(闇)Alptraum
「知ってますよ。薪さんでしょう?」
覗いていたモニターから離れ、いつの間にか僕の近くに立っている青木は、頭を抱えて立ち上がる僕の両手首を掴んで、宥めるように囁いた。
雷雨が僕から一瞬離れ、青木の言葉がハッキリと聞き取れる。
「これで四人とも幸せになれますね」と。
意味がわからない。どこか狂ってる。目の前の大男の大きな手の温かさとはうらはらの異様さに、僕の血の気がひいていく。
「ツヨシを身籠ったとき雪子さんが言ってくれたんです。“私たちの一番愛する人の子どもを産んであげる。世界一幸せな家族になろうね”って」
「……はあ?」
これは現実じゃない。そもそもコイツ自体が怪しいじゃないか!と僕の本能がざわめき訴える。
目の前で僕を支える青木の顔はただの仮面。その裏でほくそ笑む悪魔の焼け落ちた顔が透けてみえるから。
「っ……ツヨシなんてデタラメだ。それより舞は?どうするんだ?」
「まい?」
その名を聞いても悪魔は青木の顔色を一つも変えずにまくしたててくる。
「知りません。それこそ夢ではないですか?ツヨシだけが俺の子どもです。俺はこれからあの子のためだけに……」
「うるさい!うるさい!!」
僕の叫びは、内側でふたたびやかましくなった雷鳴と豪雨に遮られ、同時に捜査室内は停電し、舞台の幕切れのように暗転した。
覗いていたモニターから離れ、いつの間にか僕の近くに立っている青木は、頭を抱えて立ち上がる僕の両手首を掴んで、宥めるように囁いた。
雷雨が僕から一瞬離れ、青木の言葉がハッキリと聞き取れる。
「これで四人とも幸せになれますね」と。
意味がわからない。どこか狂ってる。目の前の大男の大きな手の温かさとはうらはらの異様さに、僕の血の気がひいていく。
「ツヨシを身籠ったとき雪子さんが言ってくれたんです。“私たちの一番愛する人の子どもを産んであげる。世界一幸せな家族になろうね”って」
「……はあ?」
これは現実じゃない。そもそもコイツ自体が怪しいじゃないか!と僕の本能がざわめき訴える。
目の前で僕を支える青木の顔はただの仮面。その裏でほくそ笑む悪魔の焼け落ちた顔が透けてみえるから。
「っ……ツヨシなんてデタラメだ。それより舞は?どうするんだ?」
「まい?」
その名を聞いても悪魔は青木の顔色を一つも変えずにまくしたててくる。
「知りません。それこそ夢ではないですか?ツヨシだけが俺の子どもです。俺はこれからあの子のためだけに……」
「うるさい!うるさい!!」
僕の叫びは、内側でふたたびやかましくなった雷鳴と豪雨に遮られ、同時に捜査室内は停電し、舞台の幕切れのように暗転した。