サウンドウェーブに連れられて案内されたリビングにはメガトロン以外にも見慣れた顔ぶれが揃っていた。いくつか見知らぬ顔があった事に気づいた若葉は彼等に対して軽く会釈をすると何人かは会釈を返してくれた。

　「閣下。あの・・・色々と迷惑を掛けてしまって」

　「謝罪は不要だ」

言葉を遮るかのようにメガトロンが口を挟む。
　出鼻をくじかれる形となった若葉は困惑した顔をしたまま立ち尽くすことしか出来なかったが、メガトロンが自分の座っているソファの隣を視線で見つめて座るように促してきたため大人しくその指示に従う。
　ソファに腰掛けた若葉はラヴィッジを抱え直すとフレンジーに対して隣に座るように微笑みかけると彼は渋々という顔をして座った時だ。

　「マスター」

　「・・・我が主」

聞こえてきた声に若葉が視線を向けるとそこにはスコルポノックとドリラーの姿があった。今回は蠍とミミズの姿ではなく、人間の子どもの姿をしている二人はブラックアウトとショックウェーブの隣に座っているのだが、若葉を見つめる２人の顔は憤怒で染まっている。
　堪えきれない憎しみ、そして凄まじい嫉妬に顔を歪めている２人をそれぞれの主が必死に諫めるというなんともシュールな光景がそこにはあった。
　彼等とは対照的に若葉の肩に居るレーザービークとラヴィッジは勝ち誇ったかのような雰囲気をしており、それはスコルポノックとドリラーを刺激する以外の何ものでも無い。

　「焼き鳥にするぞ、クソ鳥」

　『おうおう！やってみろよ、クソ蠍！』

　「調子に乗るなよ、クソ猫」

　『シャーッ！！！』

１羽と一匹対２人の殺伐とした雰囲気にメガトロンは項垂れると深々とため息を吐く。
　それぞれのドローンに刺激されるかのようにブラックアウトとショックウェーブの雰囲気も段々と荒々しいものへと変り始めており、そんな２人の姿を見たサウンドウェーブが勝ち誇ったかのような雰囲気のまま愛用している椅子に腰掛ける。
　何故こんな事になったのだろうか？と思いながら若葉はフレンジーへと視線を向けると、彼は事情を知っているのか呆れ半分、嬉しさ半分と言った顔をして事情を説明してくれた。

　「サウンドウェーブが色々と裏で動いたからな」

　「そうなの？」

　「おいおい？アンタ、書類にサインしたはずだろ？」

　「あー・・・サインをした記憶があるけど内容まではちょっと解らないかなぁ」

若葉の返答にフレンジーは驚いたように赤い目を開く。

　「いやいや・・・知っててサインしたんだよな？」

まさか、信じられないと言うかのような声でフレンジーは告げると鋭い目をサウンドウェーブへと向けるが、そんな視線など意にも介さないと言うかのようにサウンドウェーブは涼しげな顔をして座っていた。
　フレンジーの言葉を聞いて若葉はそう言えば熱を出した日の夜にサウンドウェーブから書類にサインするように言われたこと思い出すとそれをフレンジーに伝えれば、フレンジーは呆れたような眼差しを向けてくる。

　「疑わなかったのか？」

　「色々と含みがあるのは感じたけど・・・・相手が悪すぎると思わない？」

チラリとサウンドウェーブに視線を向けた若葉が言わんとする意図を感じ取ったフレンジーは同情すると言うかのような生温かな眼差しと共に頷く。

　「同感だ」

　「私がサインした書類って何なの？」

高熱が出ていたため思考が朧気だった事と、書類が若葉には解らない英語で作成された為、若葉はサウンドウェーブに促されるがままにサインをしてしまったが、荒れ狂う彼等の姿を見るとアレはサインしてはいけない書類だったのではないかと今になって気づいたのだが、全てがあまりにも遅すぎた。