episode4 R18
結局、光はそのまま須田家に迎え入れられることとなった。
病院を探して治療方針を決めるまでは、青木も平日や休日の時間を割いて、須田家の保護者に付き添った。 光が過ごし易く家族もケアしやすい家の中の環境作りも手伝った。青木家をそんな風に変えていこうと準備していたところだったのに、と目頭を熱くしながら―――
そして今日は八月最後の金曜日。
その日の午後から須田家に入り浸っていた青木は、光枝と輝子に引き留められ夕食だけ有り難く頂き、入浴や宿泊の誘いをなんとか振り切って、やっとのことで薪のマンションに辿り着いていた。
明日は薪を連れて福岡に帰り、舞とのこの夏の約束を果たす。
夏休みの間じゅう遠く福岡から東京の光たちを応援し続けていた舞を、薪と二人で花火に連れて行くのだ。
「何だ、また彼女からのLINEか?」
「はあ、その言い方何とかなりませんかね」
「フン、毎日のように連絡を寄越して、お前のことをさぞかし気に入っている様子だな」
「いえいえ彼女が夢中なのは光くんですよ。わが子のように可愛がってて、何かと心配だから相談が来るだけです」
須田輝子はたしか独身で、姉とは五歳差のつまり四十そこそこだ。年齢的には射程圏内か。
姉が起こした事件のせいで勤務先を離れざるを得ず夜の仕事をしているらしいが、光と似た美貌を持ち男を操る術に長けた女性となれば、青木が絆されてもおかしくはない―――
「薪さん。今何かヘンなこと考えてますよね?」
「別に。それより近寄るな、暑苦しい」
風呂上がりのパジャマ姿で抱きついてくる大男を押し退けようともがく薪。
「どけ、シャワーを浴びてくる」
「すみません、もう少しだけ……」
のし掛かる大きな体の重みと深い息遣い。
こないだ寝袋で爆睡したソファーの上で、今夜の青木は薪を閉じ込めて離さない。
「だって貴方少し酔ってらっしゃるでしょう?入浴は休憩してからの方がいいですよ」
“なんて、俺があなたを離したくないだけですけどね”
ぽつりと付け足した青木の口ぶりに、突き飛ばそうと顎に宛がった薪の手がふと思いとどまる。そしてその手は顎から頬を撫でていき、優しい口づけを誘う。
今日は薪も官公庁のお偉方ばかりの仰々しい会議と飲み会をやっつけて、辟易しながら帰宅したのだ。
「……まきさん…………あいしてます」
「……ん……チュ……」
大きな手が薪の後頭部を支え、熱い舌が割り込む。
何が“休憩”だ。と呆れ倒しながら部屋着を脱がされていく。
“青木、僕も愛してる”
死ぬほど思ってるくせに一度も口にしたことのない言葉を脳裏で噛みしめながら、薪は首筋から肩先を伝い降りる唇に胸元を捏ねられ、甘い息を零して仰け反った。下着を剥かれた色白の性器も蜜を滴らせ、ゆるく勃ちあがっている。
「ベッド…………いきますか?」
「……いや、ここでいい……」
頑なな言葉を吐き終わる前に、股間に滑り降りてきた青木の口づけが、張り詰めた薪の屹立を言い様のない快楽の渦に拐う。
「……あ……おき……」
愛撫につられて薪の身体がしなり、震える片脚が青木の首筋に巻きついて引き寄せた。
青木の口唇と手指が、薪の性器とその滴りで湿る後ろの奥深くを貪った。
革製のソファーだ。飛沫は拭えばいい。
青木から漂う弱った獣の匂いを嗅ぎとった薪は、ただ甘やかしたい本能に任せて深みへと導いていく。
「……わすれろ」
熔けそうな結合のさなか、薪は夢中で青木の耳元に囁きかける。
「ぼく以外すべて……」
青木を救いたい一心だった。
今は自分に溺れさせることで、大きな不安や哀しみのなかを泳ぎ続けることをひとときでも止めさせようとしていた。
病院を探して治療方針を決めるまでは、青木も平日や休日の時間を割いて、須田家の保護者に付き添った。 光が過ごし易く家族もケアしやすい家の中の環境作りも手伝った。青木家をそんな風に変えていこうと準備していたところだったのに、と目頭を熱くしながら―――
そして今日は八月最後の金曜日。
その日の午後から須田家に入り浸っていた青木は、光枝と輝子に引き留められ夕食だけ有り難く頂き、入浴や宿泊の誘いをなんとか振り切って、やっとのことで薪のマンションに辿り着いていた。
明日は薪を連れて福岡に帰り、舞とのこの夏の約束を果たす。
夏休みの間じゅう遠く福岡から東京の光たちを応援し続けていた舞を、薪と二人で花火に連れて行くのだ。
「何だ、また彼女からのLINEか?」
「はあ、その言い方何とかなりませんかね」
「フン、毎日のように連絡を寄越して、お前のことをさぞかし気に入っている様子だな」
「いえいえ彼女が夢中なのは光くんですよ。わが子のように可愛がってて、何かと心配だから相談が来るだけです」
須田輝子はたしか独身で、姉とは五歳差のつまり四十そこそこだ。年齢的には射程圏内か。
姉が起こした事件のせいで勤務先を離れざるを得ず夜の仕事をしているらしいが、光と似た美貌を持ち男を操る術に長けた女性となれば、青木が絆されてもおかしくはない―――
「薪さん。今何かヘンなこと考えてますよね?」
「別に。それより近寄るな、暑苦しい」
風呂上がりのパジャマ姿で抱きついてくる大男を押し退けようともがく薪。
「どけ、シャワーを浴びてくる」
「すみません、もう少しだけ……」
のし掛かる大きな体の重みと深い息遣い。
こないだ寝袋で爆睡したソファーの上で、今夜の青木は薪を閉じ込めて離さない。
「だって貴方少し酔ってらっしゃるでしょう?入浴は休憩してからの方がいいですよ」
“なんて、俺があなたを離したくないだけですけどね”
ぽつりと付け足した青木の口ぶりに、突き飛ばそうと顎に宛がった薪の手がふと思いとどまる。そしてその手は顎から頬を撫でていき、優しい口づけを誘う。
今日は薪も官公庁のお偉方ばかりの仰々しい会議と飲み会をやっつけて、辟易しながら帰宅したのだ。
「……まきさん…………あいしてます」
「……ん……チュ……」
大きな手が薪の後頭部を支え、熱い舌が割り込む。
何が“休憩”だ。と呆れ倒しながら部屋着を脱がされていく。
“青木、僕も愛してる”
死ぬほど思ってるくせに一度も口にしたことのない言葉を脳裏で噛みしめながら、薪は首筋から肩先を伝い降りる唇に胸元を捏ねられ、甘い息を零して仰け反った。下着を剥かれた色白の性器も蜜を滴らせ、ゆるく勃ちあがっている。
「ベッド…………いきますか?」
「……いや、ここでいい……」
頑なな言葉を吐き終わる前に、股間に滑り降りてきた青木の口づけが、張り詰めた薪の屹立を言い様のない快楽の渦に拐う。
「……あ……おき……」
愛撫につられて薪の身体がしなり、震える片脚が青木の首筋に巻きついて引き寄せた。
青木の口唇と手指が、薪の性器とその滴りで湿る後ろの奥深くを貪った。
革製のソファーだ。飛沫は拭えばいい。
青木から漂う弱った獣の匂いを嗅ぎとった薪は、ただ甘やかしたい本能に任せて深みへと導いていく。
「……わすれろ」
熔けそうな結合のさなか、薪は夢中で青木の耳元に囁きかける。
「ぼく以外すべて……」
青木を救いたい一心だった。
今は自分に溺れさせることで、大きな不安や哀しみのなかを泳ぎ続けることをひとときでも止めさせようとしていた。