斎藤が風呂から戻って来た時、武尊は壁際に転がっていた。



それは座ったまま寝てしまってそのまま崩れ落ちたという恰好だった。



武尊は斎藤が帰宅して張り詰めていた緊張がようやく解け安心したと同時に、【気】の放出の反動が一気に武尊を襲ったのであった。



「おい。」



と、呼びながら斎藤がしゃがんで武尊の頬を突いても、全く起きる気配さえない。



部屋の行燈の灯りで斎藤は時尾の容体を確認すると、寝ている時尾に言った。



「武尊の事は認めてるんだろ、万が一目が覚めてもこれくらいの事で妬くなよ。」



と、斎藤は部屋の行燈をふっ、と吹き消すと武尊を抱きかかえた。



外は今日も星が降る様に明るい。



秋の気配も感じられる今日この頃、夜は寒いぐらいに冷える日も出てきた。



「ったく、あんな所で寝てると風邪をひくぞ。」



と、抱いている武尊に小言を言いながら武尊を武尊の部屋へ運んだ。



斎藤はいったん武尊を畳の上に寝かせると布団を敷いた。



そして再び武尊に、



「起きろ武尊。」



と呼びかけたものの寝息だけが返ってきた。



「久しぶりに風呂に入りたいんだろうが。朝まで寝るつもりか？」



スー。



またもや寝息だけが返ってきた。



「『はい』だと？そうか、だがこのまま寝かせた後、明日になって起こしてくれなかったと言われるのも難だしな。やはりここは熱湯風呂に入って目を覚ましてもらうしかないだろう。」



スー。



斎藤は武尊の寝息と会話すると武尊の服を脱がしにかかった。



いくらなんでもそうまですれば起きるだろうと斎藤はふんでいた。



が、最後の一枚・・・フンドシを取っても武尊は起きなかった。



「ありえんな・・敵が来たらどうするつもりだ。これも赴任前に教育しておかなければ、だな。」



斎藤は少し怒りながら自分も寝間着を脱ぎ、再び全裸になった。



そして再度武尊を抱きかかえると風呂場へ向かった。



通常なら武尊はこんな事をされて起きない訳がない。



だが莫大な量の気を放出した反動は大きく、強烈な睡魔は武尊の意識をこの程度では放さなかった。