はじめての夜~福岡泊

「…………あれ?」

メガネ無しのぼやけた視界が、ベッドの上で膝を抱えてうつむく薪の姿を捉える。

「お休みになってなかったんですか?」

「うん……ローブだと寝にくくて」

「……だったら、いつでも脱がせて差しあげますけど………」

冗談めかして唇を重ねると、薪も素直に受け入れてくれる。
酔った薪を介抱するふりをして口づけをしたことはあって、それからも何度か盗んだ。
でもただキスだけを純粋に重ね、その続きを意識したのは初めてだ。
触れた瞬間の、全身全霊を震わせる恍惚感の再来に、もう認めざるを得なかった。
あれからもう自分は薪しか慾しくなくて、酷く餓えているのだと。

それでも踏み込めなかったのは、薪が大切すぎる憧れの人だから。
今だってせめてこの人が眠りについていたなら、綺麗な寝顔を一晩中見つめ、何もせず耐え抜こうと決めていたのに………

「………ん………ぁふ………」

求めあうように絡む舌が甘く溶け合い、温度が馴染むにつれ、心とカラダが切なく沸き立つ。
“欲しい”
この美しい肌を渇望する情欲に身が焦がれる崖っぷちで、とうとう青木は叫んだ。

「………っ………すみませんっ!もう俺…………あなたを抱きます!」

勢い任せに華奢な身体を抱きしめてベッドに倒れ、深いキスに酔いしれる。それだけでも極上の交接だが、互いにもっと深まりたい二人にはまだ物足りない。

「まて………僕が…………する………」

「……は……?」

唇を拭いながら青木の身体の上に乗った薪が、あろうことに硬く大きくなってる股間にそっと手を添えた。

「お前は………何もしなくていい。僕が気持ちよくするから………」

「っ…………ちょっと、薪さん………待ってください」

思い詰めたように昂るソコへと顔を埋めようとする薪の両肩を、青木は慌てて掴んで引き剥がす。

「イかせることが、セックスの目的じゃないでしょう?」

「……………?」

戸惑い顔で見上げてくる薪が可愛らしすぎて、上体を起こして向き直る青木は、その身体を腕の中に閉じ込めるように必死で抱いた。

「気負わないでください。俺は………薪さんを愛したいだけなんです」

「でも………お前……」

「あなたに触れさせてください。俺本当に、それだけでいいから……」

腕の中の薪を閉じ込めたまま、さらさらの細い栗毛を唇で掻き分けて、青木は白い額に口づける。
それだけでいい?触れるって、どこまで?

「やめ……ろっ、くすぐった……い……」

「だめです。気持ちよすぎて止めれない」

こめかみに、頬に、唇に。顎を撫でて首筋を伝い降りて………どうしてこの人はこんなにすべてが可愛らしいんだろう、見惚れる青木の欲情は加速するばかりだ。

「………ばか………よせ………って……」

上気した肌を辿って、はだけたローブの隙間から胸元の突起を口内に含む。ゆっくりと舌で刺激しながら繊細な反応を味わうと、いつもの凛とした薪の姿からは想像がつかないような、か弱く甘い声が漏れた。

「…………あ………おき………っ……」

裸にしてしまいたいけど、できない。

一糸纏わぬ薪の姿なんて仰いでしまったら、鼻血を吹き出すか、即イってしまいそうだから。

そうでなくても、色々もうヤバいのに。
男の抱き方なんて、MRI捜査でしか見たことがない。
薪の背を撫で下ろす青木の手がローブの後ろを捲り、引き締まった脚の付け根に指が這う。
見よう見まね、いやもう、本能の赴くままだった。

「…………っ………!」

前から伝わる透明な蜜が後ろの口を潤してるのを指先でたしかめながら押し込むと、薪の繊細な身体がびくりと震え、熱いナカへときつく吸い込まれていく。
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