21章:臆病者のヒーロー
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彼は姿を見せることを最後まで悩んでいたが、最終的には姿を見せてくれた。
その事を後で咎められると解った上で。
そして後にやって来た刺青男から若葉を逃がし、刺青男を短い時間ながらも閉じ込めて時間を稼いでくれた。
恐らく刺青男はサイドウェイズの上官で、彼に逆らう事は色々と立場上マズイと解っていながらも若葉の為に協力してくれたのだ。
「親切?そんなもの、お前がメガトロンの娘になるって事で恩を売っておこうとしただけだろうさ・・・自分の成すべき事なんて満足に出来ず、後方支援しかできねぇ奴がやる姑息なゴマすり行為なだけだ」
痛いところを容赦なく突いてきたサイドスワイプの言葉に若葉の目が揺らぐ。
けれどその揺らぎはすぐに消え、代わりに浮かんだのは仄暗い感情だった。
何もかも諦めてしまった目、明るい未来を思い描くことを止めてしまった目、そんな目をした者を何人も見てきた事があるサイドスワイプの背筋に嫌なものが伝い落ちていく。
自分は触れてはいけない部分に触れてしまったのではないか?そう思ったサイドスワイプはこの話題から話を逸らそうとしたのだが、それほど口が上手くはないサイドスワイプには新たな話題なんてものを口にすることは出来ずに沈黙することしか出来ない。
「きっとそうなのかもしれませんね。ここに来てから誰もが私のことを閣下の娘になる者だとしてしか見ていませんから」
若葉という人間ではなく、あくまでもメガトロンの娘になる者、としてしか誰もが認識してはいない事くらいメガトロンの部下と接した若葉は十分すぎる程に理解をしていた。
彼等の関心が若葉からいずれ生まれてくる赤子へと変わることも解っていて、そうなることで自分の立ち位置が大きく変わることも解っていた。
近い将来自分は用済みになるのだろうなぁということくらい、嫌と言うほど解っている。
「私を助けてくれたサイドウェイズさんにももしかしたら打算があったかもしれません」
「・・・普通そうだろう」
「だけど」
脳裏に浮かんだのはなけなしの勇気を振り絞って必死に「逃げろ」と告げたサイドウェイズの顔だ。
「あの時私を助けてくれたサイドウェイズさんの行動を私が救われたことは事実です。だから私はサイドウェイズさんのために何かしてあげたいんです・・・自分でも馬鹿な事を言っているなぁと思いますけどね」
そう言ってぎこちなく微笑んだ若葉の顔を見るサイドスワイプの顔が大きく歪む。
その顔がサイドウェイズと被って見えた若葉は、何故彼がそんな顔をするのだろうか?と思いながら掴まれている手首ではない手でそっとその頬に触れたとき、エレベーターが目的の階層に到着したことを知らせる音が鳴るのと同時にサイドスワイプは若葉の手から離れていく。
「行くぞ」
「・・・はい」
素っ気ない言葉、素っ気ない態度、それを少しだけ寂しく感じながら若葉は無機質な廊下を歩き始めたとき、前方に立っている人物を見て息を呑む。
「やぁ若葉」
「なんで・・・・」
どうしてここに父が居るのだ?そう思いながら父親を見ていた若葉だったが、自分をここに連れて来たサイドスワイプの背中に縋るような目を向ける事しか出来ない。
「約束は果たした」
「あぁそのようだね。君が私に協力してくれたことを感謝する」
「そんなものはいらねぇよ・・・・解っているな?」
「勿論だとも。私は約束を果たす男さ」
「・・・嘘くせぇな。まぁ、いいさ」
何の前触れもなく掴まれていた手首を強く引かれた若葉は前に向かい勢いよく疎く。踏鞴を踏みながら体制を整えていると両肩をガシリと掴まれた為、驚きながら視線を上げればそこには満面の笑みを浮かべている父親の姿があった。
その事を後で咎められると解った上で。
そして後にやって来た刺青男から若葉を逃がし、刺青男を短い時間ながらも閉じ込めて時間を稼いでくれた。
恐らく刺青男はサイドウェイズの上官で、彼に逆らう事は色々と立場上マズイと解っていながらも若葉の為に協力してくれたのだ。
「親切?そんなもの、お前がメガトロンの娘になるって事で恩を売っておこうとしただけだろうさ・・・自分の成すべき事なんて満足に出来ず、後方支援しかできねぇ奴がやる姑息なゴマすり行為なだけだ」
痛いところを容赦なく突いてきたサイドスワイプの言葉に若葉の目が揺らぐ。
けれどその揺らぎはすぐに消え、代わりに浮かんだのは仄暗い感情だった。
何もかも諦めてしまった目、明るい未来を思い描くことを止めてしまった目、そんな目をした者を何人も見てきた事があるサイドスワイプの背筋に嫌なものが伝い落ちていく。
自分は触れてはいけない部分に触れてしまったのではないか?そう思ったサイドスワイプはこの話題から話を逸らそうとしたのだが、それほど口が上手くはないサイドスワイプには新たな話題なんてものを口にすることは出来ずに沈黙することしか出来ない。
「きっとそうなのかもしれませんね。ここに来てから誰もが私のことを閣下の娘になる者だとしてしか見ていませんから」
若葉という人間ではなく、あくまでもメガトロンの娘になる者、としてしか誰もが認識してはいない事くらいメガトロンの部下と接した若葉は十分すぎる程に理解をしていた。
彼等の関心が若葉からいずれ生まれてくる赤子へと変わることも解っていて、そうなることで自分の立ち位置が大きく変わることも解っていた。
近い将来自分は用済みになるのだろうなぁということくらい、嫌と言うほど解っている。
「私を助けてくれたサイドウェイズさんにももしかしたら打算があったかもしれません」
「・・・普通そうだろう」
「だけど」
脳裏に浮かんだのはなけなしの勇気を振り絞って必死に「逃げろ」と告げたサイドウェイズの顔だ。
「あの時私を助けてくれたサイドウェイズさんの行動を私が救われたことは事実です。だから私はサイドウェイズさんのために何かしてあげたいんです・・・自分でも馬鹿な事を言っているなぁと思いますけどね」
そう言ってぎこちなく微笑んだ若葉の顔を見るサイドスワイプの顔が大きく歪む。
その顔がサイドウェイズと被って見えた若葉は、何故彼がそんな顔をするのだろうか?と思いながら掴まれている手首ではない手でそっとその頬に触れたとき、エレベーターが目的の階層に到着したことを知らせる音が鳴るのと同時にサイドスワイプは若葉の手から離れていく。
「行くぞ」
「・・・はい」
素っ気ない言葉、素っ気ない態度、それを少しだけ寂しく感じながら若葉は無機質な廊下を歩き始めたとき、前方に立っている人物を見て息を呑む。
「やぁ若葉」
「なんで・・・・」
どうしてここに父が居るのだ?そう思いながら父親を見ていた若葉だったが、自分をここに連れて来たサイドスワイプの背中に縋るような目を向ける事しか出来ない。
「約束は果たした」
「あぁそのようだね。君が私に協力してくれたことを感謝する」
「そんなものはいらねぇよ・・・・解っているな?」
「勿論だとも。私は約束を果たす男さ」
「・・・嘘くせぇな。まぁ、いいさ」
何の前触れもなく掴まれていた手首を強く引かれた若葉は前に向かい勢いよく疎く。踏鞴を踏みながら体制を整えていると両肩をガシリと掴まれた為、驚きながら視線を上げればそこには満面の笑みを浮かべている父親の姿があった。