episode3 R18
「おはようございます」
「おはよう」
歯磨きしている薪と、洗面台の鏡越しに目が合った青木は、礼儀正しく頭を下げる。
パジャマ姿も凛として麗しい薪も、スッキリした爽やかな笑顔をみせる青木も、実は全身がとてもだるくて重い。だが凄くゆっくり休めた気がするのは、心と身体の欲求が一度満タンになったお陰だろう。
「舞は?」
「もう少ししたら起こしますよ」
いつものシャツとスラックスを身につけた薪が訊ね、休日スタイルの青木が穏やかに答える二人きりの和の食卓。
薪の小鳥のような胃袋むけにこぢんまりと盛りつけられたご飯と味噌汁と鰆の西京焼は、漂う味噌と酒粕と白米の甘い匂いで、珍しくささやかな食欲をそそる。
「今日は伯父様宅へお母様を迎えに、そして舞も病院につれて行くんだったな」
「ええ」
“その途中、墓参りへ”
その言葉はなぜか薪の前で口に出来ない。
そこに眠る父と姉夫婦に、舞の無事の御礼と騒動を詫びに行くつもりだった。だが伝えずとも結局、薪も同じことを考えていたようだ。
霊園の管理室にいる顔見知りのおばさんが「あのかわいか男ん子が、今日もまた来とんしゃったばい」と目を細めながら教えてくれるのを聞いて、今度からは一緒に来ようと心に決めた。
薪は午後には病院にも来てくれていた。
ただそれは、例の捜査が片付いたから寄ったのだと思う。
帰京の目処が立ったのだ。
またしばらく会えない日々が続くのか……
舞は医師のお墨付きをもらい、金曜の明日から通常運転になる。光の病は重いが、対処療法がうまく行けば週末中に一旦退院できる。
皆それぞれの日常に戻っていくんだ、薪も例に違わず。
「おはよう」
歯磨きしている薪と、洗面台の鏡越しに目が合った青木は、礼儀正しく頭を下げる。
パジャマ姿も凛として麗しい薪も、スッキリした爽やかな笑顔をみせる青木も、実は全身がとてもだるくて重い。だが凄くゆっくり休めた気がするのは、心と身体の欲求が一度満タンになったお陰だろう。
「舞は?」
「もう少ししたら起こしますよ」
いつものシャツとスラックスを身につけた薪が訊ね、休日スタイルの青木が穏やかに答える二人きりの和の食卓。
薪の小鳥のような胃袋むけにこぢんまりと盛りつけられたご飯と味噌汁と鰆の西京焼は、漂う味噌と酒粕と白米の甘い匂いで、珍しくささやかな食欲をそそる。
「今日は伯父様宅へお母様を迎えに、そして舞も病院につれて行くんだったな」
「ええ」
“その途中、墓参りへ”
その言葉はなぜか薪の前で口に出来ない。
そこに眠る父と姉夫婦に、舞の無事の御礼と騒動を詫びに行くつもりだった。だが伝えずとも結局、薪も同じことを考えていたようだ。
霊園の管理室にいる顔見知りのおばさんが「あのかわいか男ん子が、今日もまた来とんしゃったばい」と目を細めながら教えてくれるのを聞いて、今度からは一緒に来ようと心に決めた。
薪は午後には病院にも来てくれていた。
ただそれは、例の捜査が片付いたから寄ったのだと思う。
帰京の目処が立ったのだ。
またしばらく会えない日々が続くのか……
舞は医師のお墨付きをもらい、金曜の明日から通常運転になる。光の病は重いが、対処療法がうまく行けば週末中に一旦退院できる。
皆それぞれの日常に戻っていくんだ、薪も例に違わず。