episode4 R18
青木がシャワーを終え、入れ替わりに光がバスルームに消える。
束の間の二人きりの時間だ。
でも急にモードを変えられないし、変えたら戻すのが難しいから、何もできなくて結局もどかしい。
「 須田家はたしか、西東京の旧家だろ」
「ええ、よくご存じで。当主の洋一郎は逝去して跡継ぎもなく、今は妻の光枝と次女の輝子が暮らしてまして。あ、光くんにとって二人は祖母と叔母にあたります」
一週間前、青木が突然須田家を訪ねた時は戸惑った様子の二人だったが、よくよく聞けば光の存在や病気のことも生前の須田洋子を通じ知っていて、彼女の逝去時には光を引き取る話も出ていたようだ。
今回再開した縁組みの話がこんなにスムーズに進んだのは、里親である青木の身元や人となりが信用に足るものだったことも大きい。
「でもやっぱ決め手はコレですけどね」
「……!?」
青木が見せた、祖母の光枝と叔母の輝子が映る写メに、薪は目を丸くする。
「ほら、須田のおばあちゃんとおばさん、光くんの顔写真を加工したみたいにそっくりですよね?」
「ああ、驚きだな」
「ちなみに須田洋子は当主の顔とそっくりでした。どうりであの親子同士は似てないはずですよね」
「…………」
ふと、青木のスマホに顔を寄せる薪の視界が翳り、無言になった青木の唇が薪の唇を奪う。
一瞬だけの、熱の籠ったキスだ。
唇が離れると、何事もなかったかのように、また会話が続いていく。
「で、このまま預けて来れそうなのか?」
「ええ、おそらく。長距離の移動が光くんの体の負担になるのを先方も気にしてますので」
控えめな言い回しだが、青木の持ち前の突破力は上司である薪の折り紙つきだ。
多分こいつは一発で決めてくる。
そしてついでに余計なものを背負いこみそうな予感もする。薪のそのテの直感はだいたい当たるのだ。
「なあ、青木」
青木?ともう一度呼ぶが、返事はない。
つまりさっきのはおやすみのキスのつもりだったのだろうか。
持ってきた寝袋をソファーで広げていたかと思いきや、そこに青木が収まってもう爆睡していた。
わざわざ寝袋なんか持参して、妙なところで用意周到なやつだ。
無防備な寝顔を覗きこんだ薪はつい、また唇を重ねそうになる。
なんとか思いとどまって、そそくさとソファーから離れた。
おやすみのキスの後のさらなる接触は、互いに止まらなくなるのがお約束だから。
スイッチは入れない。賢明な大人の選択だった。
束の間の二人きりの時間だ。
でも急にモードを変えられないし、変えたら戻すのが難しいから、何もできなくて結局もどかしい。
「 須田家はたしか、西東京の旧家だろ」
「ええ、よくご存じで。当主の洋一郎は逝去して跡継ぎもなく、今は妻の光枝と次女の輝子が暮らしてまして。あ、光くんにとって二人は祖母と叔母にあたります」
一週間前、青木が突然須田家を訪ねた時は戸惑った様子の二人だったが、よくよく聞けば光の存在や病気のことも生前の須田洋子を通じ知っていて、彼女の逝去時には光を引き取る話も出ていたようだ。
今回再開した縁組みの話がこんなにスムーズに進んだのは、里親である青木の身元や人となりが信用に足るものだったことも大きい。
「でもやっぱ決め手はコレですけどね」
「……!?」
青木が見せた、祖母の光枝と叔母の輝子が映る写メに、薪は目を丸くする。
「ほら、須田のおばあちゃんとおばさん、光くんの顔写真を加工したみたいにそっくりですよね?」
「ああ、驚きだな」
「ちなみに須田洋子は当主の顔とそっくりでした。どうりであの親子同士は似てないはずですよね」
「…………」
ふと、青木のスマホに顔を寄せる薪の視界が翳り、無言になった青木の唇が薪の唇を奪う。
一瞬だけの、熱の籠ったキスだ。
唇が離れると、何事もなかったかのように、また会話が続いていく。
「で、このまま預けて来れそうなのか?」
「ええ、おそらく。長距離の移動が光くんの体の負担になるのを先方も気にしてますので」
控えめな言い回しだが、青木の持ち前の突破力は上司である薪の折り紙つきだ。
多分こいつは一発で決めてくる。
そしてついでに余計なものを背負いこみそうな予感もする。薪のそのテの直感はだいたい当たるのだ。
「なあ、青木」
青木?ともう一度呼ぶが、返事はない。
つまりさっきのはおやすみのキスのつもりだったのだろうか。
持ってきた寝袋をソファーで広げていたかと思いきや、そこに青木が収まってもう爆睡していた。
わざわざ寝袋なんか持参して、妙なところで用意周到なやつだ。
無防備な寝顔を覗きこんだ薪はつい、また唇を重ねそうになる。
なんとか思いとどまって、そそくさとソファーから離れた。
おやすみのキスの後のさらなる接触は、互いに止まらなくなるのがお約束だから。
スイッチは入れない。賢明な大人の選択だった。