☆2065 X'mas パラレルなよりみちのおはなし
ヤバい。俺の身体が薪さんにハッキリと反応を示してしまった―――
それは尊敬するあの人を冒涜する衝動なんじゃないかと葛藤しながら、店の外に出て真冬の夜風に当たる。しかし頭を冷やすどころか寒さすら感じない。薪さんへのいろんな想いに心が掻き乱されて、それどころじゃないのだ。
「あおき」
惹きよせられるように振り向くと、薪さんがすぐ後ろに佇んでいて。
「どうしてこんなところに……寒いだろう?ほら」
薪さんが持つとやたらと大きく見える俺のコートが、広げて肩にかけられる。
「ありがとう………ございます」
罪な人だ。いや罪人は俺か?
でもこれは夢や幻覚ではないみたいだ。
こんなときに限って優しい薪さんが、目一杯背伸びしてかけてくれた俺のコートに、室内から運ばれた温もりを感じるから。
「酔いを冷ましてたんですよ。俺、イブの晩には大役がありますので……」
「…………ふ、サンタクロースか」
薪さんが俺の腕のなかで笑う。
いつのまにか俺は薪さんを抱きしめてしまったらしい。
薪さんも何も言わず、心地よさそうに凭れて目を閉じているから、沸き上がる愛しさに任せて俺も抱いたままで………何分か後に、第九メンバーの話し声が聞こえてきくると同時に頬に平手打ちをくらう。
バシッ――!
「おい、離れろ………って、青木!」
「薪さん暴れちゃだめですって。足元少しふらついて…………あっ岡部さん!」
俺の頬を打った手は今度は顎を思い切り突き上げ、俺の腕をくぐり抜けようともがいてる。それでも捩る身体をなんとか掴まえたまま、店から出てきた岡部さんに引き渡した。
「ほら、薪さん、帰りますよ」
慣れた扱いで薪さんの身柄を引き受けた岡部さんが、薪さんとの揉み合いでずれたメガネを直す俺の顔をじっと見ている。
「青木……今日は旨い店教えてくれて有難うな」
「いいえ、幹事をお任せしてすみません」
「いや、いいんだ。お前の回復祝でもあるんだから。それより………」
岡部さんは項垂れて大人しくなっている薪さんに視線を移して、一瞬黙る。
そして、一段低い声でぼそりと呟いた。
「お前、どういうつもりか知らないが………あまり薪さんを刺激せんでくれ」
「えっ……」
言われた俺に心当たりはない。てかむしろこっちが刺激を与えられてる側なんですが……と目を白黒させる俺に、岡部さんはさらに低い声で耳打ちをした。
「頬に手形がついてるぞ」と。
そうだ。
薪さんを抱きしめてしまったのは、たしかに俺の仕業だ。
無意識に俺がこうやって薪さんにちょっかいを出し、ただでさえ脆いあの人の精神を不安定にしているのだとしたら、岡部さんの心配も的外れではないだろう。
でもどこか腑に落ちない………
「おーい、青木。お前の忘れ物だぞ」
酔いと心の乱れでボーッとしている俺のところに、曽我さんが駆け寄ってきてコートに何かを押し込んだ。
その後皆は別れの挨拶をして、それぞれの宿泊先へと散っていく。
ポケットに収まる岡…じゃなくてイケメンゴリラのジャパーニとともに、俺は一人少し歩いて駅前で列をなすタクシーに乗り込んだ。
それは尊敬するあの人を冒涜する衝動なんじゃないかと葛藤しながら、店の外に出て真冬の夜風に当たる。しかし頭を冷やすどころか寒さすら感じない。薪さんへのいろんな想いに心が掻き乱されて、それどころじゃないのだ。
「あおき」
惹きよせられるように振り向くと、薪さんがすぐ後ろに佇んでいて。
「どうしてこんなところに……寒いだろう?ほら」
薪さんが持つとやたらと大きく見える俺のコートが、広げて肩にかけられる。
「ありがとう………ございます」
罪な人だ。いや罪人は俺か?
でもこれは夢や幻覚ではないみたいだ。
こんなときに限って優しい薪さんが、目一杯背伸びしてかけてくれた俺のコートに、室内から運ばれた温もりを感じるから。
「酔いを冷ましてたんですよ。俺、イブの晩には大役がありますので……」
「…………ふ、サンタクロースか」
薪さんが俺の腕のなかで笑う。
いつのまにか俺は薪さんを抱きしめてしまったらしい。
薪さんも何も言わず、心地よさそうに凭れて目を閉じているから、沸き上がる愛しさに任せて俺も抱いたままで………何分か後に、第九メンバーの話し声が聞こえてきくると同時に頬に平手打ちをくらう。
バシッ――!
「おい、離れろ………って、青木!」
「薪さん暴れちゃだめですって。足元少しふらついて…………あっ岡部さん!」
俺の頬を打った手は今度は顎を思い切り突き上げ、俺の腕をくぐり抜けようともがいてる。それでも捩る身体をなんとか掴まえたまま、店から出てきた岡部さんに引き渡した。
「ほら、薪さん、帰りますよ」
慣れた扱いで薪さんの身柄を引き受けた岡部さんが、薪さんとの揉み合いでずれたメガネを直す俺の顔をじっと見ている。
「青木……今日は旨い店教えてくれて有難うな」
「いいえ、幹事をお任せしてすみません」
「いや、いいんだ。お前の回復祝でもあるんだから。それより………」
岡部さんは項垂れて大人しくなっている薪さんに視線を移して、一瞬黙る。
そして、一段低い声でぼそりと呟いた。
「お前、どういうつもりか知らないが………あまり薪さんを刺激せんでくれ」
「えっ……」
言われた俺に心当たりはない。てかむしろこっちが刺激を与えられてる側なんですが……と目を白黒させる俺に、岡部さんはさらに低い声で耳打ちをした。
「頬に手形がついてるぞ」と。
そうだ。
薪さんを抱きしめてしまったのは、たしかに俺の仕業だ。
無意識に俺がこうやって薪さんにちょっかいを出し、ただでさえ脆いあの人の精神を不安定にしているのだとしたら、岡部さんの心配も的外れではないだろう。
でもどこか腑に落ちない………
「おーい、青木。お前の忘れ物だぞ」
酔いと心の乱れでボーッとしている俺のところに、曽我さんが駆け寄ってきてコートに何かを押し込んだ。
その後皆は別れの挨拶をして、それぞれの宿泊先へと散っていく。
ポケットに収まる岡…じゃなくてイケメンゴリラのジャパーニとともに、俺は一人少し歩いて駅前で列をなすタクシーに乗り込んだ。