episode4 R18

なぜこんなにもアイツに振り回される?
近頃の自分は脇が甘いのだろうか。

空港で後ろ髪引かれながらあの親子に見送られてから、ひと月半が経つ。
その後の日々は、いつも以上に嵐のように過ぎた。大事件の勃発じゃないだけマシだが、プライベートとはいえ薪の心身への影響は小さくなかった。
その発端は、福岡から戻った週明けの朝一番に飛び込んだ、青木からの急な申し出だった。

“光くんの主治医を東京で探したいんです”

青木が光の治療を諦めていないことは知っていた。
学校へ普通に通うのは難しそうだけれど、卒業するまで福岡市の北町小学校に光の籍を置き、オンラインでも授業を受け続けられるよう取り計るつもりだとも聞いていた。
そこになぜ急に “東京”がでてくるのか。

その理由を聞いて、さらに驚かされた。

“須田家に帰りたい”と光自身が希望したというのだ。

それを叶えるために、青木は須田家に近い都内の病院を、本気で探していたのだ。
人は大抵自分の力の及ぶ限界をわきまえているものだが、このバカにはリミッターがない。
同時にそのバカさ加減に呆れながらも耐性ができつつある自分を、薪は苦々しく振り返る。

舞や母という守るべき家族がいるのだから
無茶も大概にしろ、とどうして云えなかったのか?
それどころか、支援の手まで差しのべるなんて―――


♪♪~

その晩。
インターホンの音につられてカメラを覗くと、姿勢を正した青木と目が合ってトクンと鼓動が跳ねる。
後ろにはうつむく光の姿も見えていた。

弾む胸と弛む口角を必死で隠すための“苦い顔”を作って、薪はロックを解除した。
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