斎藤に促され、張は屋敷で見てきたことを報告した。



それは大きな鯉が二匹死んでいた事、昨日は屋敷の主人は温泉へ行って不在、使用人はそんな時は半ば強制的に休みを取らされている事、そして奥の部屋の襖が新しく替えられていたがそのことに使用人は気が付いていないこと。



つまり、鯉が死んだ事以外は使用人達は昨日何が起こったかまったく気が付いていないという事。



すでに昼はとうに過ぎ、よもすれば日も傾き始める時間になっている。



そしてその屋敷で人が亡くなったとか、怪我人が出たという知らせはやはり来ていなかった。








斎藤は張の話を聞いて暫く考え込んでいたが、



「何故隠蔽する必要がある・・・。」



と呟いた。



張は斎藤の呟きに刀の手入れをしながら、



「せやな、あそこで暴行や殺しがあったっちゅう旦那の話を聞いとらんかったらわいもあの襖には気付かんかったかもしれんさかい。まるで昨日屋敷で何かあったんを屋敷のもんに気付かれんようにしとるちゅうことやろ？わざわざ同じ襖を入れてまでそないなことするっちゅうのは。」



と言った。