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137.守りたいもの、守りたかったもの (夢主・時尾・家元達・斎藤)
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時尾はまだ武尊の言葉が信じられず、お茶の先生の方をすがる様な目で見つめた。
何故このような事になっているか説明して欲しかったからだ。
というよりも、この状況が何かの間違いだと先生にそう言ってもらいたくて、そして間違いだと信じたかったからだ。
いつも礼儀正しく立派だと信じていたお茶の先生がまさか毒を使用するなんて、そんな恐ろしいことをする人だなんて思いたくなかったからだ。
先生は時尾の視線を受け止め、小さくため息をついた。
「いくら藤田さんの連れて来たお方でもこれはあまりにも酷い・・。」
と、残念がった。
そして蹴飛ばされて畳の上に転がったお茶菓子を拾うと、
「誰が毒なんぞ入れようか。」
と、一口食べた。
「先生!」
時尾はまさか先生がそんな事をしようとは信じられず、させてしまったことに対して自分が武尊を連れて来た事を後悔した。
ほらごらんなさい、毒なんか入っていないでしょ、とアピールする先生を武尊は横目で見て、
「じゃあ、これは?無毒だというのなら食べてみてください。」
と、正面の家元に注意を払いつつポケットから先ほどの茶菓子を取り出して先生に突き出した。
「・・・・。」
ところが先生はそれを受け取らず押し黙ったままだった。
武尊が怪しいと先生をギンと睨むと、横でパチパチパチと家元が拍手をした。
武尊は視線を家元に写し家元をじっと睨んだ。
「いやあ、すばらしい。その度胸、その機転・・普通なら最初に賢寿(先生の名)が落ちた御茶菓子を口にした段階で自分の茶菓子が毒入りではなかったのではないかと焦る所なんだが君にはその迷いがない。」
「・・・。」
武尊は黙って家元の様子をうかがった。
「だが実際こちらの御茶菓子には毒など入っていないしもちろん君のにも毒は入っていない。だからと言って賢寿は君の持っているお茶菓子は食べられない。それは毒の代わりに強力な痺れ薬が入っているからだ。」
「!」
「!」
時尾のには入っていなくて自分のには入っているという強力な痺れ薬。
その事が意味する事といえば・・・。
武尊は自分だけが狙われたという事に気が付いた。
(時尾さんではなく自分・・・・でもいったい何故。)
武尊には面識がない相手から狙われる理由が見当もつかない。
まして惡一文字の男のように理由があって憎悪感をむき出しにして向かってくる男ならともかく、自分に対してまったく恨みの念が感じられない男から狙われるのは全く納得できなかった。
「当初の予定は藤田さんには今回丁重におもてなしをして帰る時には『君は先に帰った。』とでも言って一人でお帰りになっていただく予定だったんだが、こうなってしまったからには二人ともお返しするわけにはいかなくなりました。ま、藤田さんは藤田さんで使い道があるから別にいいんですがね。」
と家元は歪んだ笑いをした。
時尾はその言葉を聞いて青ざめた。
自分が信頼していた先生がまさかこんな事を考えているなんて、ましてその上の家元様までもがそうだと思うと恐ろしくて足がすくみそうだった。
武尊は狙われる理由はともかく時尾まで巻き込もうというこの男達に対して腹が立ってきた。
「それって犯罪だよね。そんな事をよく私に言えるよね。私はこれでも一応警官だよ。本気でそんな事言ってるのなら見逃すわけにはいかない。(特に時尾さんに危害を加えようとする奴なら・・・絶対許さない。)」
と、武尊は更に眼光を鋭くして家元を睨んだ。
爆発しそうな気持の中、少しだけ残っている理性が何とか武尊を冷静にさせ何とか言葉を発する。
「だけど今なら警察署に一緒に来てもらってこんな馬鹿な事をした理由を話せば(時尾さんに危害を加えようとした事を)許してあげれる。それにそうした方がいいと言ってあげるのはあんたの為でもある・・・時尾さんの旦那さんも警官だけど、彼を怒らせたらあんた確実に死ぬよ。」
「フ、フフフフフ・・・・それは君たちがここから出られたら、の話だろう?出来もしない話をしてもしょうがないんじゃないか。君も賢い頭を持っているなら状況を考えたまえ、女二人で何が出来るというんだい。」
(・・・女二人!?・・この男、迷うことなく私が女だということを最初から知っていた?)
会いもしない相手が自分の事を知っているその事は武尊を大いに驚かせた。
(何を?どこまで?)
と、聞いてみたい事が次々に浮かんできた武尊だったが、今は悠著に聞いている状況ではない。
とにかく時尾を連れてここから出なくては、と考える武尊だった。
「返してくれる気がそっちになくてもこっちは帰るから。」
じりっと足を後ろへ下げつつ武尊は機を見て時尾の手を引いて廊下に出ようとすると、廊下の左右から障子に人影が見えた。
三人と三人で六人・・そして部屋に二人。
出口を封じられ武尊と時尾は周りを囲まれてしまった。
「痛い目に合いたくなければ大人しくしておいた方がいい。どうせ逃げられはしないのだから。薬がなければただの小娘・・・なんだろ?」
「!」
自分の秘密を知っていると思われる家元の言葉に武尊は一瞬旋律を覚えた。
(茶人が何故そんな事を!?)
だが今優先させることはこの場から逃げる事、時尾を守る事だと武尊はよぎった不安を心の隅に追いやった。
「私はこの身がもう人を傷つけることがないように・・・と、そう願っていた・・・それは過去に自分の意志でやったことではないにしろ多くの人を傷つけたから・・・だからこの間(自分の判断で銃で人を殺した時)は任務とはいえ心が痛んだ・・・だけど今はっきりと誓う、悪は許さない!まして善良な人が犠牲になるなんて【絶対】許さない!」
最初は自分に言い聞かせるように、そして最後はここのボスらしい家元に向かってはっきりと言いきった。
家元は武尊を見下すようにフンと笑うと、
「いくらでも吠えていなさい、空威張りをすればするほどこちらが楽しいだけですから。」
と両腕を組んでニヤニヤと武尊と時尾を見た。
じりっ・・っと武尊はどこから逃げるのがいいのかと足先の角度を変えながら周囲を探った。
やはり廊下に立っている六人は邪魔、一番の障害。
そこを突破しないと袋のネズミだと武尊は考えた。
(銃があれば六人なんて二秒あれば片付くのに・・・。)
とそんな事も頭に少しよぎったが銃どころか今日は素手。
何とかやるしかない、と武尊は気合を入れた。
「手加減出来るほど私は器用じゃないですからね。」
「どうぞどうぞ。」
と家元は高みの見物でもするような目で武尊を見てククっと笑った。
武尊は周囲に気を配りつつ背後の時尾に体を寄せて自分の意図を伝えた。
「・・・時尾さん・・強行突破しますよ・・私が道を開くから・・・逃げて!」
「武尊さん!」
時尾が武尊の名前を叫ぶと同時に武尊は障子を蹴破ぶった。
何故このような事になっているか説明して欲しかったからだ。
というよりも、この状況が何かの間違いだと先生にそう言ってもらいたくて、そして間違いだと信じたかったからだ。
いつも礼儀正しく立派だと信じていたお茶の先生がまさか毒を使用するなんて、そんな恐ろしいことをする人だなんて思いたくなかったからだ。
先生は時尾の視線を受け止め、小さくため息をついた。
「いくら藤田さんの連れて来たお方でもこれはあまりにも酷い・・。」
と、残念がった。
そして蹴飛ばされて畳の上に転がったお茶菓子を拾うと、
「誰が毒なんぞ入れようか。」
と、一口食べた。
「先生!」
時尾はまさか先生がそんな事をしようとは信じられず、させてしまったことに対して自分が武尊を連れて来た事を後悔した。
ほらごらんなさい、毒なんか入っていないでしょ、とアピールする先生を武尊は横目で見て、
「じゃあ、これは?無毒だというのなら食べてみてください。」
と、正面の家元に注意を払いつつポケットから先ほどの茶菓子を取り出して先生に突き出した。
「・・・・。」
ところが先生はそれを受け取らず押し黙ったままだった。
武尊が怪しいと先生をギンと睨むと、横でパチパチパチと家元が拍手をした。
武尊は視線を家元に写し家元をじっと睨んだ。
「いやあ、すばらしい。その度胸、その機転・・普通なら最初に賢寿(先生の名)が落ちた御茶菓子を口にした段階で自分の茶菓子が毒入りではなかったのではないかと焦る所なんだが君にはその迷いがない。」
「・・・。」
武尊は黙って家元の様子をうかがった。
「だが実際こちらの御茶菓子には毒など入っていないしもちろん君のにも毒は入っていない。だからと言って賢寿は君の持っているお茶菓子は食べられない。それは毒の代わりに強力な痺れ薬が入っているからだ。」
「!」
「!」
時尾のには入っていなくて自分のには入っているという強力な痺れ薬。
その事が意味する事といえば・・・。
武尊は自分だけが狙われたという事に気が付いた。
(時尾さんではなく自分・・・・でもいったい何故。)
武尊には面識がない相手から狙われる理由が見当もつかない。
まして惡一文字の男のように理由があって憎悪感をむき出しにして向かってくる男ならともかく、自分に対してまったく恨みの念が感じられない男から狙われるのは全く納得できなかった。
「当初の予定は藤田さんには今回丁重におもてなしをして帰る時には『君は先に帰った。』とでも言って一人でお帰りになっていただく予定だったんだが、こうなってしまったからには二人ともお返しするわけにはいかなくなりました。ま、藤田さんは藤田さんで使い道があるから別にいいんですがね。」
と家元は歪んだ笑いをした。
時尾はその言葉を聞いて青ざめた。
自分が信頼していた先生がまさかこんな事を考えているなんて、ましてその上の家元様までもがそうだと思うと恐ろしくて足がすくみそうだった。
武尊は狙われる理由はともかく時尾まで巻き込もうというこの男達に対して腹が立ってきた。
「それって犯罪だよね。そんな事をよく私に言えるよね。私はこれでも一応警官だよ。本気でそんな事言ってるのなら見逃すわけにはいかない。(特に時尾さんに危害を加えようとする奴なら・・・絶対許さない。)」
と、武尊は更に眼光を鋭くして家元を睨んだ。
爆発しそうな気持の中、少しだけ残っている理性が何とか武尊を冷静にさせ何とか言葉を発する。
「だけど今なら警察署に一緒に来てもらってこんな馬鹿な事をした理由を話せば(時尾さんに危害を加えようとした事を)許してあげれる。それにそうした方がいいと言ってあげるのはあんたの為でもある・・・時尾さんの旦那さんも警官だけど、彼を怒らせたらあんた確実に死ぬよ。」
「フ、フフフフフ・・・・それは君たちがここから出られたら、の話だろう?出来もしない話をしてもしょうがないんじゃないか。君も賢い頭を持っているなら状況を考えたまえ、女二人で何が出来るというんだい。」
(・・・女二人!?・・この男、迷うことなく私が女だということを最初から知っていた?)
会いもしない相手が自分の事を知っているその事は武尊を大いに驚かせた。
(何を?どこまで?)
と、聞いてみたい事が次々に浮かんできた武尊だったが、今は悠著に聞いている状況ではない。
とにかく時尾を連れてここから出なくては、と考える武尊だった。
「返してくれる気がそっちになくてもこっちは帰るから。」
じりっと足を後ろへ下げつつ武尊は機を見て時尾の手を引いて廊下に出ようとすると、廊下の左右から障子に人影が見えた。
三人と三人で六人・・そして部屋に二人。
出口を封じられ武尊と時尾は周りを囲まれてしまった。
「痛い目に合いたくなければ大人しくしておいた方がいい。どうせ逃げられはしないのだから。薬がなければただの小娘・・・なんだろ?」
「!」
自分の秘密を知っていると思われる家元の言葉に武尊は一瞬旋律を覚えた。
(茶人が何故そんな事を!?)
だが今優先させることはこの場から逃げる事、時尾を守る事だと武尊はよぎった不安を心の隅に追いやった。
「私はこの身がもう人を傷つけることがないように・・・と、そう願っていた・・・それは過去に自分の意志でやったことではないにしろ多くの人を傷つけたから・・・だからこの間(自分の判断で銃で人を殺した時)は任務とはいえ心が痛んだ・・・だけど今はっきりと誓う、悪は許さない!まして善良な人が犠牲になるなんて【絶対】許さない!」
最初は自分に言い聞かせるように、そして最後はここのボスらしい家元に向かってはっきりと言いきった。
家元は武尊を見下すようにフンと笑うと、
「いくらでも吠えていなさい、空威張りをすればするほどこちらが楽しいだけですから。」
と両腕を組んでニヤニヤと武尊と時尾を見た。
じりっ・・っと武尊はどこから逃げるのがいいのかと足先の角度を変えながら周囲を探った。
やはり廊下に立っている六人は邪魔、一番の障害。
そこを突破しないと袋のネズミだと武尊は考えた。
(銃があれば六人なんて二秒あれば片付くのに・・・。)
とそんな事も頭に少しよぎったが銃どころか今日は素手。
何とかやるしかない、と武尊は気合を入れた。
「手加減出来るほど私は器用じゃないですからね。」
「どうぞどうぞ。」
と家元は高みの見物でもするような目で武尊を見てククっと笑った。
武尊は周囲に気を配りつつ背後の時尾に体を寄せて自分の意図を伝えた。
「・・・時尾さん・・強行突破しますよ・・私が道を開くから・・・逃げて!」
「武尊さん!」
時尾が武尊の名前を叫ぶと同時に武尊は障子を蹴破ぶった。