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139.一文字の刀傷 (斎藤・夢主)
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ザバーッ。
二人分の容積にお風呂のお湯が溢れた。
熱湯風呂だったらよかったのにと斎藤がぼやくほど、お湯は武尊好みの温度まで下がっていた。
斎藤は手ぬぐいで武尊の耳や顔をやさしく拭ってやっていた。
流石に武尊も自分を取り巻くお湯の質感・浮遊感と、濡れて少し肌寒い状態からそれに比べてはるかに高い水温に意識を取り戻した。
斎藤が武尊の顔を見ながら目のまわりを拭いていた時、武尊はぼんやりと瞼を開いた。
斎藤は手を止めて、
「やっと起きたか。」
と、武尊に声をかけた。
武尊の眼に映ったのは暗闇に浮かぶ斎藤の顔。
「・・・斎・・藤・・・さん・・?」
武尊はすぐさまには自分、そしてこの環境が理解できず、二・三秒斎藤の顔を見つめた。
だが【気】力放出後の全身の倦怠感は半端ではなく、そしてまるで羊水に包まれた胎児のような心地の良い斎藤の腕の中で再び眠りの世界へと落ちて行った。
瞼を閉じていく武尊に斎藤は、
「武尊!」
と呼ぶも、帰って来たのはやはり『スー』という寝息だけであった。
斎藤はフゥと小さくため息をついて仕方がないなと小さく笑った。
斎藤は武尊の顔を拭き終わると武尊の首が落ちないように湯船の中で自分に対面させるように抱き直した。
やはり素肌はいい、と己に触れる肌質を斎藤は味わっていた。
逆に武尊が起きていたら恥ずかしがって最初からこんなに密着してその肌質を味わえないかもな、とも斎藤は思うのであった。
(武尊・・・。)
この腕に抱かれる小さな身体。
「今日は本当に疲れただろう。今日の明日で申し訳ないが、明日は時尾を頼む。だから今夜は抱かないが・・・・。」
と言って、斎藤は武尊を愛しげに目を細めて見た。
(愛してる・・・。)
と、斎藤は武尊を抱く手にぐっと力を入れた。
幕末の時は追う者と追われる者の関係。
それぞれの成すべき道は違い過ぎて共に生きることなど考えも出来なかった過去。
そして奇跡の再会。
その意味は何だったのかと斎藤は思う。
再び別れる日はもう目前に。
せめてこの身が二つあればと、斎藤は切に思った。
斎藤は武尊を貫いた牙突の傷痕を指先で確かめるよう触れ、何度もなぞった。
先程斎藤が武尊の身体を洗いながら思ったこと。
牙突とは刃を地面に水平な状態で相手を突く技。
であるが故に自分が武尊につけたその傷痕が自分の名の【一】に見えた。
(たとえ身体は共になくとも心は共に在り続ける・・・俺の名と共に生きろ、武尊。)
そしてもう一度愛していると武尊に告げると、斎藤は名に深い口付けをしたのであった。
2014. 3.21
二人分の容積にお風呂のお湯が溢れた。
熱湯風呂だったらよかったのにと斎藤がぼやくほど、お湯は武尊好みの温度まで下がっていた。
斎藤は手ぬぐいで武尊の耳や顔をやさしく拭ってやっていた。
流石に武尊も自分を取り巻くお湯の質感・浮遊感と、濡れて少し肌寒い状態からそれに比べてはるかに高い水温に意識を取り戻した。
斎藤が武尊の顔を見ながら目のまわりを拭いていた時、武尊はぼんやりと瞼を開いた。
斎藤は手を止めて、
「やっと起きたか。」
と、武尊に声をかけた。
武尊の眼に映ったのは暗闇に浮かぶ斎藤の顔。
「・・・斎・・藤・・・さん・・?」
武尊はすぐさまには自分、そしてこの環境が理解できず、二・三秒斎藤の顔を見つめた。
だが【気】力放出後の全身の倦怠感は半端ではなく、そしてまるで羊水に包まれた胎児のような心地の良い斎藤の腕の中で再び眠りの世界へと落ちて行った。
瞼を閉じていく武尊に斎藤は、
「武尊!」
と呼ぶも、帰って来たのはやはり『スー』という寝息だけであった。
斎藤はフゥと小さくため息をついて仕方がないなと小さく笑った。
斎藤は武尊の顔を拭き終わると武尊の首が落ちないように湯船の中で自分に対面させるように抱き直した。
やはり素肌はいい、と己に触れる肌質を斎藤は味わっていた。
逆に武尊が起きていたら恥ずかしがって最初からこんなに密着してその肌質を味わえないかもな、とも斎藤は思うのであった。
(武尊・・・。)
この腕に抱かれる小さな身体。
「今日は本当に疲れただろう。今日の明日で申し訳ないが、明日は時尾を頼む。だから今夜は抱かないが・・・・。」
と言って、斎藤は武尊を愛しげに目を細めて見た。
(愛してる・・・。)
と、斎藤は武尊を抱く手にぐっと力を入れた。
幕末の時は追う者と追われる者の関係。
それぞれの成すべき道は違い過ぎて共に生きることなど考えも出来なかった過去。
そして奇跡の再会。
その意味は何だったのかと斎藤は思う。
再び別れる日はもう目前に。
せめてこの身が二つあればと、斎藤は切に思った。
斎藤は武尊を貫いた牙突の傷痕を指先で確かめるよう触れ、何度もなぞった。
先程斎藤が武尊の身体を洗いながら思ったこと。
牙突とは刃を地面に水平な状態で相手を突く技。
であるが故に自分が武尊につけたその傷痕が自分の名の【一】に見えた。
(たとえ身体は共になくとも心は共に在り続ける・・・俺の名と共に生きろ、武尊。)
そしてもう一度愛していると武尊に告げると、斎藤は名に深い口付けをしたのであった。
2014. 3.21