすら不可能だった。
頭上で尚も続けられているオプティマスとセンチネルの会話、けれど彼等が何を話しているのか若葉には理解することが出来ず、ただぼんやりと言い争う二人の姿を見つめていた時だ。
「抗う術すら持たぬ無抵抗なお嬢さん相手に随分と酷い扱いをするものだな。センチネル・プライムの名が泣くぞ?」
低く掠れた声が若葉の耳に届けられる。
声のした方へと視線を向けてみれば、そこには杖を手にした老人の姿があった。
仕立ての良いスーツを身に纏っている老人は杖をコツコツと床へと突きながらゆっくりとした足取りで近づいてくる。
「何故貴様がここにいる?隠居したのではなかったのか?」
今まで聞いたことがないような強ばった声でセンチネルは老人に対して問う。
コツン、という音を最後に老人は歩みを止めると朗らかな声音でセンチネルの問いに答えるため口を動かす。
「可愛い弟子に頼まれてなぁ。あのプライドの高い奴が私に頭を下げて「娘を守ってくれ」と懇願してきたからには師として出来る事をしてやろうと思ってな・・・・少しばかり調べてみた所、何やらよからぬ謀り事を企てている者が居て、其奴のせいで可愛い弟子の可愛い娘が酷い目に遭いそうだった為、こうして老体に鞭を打って出てきたというわけだ」
老人の言う弟子が言った「娘を守ってくれ」という言葉を若葉が認識したのと同時に、頭に浮かんだのはメガトロンの姿だった。
自分を守ってくれる存在が居る事を思い出した若葉は、少しだけ気持ちが楽になる。ゆっくりとだが呼吸をすることができ、酸欠気味だった頭が微かに発していた頭痛が薄れた時だ。
目の前に誰かが膝を着く。
若葉と視界を合わせるためか頬に手が添えられる。
温かな掌が冷たく強ばっていた頬を優しく包み込むのと同時に、頬を幾重も伝い落ちていた涙を優しく拭う。
「君が若葉だね?」
嬉しそうに赤い瞳をキラキラと輝かせる老人の目は赤い。
その赤に若葉は見覚えがあった。
「・・・閣下?」
掠れた声でそう呟けば老人は驚いたように目を見開いた後、すぐさま至極楽しげな笑みを浮かべると声を上げて笑い始める。