武尊は時尾の着物姿をチラチラ見ながら心の中でため息をついていた。



（これが“女の人”っていうんだろうな・・。綺麗でかわいくて・・・でも自分は・・・。）



と、ちょっと落ち込む武尊だった。



（そりゃ私は現代人だし、育った環境からそう言った綺麗な着物なんて生まれてから一度も着たことなんかないけどさー・・・ってこの着物って斎藤さんからのプレゼントなのかな・・・。）



羨ましい、と思ってしまってから武尊はハッとする。



（ダメダメ！藤田夫婦は今までもそしてこれからも幸せ夫婦であってもらわないと困るんだから！）



と、自分に言い聞かせながら、それでもすぐ心のどこかで時尾を羨ましいと思う自分がすぐに現れる武尊だった。



「武尊さん、ここですよ。」



と、時尾が武尊に声をかけた。



「え？」



武尊が気が付くと、いつの間にか時尾を追い越して３ｍばかり進んでいた。



明らかにぼーっとしてたと武尊は慌てて引き返して時尾の横に立ち、立派な門を見上げた。



「ここですか？大きい家・・いえ、御屋敷ですねぇ。」



「ええ、少し前までは長州藩のお屋敷だった所だそうですよ。今は違う方がお住みになっていらっしゃるみたいですけど。お茶の先生はお稽古の日はこちらの一室をお借りしてるんですって。」



（長州？！）



条件反射的にその名前を聞いただけで嫌だなっと思ってしまう武尊だが、今はそれより、この立派な御屋敷に自分が場違いな感じがして不安になった。



「・・いいんですか、時尾さん、本当に私みたいな者が御一緒して｡」



「大丈夫ですよ、本当に。」



と、時尾は微笑み戸を叩いた。