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「ふーん、確かにお前の正装は見栄えが好いな。菰田委員長も褒めていたが……」
「へっ!?あ、ありがとうございます」
二人きりのホテルの部屋。パーティー会場の雰囲気をそのまま持ってきたようなゴージャスな内装に、シングル使いとは思えないキングサイズのベッドが一つ。ここに薪が一人で寝るところを思い浮かべると、青木のベッドを広々と使ってかくれんぼしている舞の姿がつい重なって思わず頬が緩む。
でも何で今更俺、品定めされてるんだろう。
ハッ、まさかこの人、見合いを斡旋しようとしてるんじゃ……!?
「あの、もう脱いじゃって……大丈夫でしょうか?」
「クスッ、勿論だ」
機嫌よく微笑む薪に見守られながら、上着を脱ぎ、蝶ネクタイを外す青木。
良かった。ご機嫌も麗しいし、見合いの話も無さそうだ。と、安堵したのも束の間だった。
振り向くと、素早くローブに着替えた薪がこっちを見ていて、ドクンと青木の鼓動が跳ねる。
「青木」
「……は、ハイ」
顔を赤くして姿勢を正す青木に近づき、顔を覗きこむようにして薪が訊ねた。
「僕を抱けるか?」
「??……はい。もちろんです」
青木は真顔で両手を広げ、遠慮がちに薪を抱きしめた。
以上、ミッション完了。何なら抱きしめた腕を離さずに、背中を撫でてくれている大きな手がとても気持ちいい。
うーん……これはこれで良いんだが……
抱擁された薪は目を閉じながら、眉間に苦悩の皺を寄せる。
仕方ない。次のトリガーを引いてみよう。
「風呂、入るか?」
「えっ、そんなに寛いじゃっていいんですか?」
「逆にお前、ここへ何しに来たんだ?」
「え、っと……特に目的はなくて、ただあなたと……」
一緒にいたい一心だった。
正座させられ説教をくらおうと、見合い話をねじ込まれようと構わない。第九新組織立ち上げに向けた構想を熱く語らうのもアリだ。が、のんびり寛げるのならそれに越したことはない。
むしろホテルの部屋は一般的に、そういう用途で使われるものなんだろうし。
「青木」
「……はいっ」
「お前も入るか?」
「……え、ええっ!?」
シャツの背中を鷲掴みされ引っ張っていかれたバスルームには、広い洗い場にバスタブとシャワー、そしてその隅にはもう一つ独立したシャワーブースがあった。
「お前はあっちを使えばいいだろ」
「ああ……そう……ですね」
ここでオジサン同士裸の付き合いを……というつもりではなかったらしい。拍子抜けしつつも安堵する。が、平静でいられる状況だとは、まだ到底言い難い。
今夜の薪は何かが違うのだ。
ネジが弛んでる、いやわざと弛めてるような。
要するに……隙だらけで危うすぎる。
呆気にとられて佇む青木を横目に、薪はバスタブに栓をして、湯加減を見ながらコックを全開にし、脱衣場に戻ってきたかと思うと、あろうことにそこでローブを脱ぎ捨てた。
「っ……!!」
青木の鼓動が飛び出さんばかりに跳ね、体中の血流を激しく巡らせ息を呑む。
今まで薪の肌を見たことが無かった訳じゃないが、いきなり全裸はさすがに初めてだ。
バスタブに向かって歩いていく後ろ姿から、目を逸らすことができない。
まるで芸術品のように靭やかな骨格と筋肉が織りなす身体のライン。その無駄のないシャープさに、腰からお尻にかけての未熟で柔らかな曲線が加わり、肌の色の透明感が瑞々しさを際立たせている。
“美味しそう”
食欲のような生々しい衝動が、真っ正直に青木のオトコの本能を直撃する。
禁断の果実とは、まさにこのことなんだろう。
衝き上げる欲望がそのまま具現化した下半身に気づいた青木は、慌ててそこを隠しながら、服を脱いでシャワーブースへと逃げ込んだ。
「へっ!?あ、ありがとうございます」
二人きりのホテルの部屋。パーティー会場の雰囲気をそのまま持ってきたようなゴージャスな内装に、シングル使いとは思えないキングサイズのベッドが一つ。ここに薪が一人で寝るところを思い浮かべると、青木のベッドを広々と使ってかくれんぼしている舞の姿がつい重なって思わず頬が緩む。
でも何で今更俺、品定めされてるんだろう。
ハッ、まさかこの人、見合いを斡旋しようとしてるんじゃ……!?
「あの、もう脱いじゃって……大丈夫でしょうか?」
「クスッ、勿論だ」
機嫌よく微笑む薪に見守られながら、上着を脱ぎ、蝶ネクタイを外す青木。
良かった。ご機嫌も麗しいし、見合いの話も無さそうだ。と、安堵したのも束の間だった。
振り向くと、素早くローブに着替えた薪がこっちを見ていて、ドクンと青木の鼓動が跳ねる。
「青木」
「……は、ハイ」
顔を赤くして姿勢を正す青木に近づき、顔を覗きこむようにして薪が訊ねた。
「僕を抱けるか?」
「??……はい。もちろんです」
青木は真顔で両手を広げ、遠慮がちに薪を抱きしめた。
以上、ミッション完了。何なら抱きしめた腕を離さずに、背中を撫でてくれている大きな手がとても気持ちいい。
うーん……これはこれで良いんだが……
抱擁された薪は目を閉じながら、眉間に苦悩の皺を寄せる。
仕方ない。次のトリガーを引いてみよう。
「風呂、入るか?」
「えっ、そんなに寛いじゃっていいんですか?」
「逆にお前、ここへ何しに来たんだ?」
「え、っと……特に目的はなくて、ただあなたと……」
一緒にいたい一心だった。
正座させられ説教をくらおうと、見合い話をねじ込まれようと構わない。第九新組織立ち上げに向けた構想を熱く語らうのもアリだ。が、のんびり寛げるのならそれに越したことはない。
むしろホテルの部屋は一般的に、そういう用途で使われるものなんだろうし。
「青木」
「……はいっ」
「お前も入るか?」
「……え、ええっ!?」
シャツの背中を鷲掴みされ引っ張っていかれたバスルームには、広い洗い場にバスタブとシャワー、そしてその隅にはもう一つ独立したシャワーブースがあった。
「お前はあっちを使えばいいだろ」
「ああ……そう……ですね」
ここでオジサン同士裸の付き合いを……というつもりではなかったらしい。拍子抜けしつつも安堵する。が、平静でいられる状況だとは、まだ到底言い難い。
今夜の薪は何かが違うのだ。
ネジが弛んでる、いやわざと弛めてるような。
要するに……隙だらけで危うすぎる。
呆気にとられて佇む青木を横目に、薪はバスタブに栓をして、湯加減を見ながらコックを全開にし、脱衣場に戻ってきたかと思うと、あろうことにそこでローブを脱ぎ捨てた。
「っ……!!」
青木の鼓動が飛び出さんばかりに跳ね、体中の血流を激しく巡らせ息を呑む。
今まで薪の肌を見たことが無かった訳じゃないが、いきなり全裸はさすがに初めてだ。
バスタブに向かって歩いていく後ろ姿から、目を逸らすことができない。
まるで芸術品のように靭やかな骨格と筋肉が織りなす身体のライン。その無駄のないシャープさに、腰からお尻にかけての未熟で柔らかな曲線が加わり、肌の色の透明感が瑞々しさを際立たせている。
“美味しそう”
食欲のような生々しい衝動が、真っ正直に青木のオトコの本能を直撃する。
禁断の果実とは、まさにこのことなんだろう。
衝き上げる欲望がそのまま具現化した下半身に気づいた青木は、慌ててそこを隠しながら、服を脱いでシャワーブースへと逃げ込んだ。