episode5
「青木」
シャワーを終えて着替えた薪は、朝食の支度をする青木の背中に呼び掛ける。
「はい」
「…………愛してる」
「…………へっ?」
エプロン姿の青木はコンロの火を止めて、心配そうな顔で振り返る。
「薪さんもしや……」
ずいっと近づいた大男は、年上の恋人を捕まえて、腰を屈めて覗き込みながら額に手を当てた。
「熱でもあるんですか?顔も赤いし、急におかしなこと言い出して……」
「いや、光がそう伝えてくれ、と手紙に……」
額に手を当てられたまま、言葉を詰まらせ目をそらす薪。しまった、僕としたことがすっかり冷静さを欠いている。全然こっそり言えてないじゃないか。
青木はキョトンとしてから、苦笑まじりのため息をつく。
「それは…………伝言だけですか?」
「…………」
「薪さん」
青木の両手に両肩を支えられ、薪は観念して正面の男を見上げた。
「違う。僕の気持ち……でもある」
「えっ…………じゃあ、もう一度ちゃんと聞かせてくださいよ」
優しく微笑んでいた青木の顔が真顔になり、声も熱く震えている。
その熱量に押されるように薪は呟いた。
「あおきを愛してる」
「っ、ありがとうございます。俺も愛してます」
よく言えましたね、とばかりに頭を撫でられる。
そんな仕草の反面、青木の顔が涙で崩れてる。
「くぅっ……」
嬉し泣きをこらえながら支度を続ける青木のところへ、絶妙のタイミングで舞が起きてきて、慣れた調子で駆け寄った。
「コーちゃん、どうしたの?またマキちゃんに叱られたの?大丈夫だよ。舞も一緒に謝ってあげるから……」
そのうちおバアちゃんも散歩から戻ってきてお仏壇に手を合わせ、皆に挨拶をしながら、にこやかに食卓に合流した。
温かい青木家の一日が今日も始まる。
ここでの暮らしはたしかに、光の辿った成長の道だったのだろう。
“安心しろ光。お前が青木との約束を守ったように、僕もお前の願いを叶えてやるから”
明るい朝の光が射し込む部屋の、賑やかな食卓につきながら、薪は心のなかで天にそっと語りかけた。
シャワーを終えて着替えた薪は、朝食の支度をする青木の背中に呼び掛ける。
「はい」
「…………愛してる」
「…………へっ?」
エプロン姿の青木はコンロの火を止めて、心配そうな顔で振り返る。
「薪さんもしや……」
ずいっと近づいた大男は、年上の恋人を捕まえて、腰を屈めて覗き込みながら額に手を当てた。
「熱でもあるんですか?顔も赤いし、急におかしなこと言い出して……」
「いや、光がそう伝えてくれ、と手紙に……」
額に手を当てられたまま、言葉を詰まらせ目をそらす薪。しまった、僕としたことがすっかり冷静さを欠いている。全然こっそり言えてないじゃないか。
青木はキョトンとしてから、苦笑まじりのため息をつく。
「それは…………伝言だけですか?」
「…………」
「薪さん」
青木の両手に両肩を支えられ、薪は観念して正面の男を見上げた。
「違う。僕の気持ち……でもある」
「えっ…………じゃあ、もう一度ちゃんと聞かせてくださいよ」
優しく微笑んでいた青木の顔が真顔になり、声も熱く震えている。
その熱量に押されるように薪は呟いた。
「あおきを愛してる」
「っ、ありがとうございます。俺も愛してます」
よく言えましたね、とばかりに頭を撫でられる。
そんな仕草の反面、青木の顔が涙で崩れてる。
「くぅっ……」
嬉し泣きをこらえながら支度を続ける青木のところへ、絶妙のタイミングで舞が起きてきて、慣れた調子で駆け寄った。
「コーちゃん、どうしたの?またマキちゃんに叱られたの?大丈夫だよ。舞も一緒に謝ってあげるから……」
そのうちおバアちゃんも散歩から戻ってきてお仏壇に手を合わせ、皆に挨拶をしながら、にこやかに食卓に合流した。
温かい青木家の一日が今日も始まる。
ここでの暮らしはたしかに、光の辿った成長の道だったのだろう。
“安心しろ光。お前が青木との約束を守ったように、僕もお前の願いを叶えてやるから”
明るい朝の光が射し込む部屋の、賑やかな食卓につきながら、薪は心のなかで天にそっと語りかけた。
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