(闇)Alptraum

 ツヨシ、僕の大事な子。
あの日僕もお前の母さんと話をしたんだよ。
 
「私も青木君もお互いに、相手があなたを好きだと知ってるの。しかもそれを好ましくさえ思っているわ。だからもう“お互いを愛してる”なんてキレイゴトは終わりにしたいのよ」

それじゃ結婚の継続は不可能なのでは、と心配する僕に彼女はにっこり微笑んだ。

「子はかすがいというでしょう。私たち二人が愛する人の子がきっとかすがいになるわ。わかるでしょ?」
 
 いいや、わかるもんか。
でも理解に苦しんだ僕が、結局折れる側になった。
 あの日僕が彼女に渡した自分の種は、目隠しをして青木に愛される想像をしながら吐いた精子だ。
 それで彼女は青木の愛する人の子を産んだつもりでいるけれど、ツヨシは僕が愛する人を想って捧げた種でできている。

 ツヨシを中心に美しく輝く世界。

 みんながツヨシを愛し、ツヨシを愛することで、歪ながらなぜかキレイに繋がっていた。
 ツヨシがパパっ子なのも僕譲り。
 これでいいんだ。
 青木の愛情溢れる腕のなかで安らぐツヨシの笑顔を、僕は自分と重ねて充足を得ようとした。

 そんなツヨシへの深い感情が、愛情という名を借りて、僕とこの美しい世界を歪な慾求の炎で焼き尽くすことになるとは露知らず。
 駄目だ。僕はわかっている。
このままじゃ、僕は―――
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