3章:最悪な初顔合わせ
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慣れない体勢で寝ていたからか、またはずっと座っていたからなのかは解らないが、目的地に着く頃には身体の節々が鈍くなっているかのような錯覚を抱きながら若葉は飛行機から降りる。
眼前に広がっているのは真っ白な砂浜と、鮮やかな紺碧で彩られた海と、雲一つ無い澄みきった青空だ。
リゾート地と謙遜しないその光景を見た若葉の口から感嘆の声が出るのも仕方の無い事だった。
「凄く良いところでしょ?」
若葉から数分遅れて飛行機から降りた母は若葉の隣に立つと、眼前に広がる光景を当たり前のことのように受け入れている事から、母がここに来るのは今回が初めてではないのだと若葉は悟る。
「来たことあるの?」
「・・・・えぇ。何度かね」
母は若葉が中学に入った頃から出張が多くなっていた。
まだ未成年の我が子を一人残すことに対して不安そうな顔を母は最初の頃こそしていたが、一人で留守番をさせても若葉が夜遊びをすることもせず大人しく、真面目に過ごしていると認識した母はそれから何度か出張をすることがあった。
恐らくその時にここに来たのだろうなぁと思った若葉がこっそりと母の様子を伺えば、母は娘に黙ってこんな良いところに来ていたことに対し罪悪感を抱いているらしく不安そうな顔をしていた。
「お金持ちのプライベートビーチみたいだね」
「お母さんも最初来た時に同じ事を思ったわ」
リゾート地として最高の場所とも言えるその島に唯一不釣り合いとも言える建物があるせいか、全ての景観が見事にぶち壊しになっている。
若葉は恐る恐るその方向へと視線を向けると、そこには高級ホテルではなく軍事施設がそびえ建っていた。
金網にぐるっと囲まれている軍事施設の存在は明らかに異様な雰囲気をしている。
「飛行機から見えた時は嘘だと思ったし、着陸した時もきっと夢だと思ったけど、紛れもなくここは軍の基地だね」
「そうよ。まぁ軍は軍なのだけれど正確にはちょっと違うのよねぇ」
ポツリと言われた母の言葉に若葉はどういう意味だというかのように視線を向けるが、母は曖昧に微笑むだけで何も答えてはくれない。
もしかして自分は来てはいけない場所に来てしまったのかもしれない。
そう母に問いかけようとした時、今の今まで眠っていたレノックス大佐が飛行機から降りてくると、母と何やら真剣な面持ちで会話を始める。
どこか張り詰めた雰囲気を漂わせながら母とレノックス大佐との間で凄まじい速さで交わされる会話、それも英語ともなれば二人の間に割っては入れるほどの度胸もなければ、英語力もない若葉は口を噤んでいる事しか出来なかった時だ。
「若葉ちゃん」
「なに?」
「お母さんね、ちょっとお仕事に行かなくちゃいけなくなったの」
まさかの爆弾発言に若葉は絶句することしか出来ない。
思うように意思の疎通が出来ないこの異国の地、それも周りが海に囲まれている軍事基地に娘を放り出すのか、と言いたげな顔をして母を見つめれば母は大丈夫だというかのように微笑む。
「夜までには戻れるだろうから、あの人を交えて一緒に夕飯食べましょうね」
「いや、私の言いたいことはそうじゃないよ」
「ここに居る間に寝泊まりする施設まではレノックス大佐が連れて行ってくれるから安心して?外出は明日までちょっと我慢してくれる?お母さんが帰ってくるまでの間はテレビでも見て時間を潰していてね」
言いたいことだけ告げた母はどこからかやって来た軍人と共に颯爽とした足取りで娘の前から姿を消す。
「ちょ・・・母さん!!」
遠ざかっていく母の背に向かい若葉は縋るように手を伸ばすが、振り返ることなく去っていく母の姿を認識するのと同時に、伸ばした手の指先が何かを諦めるかのようにそっと下げられた。
眼前に広がっているのは真っ白な砂浜と、鮮やかな紺碧で彩られた海と、雲一つ無い澄みきった青空だ。
リゾート地と謙遜しないその光景を見た若葉の口から感嘆の声が出るのも仕方の無い事だった。
「凄く良いところでしょ?」
若葉から数分遅れて飛行機から降りた母は若葉の隣に立つと、眼前に広がる光景を当たり前のことのように受け入れている事から、母がここに来るのは今回が初めてではないのだと若葉は悟る。
「来たことあるの?」
「・・・・えぇ。何度かね」
母は若葉が中学に入った頃から出張が多くなっていた。
まだ未成年の我が子を一人残すことに対して不安そうな顔を母は最初の頃こそしていたが、一人で留守番をさせても若葉が夜遊びをすることもせず大人しく、真面目に過ごしていると認識した母はそれから何度か出張をすることがあった。
恐らくその時にここに来たのだろうなぁと思った若葉がこっそりと母の様子を伺えば、母は娘に黙ってこんな良いところに来ていたことに対し罪悪感を抱いているらしく不安そうな顔をしていた。
「お金持ちのプライベートビーチみたいだね」
「お母さんも最初来た時に同じ事を思ったわ」
リゾート地として最高の場所とも言えるその島に唯一不釣り合いとも言える建物があるせいか、全ての景観が見事にぶち壊しになっている。
若葉は恐る恐るその方向へと視線を向けると、そこには高級ホテルではなく軍事施設がそびえ建っていた。
金網にぐるっと囲まれている軍事施設の存在は明らかに異様な雰囲気をしている。
「飛行機から見えた時は嘘だと思ったし、着陸した時もきっと夢だと思ったけど、紛れもなくここは軍の基地だね」
「そうよ。まぁ軍は軍なのだけれど正確にはちょっと違うのよねぇ」
ポツリと言われた母の言葉に若葉はどういう意味だというかのように視線を向けるが、母は曖昧に微笑むだけで何も答えてはくれない。
もしかして自分は来てはいけない場所に来てしまったのかもしれない。
そう母に問いかけようとした時、今の今まで眠っていたレノックス大佐が飛行機から降りてくると、母と何やら真剣な面持ちで会話を始める。
どこか張り詰めた雰囲気を漂わせながら母とレノックス大佐との間で凄まじい速さで交わされる会話、それも英語ともなれば二人の間に割っては入れるほどの度胸もなければ、英語力もない若葉は口を噤んでいる事しか出来なかった時だ。
「若葉ちゃん」
「なに?」
「お母さんね、ちょっとお仕事に行かなくちゃいけなくなったの」
まさかの爆弾発言に若葉は絶句することしか出来ない。
思うように意思の疎通が出来ないこの異国の地、それも周りが海に囲まれている軍事基地に娘を放り出すのか、と言いたげな顔をして母を見つめれば母は大丈夫だというかのように微笑む。
「夜までには戻れるだろうから、あの人を交えて一緒に夕飯食べましょうね」
「いや、私の言いたいことはそうじゃないよ」
「ここに居る間に寝泊まりする施設まではレノックス大佐が連れて行ってくれるから安心して?外出は明日までちょっと我慢してくれる?お母さんが帰ってくるまでの間はテレビでも見て時間を潰していてね」
言いたいことだけ告げた母はどこからかやって来た軍人と共に颯爽とした足取りで娘の前から姿を消す。
「ちょ・・・母さん!!」
遠ざかっていく母の背に向かい若葉は縋るように手を伸ばすが、振り返ることなく去っていく母の姿を認識するのと同時に、伸ばした手の指先が何かを諦めるかのようにそっと下げられた。