episode4 R18
「お風呂、お先にありがとうございます」
躾がいいのは以前からだが、作り笑顔をしなくなった光は少し子どもらしく見えた。
「青木さんは?」
「ソファーで爆睡してる。それでお前が寝るのは僕と一緒にこのベッドだ。先に休んでていいぞ」
「なぁんだ、青木さんと一緒に寝れないのかぁ」
光はソファーで爆睡している大きな塊に目をやりながら、肩をすくめて残念そうに呟く。
「あ、お風呂ごゆっくりどうぞ。別にあなたの目を盗んで青木さんに悪いコトしないんで」
「フッ、それ以前にこの部屋でお前が僕の目を盗むこと自体不可能だが、な」
余裕の笑みを見せて、薪がバスルームに歩いていく。その割に声はすごく怖かったけれど。
監視してるってこと?それともただの威嚇?
でももし本当にこの部屋にカメラが仕込まれているのなら、むしろこの人の日常や恋人との情事を覗きたいくらいだ。
気になる二人のやりとりは、全部知りたい。
大人になってからのお楽しみ、なんて悠長なこと言ってられないんだから。
ベッドに仰向けに体を投げ出した光は、しなやかなスプリングとシーツの肌触り、そしていい匂いに包まれる心地よさに、深く呼吸しながら目を閉じた。
棘があっても薔薇が人を魅了するように、青木もこの人に虐げられても美しさやいい香りの抱擁に参るのだろうか。
そのまま眠ってしまった光は、ヘンな夢を見た。
夢の中で覗いた鏡に、自分じゃなく薪の姿が映っているのだ。
どうしよう……!!
驚きや戸惑い以上のときめきと興奮が込み上げてきて、胸が苦しい。
「………っ、まきさ……っ!」
「どうした」
自分の心臓がバクバクいっているけど、これは病気のせいじゃない。
目を開けた至近距離には、眉をひそめた薪の顔がある。
「え……なんで?」
光は少し体をずらしながらヘッドボードの時計と、鼻先まで近づいて自分を覗き込んでいる薪の顔を、眉をひそめて見比べた。
「お前がうなされて僕を呼んだんだろ」
「えっ、あ…………ごめんなさい」
うなされていたわけじゃないんだけど。
悪夢でもなかった、と思う。
夢だとわかって拍子抜けしている位だから。
「眠れるか?」
顔色を確かめながら薪が訊くと、光は頷いて、整えてもらった枕に仰向けに横になった。
「あの……」
光の細い声に、閉じていた薪の瞼が開く。
「こっちを……向いててもらえませんか?」
「…………」
言われた通りに薪が寝返りをうつと、同じ格好の光が目を見開いてこっちをじっと見ている。
しばらく見つめあったままでいると、光はうっとりと微笑みながら目を閉じていった。
躾がいいのは以前からだが、作り笑顔をしなくなった光は少し子どもらしく見えた。
「青木さんは?」
「ソファーで爆睡してる。それでお前が寝るのは僕と一緒にこのベッドだ。先に休んでていいぞ」
「なぁんだ、青木さんと一緒に寝れないのかぁ」
光はソファーで爆睡している大きな塊に目をやりながら、肩をすくめて残念そうに呟く。
「あ、お風呂ごゆっくりどうぞ。別にあなたの目を盗んで青木さんに悪いコトしないんで」
「フッ、それ以前にこの部屋でお前が僕の目を盗むこと自体不可能だが、な」
余裕の笑みを見せて、薪がバスルームに歩いていく。その割に声はすごく怖かったけれど。
監視してるってこと?それともただの威嚇?
でももし本当にこの部屋にカメラが仕込まれているのなら、むしろこの人の日常や恋人との情事を覗きたいくらいだ。
気になる二人のやりとりは、全部知りたい。
大人になってからのお楽しみ、なんて悠長なこと言ってられないんだから。
ベッドに仰向けに体を投げ出した光は、しなやかなスプリングとシーツの肌触り、そしていい匂いに包まれる心地よさに、深く呼吸しながら目を閉じた。
棘があっても薔薇が人を魅了するように、青木もこの人に虐げられても美しさやいい香りの抱擁に参るのだろうか。
そのまま眠ってしまった光は、ヘンな夢を見た。
夢の中で覗いた鏡に、自分じゃなく薪の姿が映っているのだ。
どうしよう……!!
驚きや戸惑い以上のときめきと興奮が込み上げてきて、胸が苦しい。
「………っ、まきさ……っ!」
「どうした」
自分の心臓がバクバクいっているけど、これは病気のせいじゃない。
目を開けた至近距離には、眉をひそめた薪の顔がある。
「え……なんで?」
光は少し体をずらしながらヘッドボードの時計と、鼻先まで近づいて自分を覗き込んでいる薪の顔を、眉をひそめて見比べた。
「お前がうなされて僕を呼んだんだろ」
「えっ、あ…………ごめんなさい」
うなされていたわけじゃないんだけど。
悪夢でもなかった、と思う。
夢だとわかって拍子抜けしている位だから。
「眠れるか?」
顔色を確かめながら薪が訊くと、光は頷いて、整えてもらった枕に仰向けに横になった。
「あの……」
光の細い声に、閉じていた薪の瞼が開く。
「こっちを……向いててもらえませんか?」
「…………」
言われた通りに薪が寝返りをうつと、同じ格好の光が目を見開いてこっちをじっと見ている。
しばらく見つめあったままでいると、光はうっとりと微笑みながら目を閉じていった。