21章:臆病者のヒーロー
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硝子越し見えたその人は見るも無惨という姿をしていた。
壁から伸びている拘束具が四肢を繋ぎ止め、彼の姿を無理矢理宙へと浮かせているらしく拘束具の嵌められている部分からは赤黒い血が流れ出て真っ白な床を汚していた。
拘束具は四肢の動きを制限するだけではなく、絶えず電流が流されているようで時折微かな静電気のようなモノがサイドウェイズの周りで爆ぜる。
どれくらいの間このような惨い仕打ちがされているのか解らないが、この拷問じみた行為によって右目は負傷してしまったらしく、傷ついた右目から流れる血はまるで彼が泣いているかのように若葉には感じられた。
「やめてよ・・・」
分厚いガラスへと爪を立てながら若葉は怒りで震える声でこの場に居る者達に対し、今すぐサイドウェイズを解放するように伝えるが誰一人として動くことはない。
「なんでこんな酷い事をするのッ!?」
「必要な事だからだ」
若葉の言葉に堪えたのは父だ。
彼は部下らしい研究員とパソコンを見つめながら何やら小難しそうな会話をすることに専念しており、若葉の方へと視線を向けてくることはない。
一瞬だけサイドウェイズの赤い目が若葉へと向けられたが、すぐにその目は彼によって逸らされる。
「今すぐサイドウェイズさんを解放してよッ!!」
父の白衣を掴み乱暴に揺さぶりながら若葉が告げると、ようやく父の視線はパソコンから逸らされ若葉へと向けられたが、その目には自分の仕事の邪魔をする者に対する苛立ちしか浮かんではいなかった。
その視線の冷たさに若葉が息を止めたのと同時に父の白衣を掴んでいた手が乱暴に振り払われたかと思えば、邪魔だと言うかのように肩を押された若葉は床の上に倒れてしまう。
「コレをどこかに閉じ込めておけ。こちらの研究が終了次第、コレの研究を始める」
淡々とした父の声に若葉は何を言われたのかすぐに理解することが出来なかった。
白衣を着た研究員が2人どこからか現れると若葉の両腕をそれぞれが掴み、逃げられないように拘束をした。
「研究?」
「そうだ。私の研究は機械と人間の共存だ。まぁ正確に言うのならば機械と人間の融合と言うべきかな・・・ある意味でお前の母親が今まさに行っていることだ」
母の事を言われた若葉はどういう意味だと考えていた時、母の身に今何が起こっているのか理解すると大きく目を開く。
母は今、メガトロンとの子どもを身ごもっている。
「本来ならばアレとアレの中に居る赤子を手に入れたかったのだが、アレの警護は厳重すぎて手が出せんからな。オートボットの軍医だけでも厄介だと言うのに、ディセプティコン達が絶えず護衛として着いているからな・・・」
「だから、私を使うと?」
「そうだ。アレとお前には血の繋がりがあるだろう?恐らく遺伝子も似ているだろうからお前も金属生命体との子どもをその身に宿す可能性が高い・・・可能性のある母体と金属生命体を手に入れる事が出来たのは幸運だった」
嬉しそうに微笑みながら父が告げた言葉を若葉は理解することが出来なかった。
正確には理解することは出来たが、ソレは到底受け入れられるわけなどなく頭がソレを認識することを拒絶した。
「そもそもお前はここであまり大切に扱われていないだろう?まぁある意味では政治的な意味合いで大切にされているのだろうが、メガトロンとてお前が居なくなればアレとアレが産む子供の三人で仲良く暮したいだろうさ」
容赦なく告げられた言葉は問答無用で若葉を傷つけていく。
「昼に・・・研究室で会ったとき、私のことを気づかっていたのも研究のために利用するためだったの?」
「アレとお前が一緒に居られれば色々と都合が悪かったからな。メガトロンとしてはお前達2人を一度に守る為に、お前達が共に居る事を望んだのだろうが私としてはソレは少しばかり困る。だから少しばかり細工をした」
「細工?」
「そうだ。少しばかりお前が私の言葉に対して従順になるように特殊な電波を発していた。まさか私の思い描いた通りの展開なるとは思わなかったがね」
父が囁いた言葉が全て自分の研究のために役立つだろう娘を利用する以外の何ものでも無かったことを理解した若葉を支配したのは激しい怒りだった。
父の、この男の言動に惑わされなければ自分は母を傷つける事は無かったのに。母が苦しむ必要はなかったのに、そう思いながら父を睨み付けた若葉に対し、父は酷く楽しげに微笑みながら口を開く。
「お前は私が悪いと思っているのだろうがそれは違う。母親に暴言を吐いたのはお前だし、そうなるように娘を育てたのは母親なのだからな・・・私はお前と会うのは初めてだろう?その私の言動に翻弄される程度の関係しかお前達にはなかっただけだ。本当に信頼し合っている母子ならば初対面との父親の言動に惑わされる必要なんてない」
朗らかに微笑みながら告げられた言葉に若葉は反論しようとするのだが、唇は見えない何かに縫い付けられてしまったかのように全く動かない。
父の言うとおりだ。
母に暴言を吐いたのは若葉で、それは変えることのない事実なのだ。
そう思った瞬間、若葉の目から涙が溢れ出す。
頬を伝い落ちていくソレを熱いとも、冷たいとも思えないまま若葉は呆然とした目をして涙を流すことしか出来ずにいた。
「ソレを連れて行け」
用はもうない、と言うかのように父が手を振る。
娘の心を砕くことが成功した今、すでにこの場に居る意味を成さないと判断した父がそう告げた瞬間、部屋の中に警報音が鳴り響く。
誰もがなんだと思いながら視線を彷徨わせる中、ガラスの割れる音がした直後、大量のガラスの破片が部屋の中に飛び散った。
「その子に触るな」
そこに居たのは怒りで顔を歪めたサイドウェイズの姿だった。
壁から伸びている拘束具が四肢を繋ぎ止め、彼の姿を無理矢理宙へと浮かせているらしく拘束具の嵌められている部分からは赤黒い血が流れ出て真っ白な床を汚していた。
拘束具は四肢の動きを制限するだけではなく、絶えず電流が流されているようで時折微かな静電気のようなモノがサイドウェイズの周りで爆ぜる。
どれくらいの間このような惨い仕打ちがされているのか解らないが、この拷問じみた行為によって右目は負傷してしまったらしく、傷ついた右目から流れる血はまるで彼が泣いているかのように若葉には感じられた。
「やめてよ・・・」
分厚いガラスへと爪を立てながら若葉は怒りで震える声でこの場に居る者達に対し、今すぐサイドウェイズを解放するように伝えるが誰一人として動くことはない。
「なんでこんな酷い事をするのッ!?」
「必要な事だからだ」
若葉の言葉に堪えたのは父だ。
彼は部下らしい研究員とパソコンを見つめながら何やら小難しそうな会話をすることに専念しており、若葉の方へと視線を向けてくることはない。
一瞬だけサイドウェイズの赤い目が若葉へと向けられたが、すぐにその目は彼によって逸らされる。
「今すぐサイドウェイズさんを解放してよッ!!」
父の白衣を掴み乱暴に揺さぶりながら若葉が告げると、ようやく父の視線はパソコンから逸らされ若葉へと向けられたが、その目には自分の仕事の邪魔をする者に対する苛立ちしか浮かんではいなかった。
その視線の冷たさに若葉が息を止めたのと同時に父の白衣を掴んでいた手が乱暴に振り払われたかと思えば、邪魔だと言うかのように肩を押された若葉は床の上に倒れてしまう。
「コレをどこかに閉じ込めておけ。こちらの研究が終了次第、コレの研究を始める」
淡々とした父の声に若葉は何を言われたのかすぐに理解することが出来なかった。
白衣を着た研究員が2人どこからか現れると若葉の両腕をそれぞれが掴み、逃げられないように拘束をした。
「研究?」
「そうだ。私の研究は機械と人間の共存だ。まぁ正確に言うのならば機械と人間の融合と言うべきかな・・・ある意味でお前の母親が今まさに行っていることだ」
母の事を言われた若葉はどういう意味だと考えていた時、母の身に今何が起こっているのか理解すると大きく目を開く。
母は今、メガトロンとの子どもを身ごもっている。
「本来ならばアレとアレの中に居る赤子を手に入れたかったのだが、アレの警護は厳重すぎて手が出せんからな。オートボットの軍医だけでも厄介だと言うのに、ディセプティコン達が絶えず護衛として着いているからな・・・」
「だから、私を使うと?」
「そうだ。アレとお前には血の繋がりがあるだろう?恐らく遺伝子も似ているだろうからお前も金属生命体との子どもをその身に宿す可能性が高い・・・可能性のある母体と金属生命体を手に入れる事が出来たのは幸運だった」
嬉しそうに微笑みながら父が告げた言葉を若葉は理解することが出来なかった。
正確には理解することは出来たが、ソレは到底受け入れられるわけなどなく頭がソレを認識することを拒絶した。
「そもそもお前はここであまり大切に扱われていないだろう?まぁある意味では政治的な意味合いで大切にされているのだろうが、メガトロンとてお前が居なくなればアレとアレが産む子供の三人で仲良く暮したいだろうさ」
容赦なく告げられた言葉は問答無用で若葉を傷つけていく。
「昼に・・・研究室で会ったとき、私のことを気づかっていたのも研究のために利用するためだったの?」
「アレとお前が一緒に居られれば色々と都合が悪かったからな。メガトロンとしてはお前達2人を一度に守る為に、お前達が共に居る事を望んだのだろうが私としてはソレは少しばかり困る。だから少しばかり細工をした」
「細工?」
「そうだ。少しばかりお前が私の言葉に対して従順になるように特殊な電波を発していた。まさか私の思い描いた通りの展開なるとは思わなかったがね」
父が囁いた言葉が全て自分の研究のために役立つだろう娘を利用する以外の何ものでも無かったことを理解した若葉を支配したのは激しい怒りだった。
父の、この男の言動に惑わされなければ自分は母を傷つける事は無かったのに。母が苦しむ必要はなかったのに、そう思いながら父を睨み付けた若葉に対し、父は酷く楽しげに微笑みながら口を開く。
「お前は私が悪いと思っているのだろうがそれは違う。母親に暴言を吐いたのはお前だし、そうなるように娘を育てたのは母親なのだからな・・・私はお前と会うのは初めてだろう?その私の言動に翻弄される程度の関係しかお前達にはなかっただけだ。本当に信頼し合っている母子ならば初対面との父親の言動に惑わされる必要なんてない」
朗らかに微笑みながら告げられた言葉に若葉は反論しようとするのだが、唇は見えない何かに縫い付けられてしまったかのように全く動かない。
父の言うとおりだ。
母に暴言を吐いたのは若葉で、それは変えることのない事実なのだ。
そう思った瞬間、若葉の目から涙が溢れ出す。
頬を伝い落ちていくソレを熱いとも、冷たいとも思えないまま若葉は呆然とした目をして涙を流すことしか出来ずにいた。
「ソレを連れて行け」
用はもうない、と言うかのように父が手を振る。
娘の心を砕くことが成功した今、すでにこの場に居る意味を成さないと判断した父がそう告げた瞬間、部屋の中に警報音が鳴り響く。
誰もがなんだと思いながら視線を彷徨わせる中、ガラスの割れる音がした直後、大量のガラスの破片が部屋の中に飛び散った。
「その子に触るな」
そこに居たのは怒りで顔を歪めたサイドウェイズの姿だった。