2069 father's day
薪と自分が同年代に見えるか?というと、答えは否だろう。
そして自分たち二人が年の差カップルだと聞いた人間がいれば、百人中百人が自分を年上だと見るだろう。
でもさすがに親子とまでは……う~ん……
何だかモヤモヤしている6月三週目の平日。
週末の休日出勤予定をスケジューラに入れたところ、所長に渋られ理由を追及された上 “そんなことくらい前日までに徹夜してでも終わらせろ” と凄みをきかせて揉み消された。
「ちょ、っと待ってくださいよ。逆にこの日出勤NGの理由って、何かあるんでしたっけ?」
webカメラに映る薪の顔が訝しげになる。
「ん?何だ。舞から聞いてないのか?」
「え?」
黙り込んだ青木は二重の衝撃を受け止めていた。
思い切り睨んでくる薪の上目遣いの愛らしさと、薪と舞の二人の秘密を自分がまだ知らされていない事実。
今週末、一体何があるというんだ?
「ねえコーちゃん、今度の土曜日マキちゃん帰ってくるんだよね?」
「え?ああ、そうみたいだね。そういや舞、薪さんと何か約束してるんだっけ?」
さあ、さっそく来たぞ。仕事を持って帰宅した晩御飯の食卓で、舞が例の話の引き金を引いてくる。
「えー、それは舞との約束じゃないよ」
「ふーん。じゃあ、薪さんは誰と?」
舞は目を丸くして、コーちゃんを見返した。
「あれ?マキちゃんから聞いてないの?コーちゃんとマキちゃんの約束だよ。だから今度のお休みはマキちゃんもコーちゃんも予定も入れないで、って頼んでおいたんだよ」
「頼む、って……」
青木は箸を進めながら、呆れと安堵半々の息をつく。薪の約束の相手が自分だった安堵と、そのことを一切口にしてくれなかった薪に対する呆れだ。
「舞は何で俺の休みのことを俺に言わずに、薪さんに頼んだりしたの?」
「だって、マキちゃんコーちゃんのジョーシでしょ?マキちゃんにお願いした方が早いじゃん」
なるほど、さすが舞だ。的を射ていて反論の余地がない。
「で……何の用事なんだっけ?」
「デートだよ」
「デっ…!」
おませな言葉を容赦なく浴びせる舞と、たじたじの青木、それをニコニコ見守るおバアちゃんの団欒の図。始めは何だか荒れ模様だったが、コーンたっぷりのコロッケを美味しそうに頬張ってから、舞がしっかり締めくくる。
「だって日曜は父の日でしょ?コーちゃんとマキちゃんは舞のお父さんみたいなものだから、お祝いのプレゼントなの。今度の土曜日と日曜日、せっかくお仕事お休みなんだから、二人でゆっくりお出かけしてきたらいいよ。おバアちゃんもいいって言ってるよ」
「ま、舞……」
姉に似て優しい、そしてしっかり者の舞。
なんていい子なんだ。
青木は胸を熱くする。
今日は水曜。必要な仕事は今夜含め、あと三日で必ず終わらせる。
そしてデートの中身もちゃんと練ろう。
父の日の恋人とのデートが、傍目からでも父子デートに見えたらシャレにならない。その辺もちゃんと押さえ、万全の体勢で週末に臨もう。
そのためなら徹夜だって厭わない。
青木の心は舞への感謝と、仕事への熱意、そして何より薪への恋情で燃え盛っていた。
そして自分たち二人が年の差カップルだと聞いた人間がいれば、百人中百人が自分を年上だと見るだろう。
でもさすがに親子とまでは……う~ん……
何だかモヤモヤしている6月三週目の平日。
週末の休日出勤予定をスケジューラに入れたところ、所長に渋られ理由を追及された上 “そんなことくらい前日までに徹夜してでも終わらせろ” と凄みをきかせて揉み消された。
「ちょ、っと待ってくださいよ。逆にこの日出勤NGの理由って、何かあるんでしたっけ?」
webカメラに映る薪の顔が訝しげになる。
「ん?何だ。舞から聞いてないのか?」
「え?」
黙り込んだ青木は二重の衝撃を受け止めていた。
思い切り睨んでくる薪の上目遣いの愛らしさと、薪と舞の二人の秘密を自分がまだ知らされていない事実。
今週末、一体何があるというんだ?
「ねえコーちゃん、今度の土曜日マキちゃん帰ってくるんだよね?」
「え?ああ、そうみたいだね。そういや舞、薪さんと何か約束してるんだっけ?」
さあ、さっそく来たぞ。仕事を持って帰宅した晩御飯の食卓で、舞が例の話の引き金を引いてくる。
「えー、それは舞との約束じゃないよ」
「ふーん。じゃあ、薪さんは誰と?」
舞は目を丸くして、コーちゃんを見返した。
「あれ?マキちゃんから聞いてないの?コーちゃんとマキちゃんの約束だよ。だから今度のお休みはマキちゃんもコーちゃんも予定も入れないで、って頼んでおいたんだよ」
「頼む、って……」
青木は箸を進めながら、呆れと安堵半々の息をつく。薪の約束の相手が自分だった安堵と、そのことを一切口にしてくれなかった薪に対する呆れだ。
「舞は何で俺の休みのことを俺に言わずに、薪さんに頼んだりしたの?」
「だって、マキちゃんコーちゃんのジョーシでしょ?マキちゃんにお願いした方が早いじゃん」
なるほど、さすが舞だ。的を射ていて反論の余地がない。
「で……何の用事なんだっけ?」
「デートだよ」
「デっ…!」
おませな言葉を容赦なく浴びせる舞と、たじたじの青木、それをニコニコ見守るおバアちゃんの団欒の図。始めは何だか荒れ模様だったが、コーンたっぷりのコロッケを美味しそうに頬張ってから、舞がしっかり締めくくる。
「だって日曜は父の日でしょ?コーちゃんとマキちゃんは舞のお父さんみたいなものだから、お祝いのプレゼントなの。今度の土曜日と日曜日、せっかくお仕事お休みなんだから、二人でゆっくりお出かけしてきたらいいよ。おバアちゃんもいいって言ってるよ」
「ま、舞……」
姉に似て優しい、そしてしっかり者の舞。
なんていい子なんだ。
青木は胸を熱くする。
今日は水曜。必要な仕事は今夜含め、あと三日で必ず終わらせる。
そしてデートの中身もちゃんと練ろう。
父の日の恋人とのデートが、傍目からでも父子デートに見えたらシャレにならない。その辺もちゃんと押さえ、万全の体勢で週末に臨もう。
そのためなら徹夜だって厭わない。
青木の心は舞への感謝と、仕事への熱意、そして何より薪への恋情で燃え盛っていた。