はじめてのキス~M.D.I.P視察
「薪さん、降ろしますよ」
静かな寝息をたてている薪を、自分のベッドに横たえながら、蹴られないよう気をつけて靴を脱がす。
「………あつい……」
「あ、ハイすみません。すぐ離れますから……」
「ちがう。あおきがじゃない」
「……え………」
「僕が………あつい」
「じゃあ着替えを…」
ベッドを離れようとした青木は、ネクタイを強く引っ張られてつんのめる。
そこへ半身を起こした薪の唇が触れて―――
「………え……」
ネクタイを引き寄せる強引さとはうらはらの、ずいぶんと初心で可愛らしいキス。
柔らかくて、瑞々しくて、吐息は震えてて……初恋でもこんな気持ちにはならなかった。
触れただけのキスに心臓をキュンと掴まれたまま、青木はしばらく動けなかった。
「そうだ、暑いなら着替えを……」
あのキスから数分。芳しい花のような薪の唇の余韻に茫然と囚われていた青木が、我に返ってベッドから離れた。
薪は寝たふりをして目を閉じたまま、青木が戻ってきたのを気配で察知する。
「良かった~サイズの小さいパジャマも引き出しにありましたよ。失礼します」
こいつ、バカなのか?
恭しくシャツのボタンをはずしていく、青木の手つきがもどかしくて苛ついた薪は内心舌打ちする。
この善良な部下は、“脱がせてもいい”というサインも、酔った弾みを装ったキスも、ことごとくスルーして、介抱に専念する気らしい。
「………はぁあ、いつ見ても美しいお体ですねぇ………服をお着せするのが勿体ないくらい……」
だったらいくらでも見ていい。触れたっていいし……それかひと思いにお前のモノにすればいいだろ!
そんな心の声も届かずに、青木は美しい上司の身体を大切に抱き起こし、上だけの長いパジャマをやさしく纏わせた。
「………のどかわいた………」
「ハイッ、今お水を………」
青木が離れてミニバーを開閉する音がきこえる。
「……薪さん、持ってきましたよ。薪さん……」
ふてくされた薪は、揺り起こされても寝たフリを続けている。
すると、不意に青木の顔(の気配)が近づいてきて………
「………ん………むっ…………コクン…………」
青木の唇に唇を塞がれて、舌でこじあけた歯列の隙間から口内に、冷感の和らいだ水が流れこんできて……
まるで媚薬を仕込まれたみたいに、薪の身体が内から甘く痺れた。
「…………ケフッ…………なにを………」
「もういいですか?それともまだ要ります?」
思わず目をあけて睨んでも、悪怯れる様子もなく青木が訊いてくる。
「………おまえ、こんなことして………」
「さっき薪さんも俺にしたじゃないですか。俺とこうするのがお嫌でないとわかれば、喜んでつけ込んじゃいますよ?」
「っ…………」
こいつ、とんでもないやつだ。鈍いくせして、図々しい……
「で?おかわりどうします?」
頬を火照らせて上目遣いで睨む薪に、青木は澄まして訊いた。
「………………ほしい……」
薪は涙目で青木を睨んだまま、宥めるような口づけの水分補給を受け、甘やかされながら、優しく寝かしつけられていった。
さっきまでの疚しい苛つきも、いつのまにか吸い取られてしまって………
ゆりかごみたいな腕に抱かれ、大きな手で背中を撫でられて。
安心できる温もりと匂いに包まれて、薪は幼子みたいに朝までぐっすり眠ったのだった。
静かな寝息をたてている薪を、自分のベッドに横たえながら、蹴られないよう気をつけて靴を脱がす。
「………あつい……」
「あ、ハイすみません。すぐ離れますから……」
「ちがう。あおきがじゃない」
「……え………」
「僕が………あつい」
「じゃあ着替えを…」
ベッドを離れようとした青木は、ネクタイを強く引っ張られてつんのめる。
そこへ半身を起こした薪の唇が触れて―――
「………え……」
ネクタイを引き寄せる強引さとはうらはらの、ずいぶんと初心で可愛らしいキス。
柔らかくて、瑞々しくて、吐息は震えてて……初恋でもこんな気持ちにはならなかった。
触れただけのキスに心臓をキュンと掴まれたまま、青木はしばらく動けなかった。
「そうだ、暑いなら着替えを……」
あのキスから数分。芳しい花のような薪の唇の余韻に茫然と囚われていた青木が、我に返ってベッドから離れた。
薪は寝たふりをして目を閉じたまま、青木が戻ってきたのを気配で察知する。
「良かった~サイズの小さいパジャマも引き出しにありましたよ。失礼します」
こいつ、バカなのか?
恭しくシャツのボタンをはずしていく、青木の手つきがもどかしくて苛ついた薪は内心舌打ちする。
この善良な部下は、“脱がせてもいい”というサインも、酔った弾みを装ったキスも、ことごとくスルーして、介抱に専念する気らしい。
「………はぁあ、いつ見ても美しいお体ですねぇ………服をお着せするのが勿体ないくらい……」
だったらいくらでも見ていい。触れたっていいし……それかひと思いにお前のモノにすればいいだろ!
そんな心の声も届かずに、青木は美しい上司の身体を大切に抱き起こし、上だけの長いパジャマをやさしく纏わせた。
「………のどかわいた………」
「ハイッ、今お水を………」
青木が離れてミニバーを開閉する音がきこえる。
「……薪さん、持ってきましたよ。薪さん……」
ふてくされた薪は、揺り起こされても寝たフリを続けている。
すると、不意に青木の顔(の気配)が近づいてきて………
「………ん………むっ…………コクン…………」
青木の唇に唇を塞がれて、舌でこじあけた歯列の隙間から口内に、冷感の和らいだ水が流れこんできて……
まるで媚薬を仕込まれたみたいに、薪の身体が内から甘く痺れた。
「…………ケフッ…………なにを………」
「もういいですか?それともまだ要ります?」
思わず目をあけて睨んでも、悪怯れる様子もなく青木が訊いてくる。
「………おまえ、こんなことして………」
「さっき薪さんも俺にしたじゃないですか。俺とこうするのがお嫌でないとわかれば、喜んでつけ込んじゃいますよ?」
「っ…………」
こいつ、とんでもないやつだ。鈍いくせして、図々しい……
「で?おかわりどうします?」
頬を火照らせて上目遣いで睨む薪に、青木は澄まして訊いた。
「………………ほしい……」
薪は涙目で青木を睨んだまま、宥めるような口づけの水分補給を受け、甘やかされながら、優しく寝かしつけられていった。
さっきまでの疚しい苛つきも、いつのまにか吸い取られてしまって………
ゆりかごみたいな腕に抱かれ、大きな手で背中を撫でられて。
安心できる温もりと匂いに包まれて、薪は幼子みたいに朝までぐっすり眠ったのだった。