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136.罠 (操、夢主、時尾)
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下僕の者・・・とでもいうのであろうか、ものすごく腰が低い坊主頭の男が出迎え、二人を奥に案内した。
(お坊さん?)
と、不思議に思った武尊が時尾に小声で聞いた。
「お坊さんがお茶を教えてるんですか?」
「いえ、武尊さん、茶人の方はこういう頭の方が多いんですって。」
「そうなんですか!」
ふう~ん、と思いつつ武尊は案内人と時尾の後をついて廊下を歩いて行く。
「それでは藤田様はこちらへ、お連れ様はこちらのお部屋にお入り下さい。」
と、その男は障子が開いている二十畳ほどの広い部屋を手で示した。
「え?時尾さんと一緒じゃないんですか?」
と、思わず武尊は男に聞いた。
「はい、申し訳ありませんが藤田様は家元様から直接御指導をお受けになります故奥の間で。お連れ様はこちらで御控え下さい。後程、先生をお連れに参ります。」
「はい、それなら仕方がないですね。」
と武尊は時尾と別れてその部屋に入った。
武尊は一人だけになり、どこに座ってよいのかも分からず、思わず部屋の中をうろうろしたり、外の景色を見たりした。
「本当、すごい御屋敷だよね。庭も広いしー。すぐそこに池もあるし。」
と、武尊は感心して廊下ギリギリの所に立って辺りを見回した。
幾重にも曲がった廊下、何処まで広いのか建物の全貌が見えないほどに。
と、その時武尊はこちらに近づいて来る人影を見て慌てて引っ込み正座をした。
「失礼します。」
と、その男は廊下で武尊をして武尊に一礼して部屋に入って来た。
手にはお盆、その上に茶菓子を乗せていた。
そのお茶菓子を出されながら武尊は思わず聞いた。
「あなたがお茶の先生ですか?」
聞かれた男は武尊よりちょっと年上ぐらいだろうか、先生と言われて思わずぷっ噴出した。
「まだ私など先生の足元にも及びませんよ、一応弟子ですがね。」
と穏やかに笑うその顔はいかにも優しげで意外に好青年だと武尊に印象づけるほどだった。
それに坊主頭でなく、普通の短髪だった。
「今日はお客様には堅苦しい礼儀作法は抜きにしてお茶を楽しんでいただきなさいとの家元様の御意向ですので気を楽にしてください。」
と穏やかに言われ武尊はやっと緊張の糸が緩んだ。
「そうですか、助かりました。恥ずかしい話ですが私は茶道とか全然しらないんです。」
と、武尊も照れ笑いをしながら答えた。
「大丈夫ですよ、ただ先生は今家元様と御一緒されてますのでこちらに来られるのに少しお時間がかかります。それ故その間、宜しければそちらのお茶菓子を召上って下さい。」
「え、お茶菓子を先に食べてもいいんですか?」
と、武尊がびっくりしてそう言うと、
「ええ、お茶用の御菓子はまた別にお茶を一緒にお持ちしますので。」
とその男は答え、武尊に再び一礼すると部屋を去って行った。
武尊は部屋に一人・・。
畳に置かれたお茶菓子・・・につい目が行ってしまう。
それは焼き菓子のようだった。
「珍しいよね、お茶に洋菓子風のお菓子なんて。珍しい物っていう事で用意してくれたのかな。それにしても、こういう初めての所に一人にされると、なんとなくちょっと不安になるんだけどなぁ。」
と、一応自分は客人だぞ、放っておいていいのか、という気持ちと、逆に一人でほっとするといった相反する気持ちになって武尊は立ち上がって廊下から周りを覗いた。
自分の視界には誰もいなかった。
武尊は廊下に出て先ほど見えた池を見てみると、その形は廊下のすぐ下まで水の部分が来るようになっていた。
「うわっ、でかい鯉発見!あ、あっちにも、あっ、こっちにも!」
と、その池には大きな錦と金の鯉が悠々とすぐ下を泳いでいた。
「こんな所で一人で御菓子食べて待ってるっていうのもつまらないよね。」
と武尊は何を思ったのか、先程の焼き菓子のお皿を持って来て指先で少しちぎると、
「ほら、お食べ。」
と、鯉に向かって投げた。
「・・・食べるかな?」
と思いながらじっと水中に落ちた御菓子を見ていると鯉がすっと近づいて身を躍らせてパクっと飲み込んだ。
「あっ、食べた。」
と、武尊は嬉しくなって、またちょっと摘まんで投げようとした時、先程御菓子を食べた鯉が激しく尾を動かし水面へジャンプするとそのまま動かなくなった。
「えっ?!」
武尊は目の前で腹を上にしてぷかっと浮いている鯉に自分の眼を疑った。
「何・・・・。」
そして自分の摘まんだ御菓子のかけらに目をやった。
「もしかしてこれの所為・・・?」
武尊はちょっと躊躇したがそれをもう一度池の中に放り込んだ。
すると違う鯉がやって来て同じようにそれを食べ、同じように水に腹を浮かべ動かなくなった。
「毒!?」
武尊は自分に出された御菓子に毒が入っていることに気が付いた。
と、同時に武尊が思ったことは池に浮かぶ一匹数百万円もするだろう鯉を死なせてしまったことではなかった。
「時尾さん!」
武尊は懐紙ごとその御菓子をポケットに突っ込むと、どこにいるか分からない時尾の安否を気遣い走りだしていた。
(お坊さん?)
と、不思議に思った武尊が時尾に小声で聞いた。
「お坊さんがお茶を教えてるんですか?」
「いえ、武尊さん、茶人の方はこういう頭の方が多いんですって。」
「そうなんですか!」
ふう~ん、と思いつつ武尊は案内人と時尾の後をついて廊下を歩いて行く。
「それでは藤田様はこちらへ、お連れ様はこちらのお部屋にお入り下さい。」
と、その男は障子が開いている二十畳ほどの広い部屋を手で示した。
「え?時尾さんと一緒じゃないんですか?」
と、思わず武尊は男に聞いた。
「はい、申し訳ありませんが藤田様は家元様から直接御指導をお受けになります故奥の間で。お連れ様はこちらで御控え下さい。後程、先生をお連れに参ります。」
「はい、それなら仕方がないですね。」
と武尊は時尾と別れてその部屋に入った。
武尊は一人だけになり、どこに座ってよいのかも分からず、思わず部屋の中をうろうろしたり、外の景色を見たりした。
「本当、すごい御屋敷だよね。庭も広いしー。すぐそこに池もあるし。」
と、武尊は感心して廊下ギリギリの所に立って辺りを見回した。
幾重にも曲がった廊下、何処まで広いのか建物の全貌が見えないほどに。
と、その時武尊はこちらに近づいて来る人影を見て慌てて引っ込み正座をした。
「失礼します。」
と、その男は廊下で武尊をして武尊に一礼して部屋に入って来た。
手にはお盆、その上に茶菓子を乗せていた。
そのお茶菓子を出されながら武尊は思わず聞いた。
「あなたがお茶の先生ですか?」
聞かれた男は武尊よりちょっと年上ぐらいだろうか、先生と言われて思わずぷっ噴出した。
「まだ私など先生の足元にも及びませんよ、一応弟子ですがね。」
と穏やかに笑うその顔はいかにも優しげで意外に好青年だと武尊に印象づけるほどだった。
それに坊主頭でなく、普通の短髪だった。
「今日はお客様には堅苦しい礼儀作法は抜きにしてお茶を楽しんでいただきなさいとの家元様の御意向ですので気を楽にしてください。」
と穏やかに言われ武尊はやっと緊張の糸が緩んだ。
「そうですか、助かりました。恥ずかしい話ですが私は茶道とか全然しらないんです。」
と、武尊も照れ笑いをしながら答えた。
「大丈夫ですよ、ただ先生は今家元様と御一緒されてますのでこちらに来られるのに少しお時間がかかります。それ故その間、宜しければそちらのお茶菓子を召上って下さい。」
「え、お茶菓子を先に食べてもいいんですか?」
と、武尊がびっくりしてそう言うと、
「ええ、お茶用の御菓子はまた別にお茶を一緒にお持ちしますので。」
とその男は答え、武尊に再び一礼すると部屋を去って行った。
武尊は部屋に一人・・。
畳に置かれたお茶菓子・・・につい目が行ってしまう。
それは焼き菓子のようだった。
「珍しいよね、お茶に洋菓子風のお菓子なんて。珍しい物っていう事で用意してくれたのかな。それにしても、こういう初めての所に一人にされると、なんとなくちょっと不安になるんだけどなぁ。」
と、一応自分は客人だぞ、放っておいていいのか、という気持ちと、逆に一人でほっとするといった相反する気持ちになって武尊は立ち上がって廊下から周りを覗いた。
自分の視界には誰もいなかった。
武尊は廊下に出て先ほど見えた池を見てみると、その形は廊下のすぐ下まで水の部分が来るようになっていた。
「うわっ、でかい鯉発見!あ、あっちにも、あっ、こっちにも!」
と、その池には大きな錦と金の鯉が悠々とすぐ下を泳いでいた。
「こんな所で一人で御菓子食べて待ってるっていうのもつまらないよね。」
と武尊は何を思ったのか、先程の焼き菓子のお皿を持って来て指先で少しちぎると、
「ほら、お食べ。」
と、鯉に向かって投げた。
「・・・食べるかな?」
と思いながらじっと水中に落ちた御菓子を見ていると鯉がすっと近づいて身を躍らせてパクっと飲み込んだ。
「あっ、食べた。」
と、武尊は嬉しくなって、またちょっと摘まんで投げようとした時、先程御菓子を食べた鯉が激しく尾を動かし水面へジャンプするとそのまま動かなくなった。
「えっ?!」
武尊は目の前で腹を上にしてぷかっと浮いている鯉に自分の眼を疑った。
「何・・・・。」
そして自分の摘まんだ御菓子のかけらに目をやった。
「もしかしてこれの所為・・・?」
武尊はちょっと躊躇したがそれをもう一度池の中に放り込んだ。
すると違う鯉がやって来て同じようにそれを食べ、同じように水に腹を浮かべ動かなくなった。
「毒!?」
武尊は自分に出された御菓子に毒が入っていることに気が付いた。
と、同時に武尊が思ったことは池に浮かぶ一匹数百万円もするだろう鯉を死なせてしまったことではなかった。
「時尾さん!」
武尊は懐紙ごとその御菓子をポケットに突っ込むと、どこにいるか分からない時尾の安否を気遣い走りだしていた。