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137.守りたいもの、守りたかったもの (夢主・時尾・家元達・斎藤)
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武尊の服を裂くつもりで手をかけようとしていた斎藤だったが、武尊の叫びと同時に視界の中で僅かに動くものがあり手を止め、動いたものの方へ視線をやった。
武尊も斎藤の変化に気が付き、その視線を追った。
ピクッ。
時尾の瞼が微かに動いたのだ。
そして今まで意識がなく微動だにしなかった時尾が
「う・・・。」
と、小さく呻いた。
斎藤は仕置きは一旦中止だと武尊から下りて片方の手を引っ張り上げて起こした。
武尊も時尾のうめき声が聞こえており、斎藤の誘導に従い上体を起こし斎藤と共に時尾を見守った。
二人が見守る中、時尾はゆっくりと目を開いた。
最初は天井を見て、そして夫の呼びかけにゆっくり視線を斎藤に、そして武尊に移してまた夫を見た。
「五郎さん・・?ここは?」
「ここは家だ、安心しろ。」
「家・・・。」
視線をゆっくり巡らしながら辺りを見る時尾を見て、武尊は涙が出てきた。
(よかった・・時尾さん・・よかった・・・。)
その涙は心の底からの嬉し涙だった。
「あら・・外が真っ暗・・・あっ、私、」
と、時尾は自分に起きた事を思い出し起き上がろうとして、
「っ!」
と、頭を抑えた。
「まだ起き上がるな、しばらく寝てろ。」
と、斎藤が優しく時尾を布団に戻した。
「でも五郎さんの夕餉の支度を・・・。」
と、時尾は再び起きようとしたので武尊もつい、
「大丈夫です、時尾さんが行く前に作った夕餉、私が準備しますから時尾さんはそのまま寝ててください。」
と言ってしまった。
ここは夫婦水入らずにさせとこうと思っていたのに。
「武尊さん・・・。」
「大丈夫、任せて下さい。あ、その前に水桶持ってきます、痛い所冷やして下さい。」
武尊はすぐに立ち上がって井戸へ向かった。
武尊が出て行くと斎藤は時尾の頭の痛がった所にそっと触れ、
「出血はしていないようだが・・・大きなタンコブだな、これは。」
「すみません、私の所為で・・。」
「その話は後だ、今はとりあえず寝ておけ。」
「すみません・・・。」
と、時尾はいったん目を閉じ、一呼吸置いてまた目を開け夫を見た。
「五郎さん・・。」
「何だ。」
優しい目で斎藤は時尾に視線を返した。
「武尊さんは五郎さんのことを『斎藤さん』と呼ぶんですね・・・。」
斎藤の指が時尾に分からないようにピクリと動いた。
何処から自分達の話が聞こえていたのか、自分が武尊をここで、時尾のすぐ隣で犯そうとしていた事は気が付いていたのか斎藤は気になった。
それはもちろん時尾に出来る事なら知られたくないことだから。
時尾は視線を天井へ向けて夫と武尊の自分が知らない過去の事に思いを馳せた。
斎藤は少し後ろめたいのと時尾の意識が戻って一安心したのとでポケットをごそごそやって煙草を取り出し、火を点けた。
「新撰組時代からの付き合いだからな。」
斎藤はぼそっとそう言うと大きく息を吐いて煙草の煙を吐きだした。
「ええ・・・。」
時尾は天井を見つめたままそう答えた。
夫のそういう返事は照れ隠しだという事も時尾はよく分かっている。
そして夫と武尊が空気のように自然にいるという事も。
藤田五郎の妻は自分にしか出来ない、そして夫もそう思ってくれているのは時尾は重々承知。
しかし、夫と武尊のような関係には自分はなれない。
時尾は少しだけ悔しさを覚えた。
けれども夫も武尊もそんな気持ちを少なくとも自分の前では隠して自分の事を気遣ってくれる。
表現の仕方はおかしいかもしれないが、そんな夫がやっぱり好きで武尊も嫌いになれない・・いや気に入っているのだ。
「五郎さん。」
時尾は再び視線を夫に戻した。
「どうした。」
斎藤は呼ばれて返事をした。
時尾は微笑みながら、
「あまり武尊さんをいじめてはだめですよ。」
と夫に釘を刺した。
ゴホッ、ゴホッと斎藤はそれを聞いてむせた。
(何時からだ!やはり先程の会話を聞いていたのか!?)
と内心焦りつつも冷静を装って、
「どういう事だ。」
と聞いてみた。
「私・・、先程武尊さんの叫び声を聞いたんです、『斎藤さんダメー!』って言う声が遠い所から聞こえました。その時は『斎藤さん』というのが誰だか分からなくて、武尊さんがまだ先生の所で危険な目に会っていると思って助けに行かなくてはと、強く思ったら目が覚めたんですの。」
「そうか・・・。」
聞こえていたのは最後だけだったかと、ほっとした斎藤だったが、
「武尊さんがあれほど拒絶をするということは何か酷い事をなさっていたのではありませんか。五郎さん。」
と、言われてしまった。
「何もしていないぞ時尾。というかあれは武尊が今回の事を自分だけが悪いといじけていたからしっかりしろと、ちょっと気合いを入れようとした所だったんだ。」
「あれは武尊さんの所為ではありませんわ・・私が何も知らずお茶にお誘いしたのが悪か・・。」
その時斎藤は手のひらでそっと時尾の頬に触れた。
時尾は言葉を止めて夫を見た。
「時尾も武尊と同じ事を言われたいのか。自分だけの所為にするな・・・俺は時尾も武尊もこうやって無事ならそれでいい。」
「五郎さん・・・。」
そうやって二人が見つめ合っている所に武尊が帰って来た。
(おっとぉ・・熱々の所をお邪魔したくはないんだけど。)
と武尊は思いつつも優先すべきは手当の方っと、武尊は時尾の頭側へ水桶と手ぬぐいを持って座った。
「時尾さん、どこか具合が悪かったり、吐き気とかしてませんか?」
と、武尊は容体を聞きつつ水に浸した手ぬぐいを絞る。
「大丈夫だ武尊、ここに大きなタンコブが出来たぐらいだ。」
と、代わりに斎藤が答えた。
(ほんとに?髄膜下で出血とかしてたらどうすんだよ。)
と武尊は斎藤に心で突っ込んだものの、自分達に出来ることは冷やすことだけというこの時代に時尾の怪我がどうか単純タンコブだけでありますようにと祈った。
「時尾さん、今日はこのまま寝ていてくださいね。それから三日はタンコブを出来るだけ冷やしてくださいね。」
と言いつつ武尊は濡れ手ぬぐいを時尾のタンコブに当てた。
「武尊さんってお医者様みたいね、落ちないように横を向きますわ。ありがとう武尊さん。」
と時尾に見つめられながら言われ武尊は顔を赤くした。
武尊は褒められるとすぐ照れてしまうのだ。
「わ、私もタンコブ作った時にそう言われただけですよ、あっ、それじゃあ夕餉準備できたら呼びに来ますから藤田警部補はここに居て下さいねーー。」
と言うと、武尊はパタパタと台所へ向かった。
2014. 3.12
武尊も斎藤の変化に気が付き、その視線を追った。
ピクッ。
時尾の瞼が微かに動いたのだ。
そして今まで意識がなく微動だにしなかった時尾が
「う・・・。」
と、小さく呻いた。
斎藤は仕置きは一旦中止だと武尊から下りて片方の手を引っ張り上げて起こした。
武尊も時尾のうめき声が聞こえており、斎藤の誘導に従い上体を起こし斎藤と共に時尾を見守った。
二人が見守る中、時尾はゆっくりと目を開いた。
最初は天井を見て、そして夫の呼びかけにゆっくり視線を斎藤に、そして武尊に移してまた夫を見た。
「五郎さん・・?ここは?」
「ここは家だ、安心しろ。」
「家・・・。」
視線をゆっくり巡らしながら辺りを見る時尾を見て、武尊は涙が出てきた。
(よかった・・時尾さん・・よかった・・・。)
その涙は心の底からの嬉し涙だった。
「あら・・外が真っ暗・・・あっ、私、」
と、時尾は自分に起きた事を思い出し起き上がろうとして、
「っ!」
と、頭を抑えた。
「まだ起き上がるな、しばらく寝てろ。」
と、斎藤が優しく時尾を布団に戻した。
「でも五郎さんの夕餉の支度を・・・。」
と、時尾は再び起きようとしたので武尊もつい、
「大丈夫です、時尾さんが行く前に作った夕餉、私が準備しますから時尾さんはそのまま寝ててください。」
と言ってしまった。
ここは夫婦水入らずにさせとこうと思っていたのに。
「武尊さん・・・。」
「大丈夫、任せて下さい。あ、その前に水桶持ってきます、痛い所冷やして下さい。」
武尊はすぐに立ち上がって井戸へ向かった。
武尊が出て行くと斎藤は時尾の頭の痛がった所にそっと触れ、
「出血はしていないようだが・・・大きなタンコブだな、これは。」
「すみません、私の所為で・・。」
「その話は後だ、今はとりあえず寝ておけ。」
「すみません・・・。」
と、時尾はいったん目を閉じ、一呼吸置いてまた目を開け夫を見た。
「五郎さん・・。」
「何だ。」
優しい目で斎藤は時尾に視線を返した。
「武尊さんは五郎さんのことを『斎藤さん』と呼ぶんですね・・・。」
斎藤の指が時尾に分からないようにピクリと動いた。
何処から自分達の話が聞こえていたのか、自分が武尊をここで、時尾のすぐ隣で犯そうとしていた事は気が付いていたのか斎藤は気になった。
それはもちろん時尾に出来る事なら知られたくないことだから。
時尾は視線を天井へ向けて夫と武尊の自分が知らない過去の事に思いを馳せた。
斎藤は少し後ろめたいのと時尾の意識が戻って一安心したのとでポケットをごそごそやって煙草を取り出し、火を点けた。
「新撰組時代からの付き合いだからな。」
斎藤はぼそっとそう言うと大きく息を吐いて煙草の煙を吐きだした。
「ええ・・・。」
時尾は天井を見つめたままそう答えた。
夫のそういう返事は照れ隠しだという事も時尾はよく分かっている。
そして夫と武尊が空気のように自然にいるという事も。
藤田五郎の妻は自分にしか出来ない、そして夫もそう思ってくれているのは時尾は重々承知。
しかし、夫と武尊のような関係には自分はなれない。
時尾は少しだけ悔しさを覚えた。
けれども夫も武尊もそんな気持ちを少なくとも自分の前では隠して自分の事を気遣ってくれる。
表現の仕方はおかしいかもしれないが、そんな夫がやっぱり好きで武尊も嫌いになれない・・いや気に入っているのだ。
「五郎さん。」
時尾は再び視線を夫に戻した。
「どうした。」
斎藤は呼ばれて返事をした。
時尾は微笑みながら、
「あまり武尊さんをいじめてはだめですよ。」
と夫に釘を刺した。
ゴホッ、ゴホッと斎藤はそれを聞いてむせた。
(何時からだ!やはり先程の会話を聞いていたのか!?)
と内心焦りつつも冷静を装って、
「どういう事だ。」
と聞いてみた。
「私・・、先程武尊さんの叫び声を聞いたんです、『斎藤さんダメー!』って言う声が遠い所から聞こえました。その時は『斎藤さん』というのが誰だか分からなくて、武尊さんがまだ先生の所で危険な目に会っていると思って助けに行かなくてはと、強く思ったら目が覚めたんですの。」
「そうか・・・。」
聞こえていたのは最後だけだったかと、ほっとした斎藤だったが、
「武尊さんがあれほど拒絶をするということは何か酷い事をなさっていたのではありませんか。五郎さん。」
と、言われてしまった。
「何もしていないぞ時尾。というかあれは武尊が今回の事を自分だけが悪いといじけていたからしっかりしろと、ちょっと気合いを入れようとした所だったんだ。」
「あれは武尊さんの所為ではありませんわ・・私が何も知らずお茶にお誘いしたのが悪か・・。」
その時斎藤は手のひらでそっと時尾の頬に触れた。
時尾は言葉を止めて夫を見た。
「時尾も武尊と同じ事を言われたいのか。自分だけの所為にするな・・・俺は時尾も武尊もこうやって無事ならそれでいい。」
「五郎さん・・・。」
そうやって二人が見つめ合っている所に武尊が帰って来た。
(おっとぉ・・熱々の所をお邪魔したくはないんだけど。)
と武尊は思いつつも優先すべきは手当の方っと、武尊は時尾の頭側へ水桶と手ぬぐいを持って座った。
「時尾さん、どこか具合が悪かったり、吐き気とかしてませんか?」
と、武尊は容体を聞きつつ水に浸した手ぬぐいを絞る。
「大丈夫だ武尊、ここに大きなタンコブが出来たぐらいだ。」
と、代わりに斎藤が答えた。
(ほんとに?髄膜下で出血とかしてたらどうすんだよ。)
と武尊は斎藤に心で突っ込んだものの、自分達に出来ることは冷やすことだけというこの時代に時尾の怪我がどうか単純タンコブだけでありますようにと祈った。
「時尾さん、今日はこのまま寝ていてくださいね。それから三日はタンコブを出来るだけ冷やしてくださいね。」
と言いつつ武尊は濡れ手ぬぐいを時尾のタンコブに当てた。
「武尊さんってお医者様みたいね、落ちないように横を向きますわ。ありがとう武尊さん。」
と時尾に見つめられながら言われ武尊は顔を赤くした。
武尊は褒められるとすぐ照れてしまうのだ。
「わ、私もタンコブ作った時にそう言われただけですよ、あっ、それじゃあ夕餉準備できたら呼びに来ますから藤田警部補はここに居て下さいねーー。」
と言うと、武尊はパタパタと台所へ向かった。
2014. 3.12