2069 青誕 RING

「えっ……」

 何故薪さんがこれ・・を?
タクシーの中で外して皮財布のファスナーの定位置に仕舞い、ジャケットの内ポケットに収めたはず。
 薬指を確かめようとしても、薪の手に組むように握られて阻まれ、ベッドに縺れて重なって倒れ込むしかない。

 結局自分のやってることは舞と変わらないのかもしれない。
 本人の了承も得ずに夫気分で嵌めてる指輪。その存在も嵌めてる理由も黙ったままなんて。
 でも薪もそれを咎めることもなく、ただ焦れったげに切ない吐息で結合を急かしてくる。
 せっかく誕生日の晩をともにすごしているのに、心がどこかよそよそしくて、身体だけがやけに素直に繋がりを貪りあう。

「っ……あ……待、て」

「すみません。月曜からこんな……でも挿れますよ」

 奥で蠢き薪を解していた長い指が引き抜かれ、かわりに青木の熱い先端が蕾を押し拡げ内へと食い込んだ。

「いいですか?」

 薪は目を閉じてぶんぶんと首を横に振るが、嫌なはずないのだ。そのためにここへ来て全てを片付けたのだから。

「あぅ…………っ」

 自分の身体が狂いそうなほど青木との結合を求めていることくらいとうに見抜かれているだろう。
 青木の腰に抱きつくように絡む両脚。ゆっくり内側を侵食してくる青木の肉棒を喰い締める自分の物欲しげなうねりが、結合をとおして伝わっていないはずがないのだ。

「薪さん、少しのあいだ、手を」

 大きな右手が震える腰を支えじわじわと身体の結合を深めながら、リングをつけた左手をほどいて薪の蜜がしたたる屹立を包む。

「…………ぁ……っはぁ……」

 目を閉じた薪はうっとりと息を吐いた。
 震えて滴る薪自身を甘く扱く青木の左手に嵌まったリング。その裏に刻まれたイニシャルT.M と謎の日付が目蓋に浮かび、揺すられながら自然に口元が緩む。

 こんなとき身長差があるのは便利だ。
正常位で繋がる相手の胸元で顔を隠しながら、ニヤニヤしたり、存分に乱れた表情だってできるから。
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