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136.罠 (操、夢主、時尾)
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お昼も少し過ぎて、武尊はこの間診療所へ行った時に蒼紫とおにぎりを食べた場所で一人おにぎりを食べた。
「結局蒼紫来なかった・・。」
と、武尊はおにぎりを握っている方と反対の手で御札を入れている胸ポケット付近を抑えた。
「いつ帰ることにしたんだろう。帰る前に渡せるといいんだけど・・・。」
昼食を食べ終わり武尊は一つため息をつくと立ち上がって藤田家へ向かった。
帰路、武尊は畑を抜け、店が多く立ち並ぶ界隈を歩いていると偶然正面から来た操と目が合った。
「武尊さん!」
「操ちゃん・・・どうしたの?こんな所で。」
「武尊さんこそ。」
こんな所で会うなんてすごい偶然だと、二人とも目を大きくして互いの事を聞き合った。
「私は・・(おっと、怪我してるって操ちゃんは知らないから診療所行って来たなんて言えないか。)巡察の途中(という事にしよう)だけど、操ちゃんは?」
「うん、薫さんの・・あっ、薫さん知ってるよね。こないだ道場で会ったじゃん、あの薫さんに言われて味噌を買いに来たんだ。」
先日炊き込みおにぎりを食べた後、あの場で武尊が十六夜丸かどうかを問うのは次に武尊が道場に来た時まで棚上げと緋村に言われているので操はその事は聞かない事にした。
「こんな遠くまで?」
「別に遠くないけど。その店の味噌が安くて美味しいからって店指定されたからね。」
と、操はあっけらかんと答えた。
「でも折角東京に来たんだから蒼紫様と浅草とか銀座へ観光に行きたい~!」
と、操は指を組んで目を潤ませた。
「え?操ちゃん達東京に来てから随分経つけど何処も行ってないの?」
「そうよ、こないだまでは緋村と薫さんが大変な事になってたし、その後は弥彦の面倒見てたでしょ~、蒼紫様は蒼紫様で忙しかったらしくお出かけされてた事が多かったから・・・。私だって今日初めてよ、一人でこんなに自由に外へ出たのは。」
「そうなんだ、でもよく道に迷わないよね。」
「大丈夫よ、一応道教えてもらったし、それに私結構、勘いいんだ。迷った事殆どないもん。」
それは羨ましい限りだと武尊は思った。
が、その時ふと思い浮かぶことがあって武尊は操に聞いてみた。
「あ、そうだ操ちゃん。」
「何?」
「操ちゃん達はいつ京都に帰るの?頼まれごとって終わったんだよね?」
「うん、終わったけど・・別にいつ帰るなんて蒼紫様から何も聞いてないし~。」
と、操は人差し指をおでこにつけて考えていた。
(そっか・・・まだいつかは決めてないんだ・・。)
と、武尊は思った。
しかし、日は決めていなくても蒼紫が京都へ帰る日はそう遠くないと考える武尊はふっと手を胸ポケットの上へ当てた。
そして・・・。
「ねぇ、操ちゃん・・お願いがあるんだけど・・・。」
と切り出した。
「ん?何。」
武尊は一瞬間を置いて、それから懐から半紙に包んだ御札を取り出した。
「これを四乃森さんに渡して欲しいんだけど。」
「何これ?」
「・・・御札。」
「御札??」
「うん・・・。」
「蒼紫様に御札?」
操は理由が分からずいぶかしげに武尊を見た。
まだ帰ることすら考えていない操に何て説明しようかと武尊は悩んだが、その悩み意外にまた一つ閃いたことがあった。
「ピカリ!」
思わず指をならした武尊を操はびっくりして見た。
武尊は現実主義すぎる蒼紫よりも、精神年齢がときどきお子様な操にひらめくものがあったのだ。
そしてびっくりしている操に一歩詰め寄って言った。
「ねぇ、操ちゃん、操ちゃんって幽霊とか見た事ある?」
「は?いきなり何、武尊さん。」
「いや、操ちゃんって霊感ある?」
ずいっと近寄られて操はたじっとなりながら、
「幽霊なんて見た事ないって・・・・あっ・・。」
と、操は葵屋での戦いの時に般若が夢の中に現れ蒼紫が戻って来ることを告げられたのを思い出した。
「『あっ』って何か心当たりでもある?」
「んー、見たっていうか夢になら死んだ仲間が出て来たことがあったけど、それが何か・・?」
武尊はそれを聞いて蒼紫よりはやっぱり操のほうが霊に対する感受性が高そうだと確信した。
「これね・・。」
と言いつつ武尊は半紙を開いて御札を操に見せた。
「これ、私が書いたの・・。お世話になった四乃森さんと操ちゃんの為にって、そんな偉そうな物じゃないけど帰り道のお守りにと思って。」
「あ、ありがと武尊さん。」
どうせくれるなら美味しいお菓子がよかったなと、一瞬考えた操だった。
「でも、蒼紫様が一緒だから絶対安心なんだけど・・。」
だから『いらない』と言おうとした操だったが流石に武尊が厚意でしてくれた事に対し、そう邪魔にならない物に対して断るのも悪いと思い断れなかった。
そう思っている間に武尊の説明が続く。
「帰る時でいいからこっちの御札は操ちゃんが持っていて。」
と、武尊は悪霊退散の御札の方を示した。
「これは・・操ちゃんの判断でいいから、何か嫌な感じがするとかって思ったら、その方向に投げてくれるだけでいいから。そしてこっちは・・。」
と、もう一つの、諸願成就の御札を示した。
「・・・こっちは祈り事をする前に静かにその場所に置いてって・・・四乃森さんに渡してくれる?」
「・・お祈り事?蒼紫様が?」
蒼紫が何かに祈るなんて、そんな姿が想像すら出来ない操は首を傾げた。
それでも武尊は蒼紫が京都へ帰る事を操に告げていない段階で、帰路の途中に御庭番衆を埋葬した所へ寄るとは言ってないのだろう、と思いそこには触れなかった。
「う~ん・・・それは帰る日が決まってから四乃森さんに聞いた方がいいかも。」
と、武尊は濁すように言った。
蒼紫が御庭番衆四人のお墓に寄るという事は蒼紫が操に伝えるべき事で、部外者の自分が言う事ではないと思ったからだ。
再びパタパタと半紙を折った武尊はまだ首を傾げている操の手に御札を握らせると、
「じゃ・・お願いね、操ちゃん。」
と、ギュッと操の手を握りしめた。
「え・・まあいいけど。」
「ちなみに・・・今日四乃森さんは?」
「蒼紫様なら朝から座禅を組んでいらっしゃるわ。ま、そんな蒼紫様に話しかけられるのは緋村ぐらいしかいないけどね。」
「そっか・・。操ちゃんごめんね、買い物の途中で引き止めたりして。」
「ううん、別に急ぎじゃないしこっちこそごめん。ってさ、今日はあいつは一緒じゃないの?」
と、操は急にヒソヒソ声で武尊に囁いた。
「え?『あいつ』って?」
「斎藤よ、斎藤。武尊さんいじめられたりしてない?大丈夫?」
「あ、ああ~~。 (確かに斎藤さんはいつも険しい顔してるし、皮肉も飛ばしまくっているから言われた方からしたらそういう印象でおかしくないよねぇ・・。) 」
と、武尊は苦笑いした。
本気で心配してくれる操の気持ちもわからないではないが、斎藤が自分だけに見せる優しさに改めて武尊は優越感というか嬉しさが湧いて来る。
思わず顔がにやりと緩みそうになる。
「『あ~』じゃ分からないわよ。」
「ありがとう操ちゃん、大丈夫。それに毎日充実してるよ。」
「そっか、それならいいんだけど・・。何かあったら私の所に来てね、蒼紫様も緋村もいるから。」
「あ、うん・・、ありがと。」
その気持ちだけ頂いときます、と武尊は操に手を振って別れた。
「結局蒼紫来なかった・・。」
と、武尊はおにぎりを握っている方と反対の手で御札を入れている胸ポケット付近を抑えた。
「いつ帰ることにしたんだろう。帰る前に渡せるといいんだけど・・・。」
昼食を食べ終わり武尊は一つため息をつくと立ち上がって藤田家へ向かった。
帰路、武尊は畑を抜け、店が多く立ち並ぶ界隈を歩いていると偶然正面から来た操と目が合った。
「武尊さん!」
「操ちゃん・・・どうしたの?こんな所で。」
「武尊さんこそ。」
こんな所で会うなんてすごい偶然だと、二人とも目を大きくして互いの事を聞き合った。
「私は・・(おっと、怪我してるって操ちゃんは知らないから診療所行って来たなんて言えないか。)巡察の途中(という事にしよう)だけど、操ちゃんは?」
「うん、薫さんの・・あっ、薫さん知ってるよね。こないだ道場で会ったじゃん、あの薫さんに言われて味噌を買いに来たんだ。」
先日炊き込みおにぎりを食べた後、あの場で武尊が十六夜丸かどうかを問うのは次に武尊が道場に来た時まで棚上げと緋村に言われているので操はその事は聞かない事にした。
「こんな遠くまで?」
「別に遠くないけど。その店の味噌が安くて美味しいからって店指定されたからね。」
と、操はあっけらかんと答えた。
「でも折角東京に来たんだから蒼紫様と浅草とか銀座へ観光に行きたい~!」
と、操は指を組んで目を潤ませた。
「え?操ちゃん達東京に来てから随分経つけど何処も行ってないの?」
「そうよ、こないだまでは緋村と薫さんが大変な事になってたし、その後は弥彦の面倒見てたでしょ~、蒼紫様は蒼紫様で忙しかったらしくお出かけされてた事が多かったから・・・。私だって今日初めてよ、一人でこんなに自由に外へ出たのは。」
「そうなんだ、でもよく道に迷わないよね。」
「大丈夫よ、一応道教えてもらったし、それに私結構、勘いいんだ。迷った事殆どないもん。」
それは羨ましい限りだと武尊は思った。
が、その時ふと思い浮かぶことがあって武尊は操に聞いてみた。
「あ、そうだ操ちゃん。」
「何?」
「操ちゃん達はいつ京都に帰るの?頼まれごとって終わったんだよね?」
「うん、終わったけど・・別にいつ帰るなんて蒼紫様から何も聞いてないし~。」
と、操は人差し指をおでこにつけて考えていた。
(そっか・・・まだいつかは決めてないんだ・・。)
と、武尊は思った。
しかし、日は決めていなくても蒼紫が京都へ帰る日はそう遠くないと考える武尊はふっと手を胸ポケットの上へ当てた。
そして・・・。
「ねぇ、操ちゃん・・お願いがあるんだけど・・・。」
と切り出した。
「ん?何。」
武尊は一瞬間を置いて、それから懐から半紙に包んだ御札を取り出した。
「これを四乃森さんに渡して欲しいんだけど。」
「何これ?」
「・・・御札。」
「御札??」
「うん・・・。」
「蒼紫様に御札?」
操は理由が分からずいぶかしげに武尊を見た。
まだ帰ることすら考えていない操に何て説明しようかと武尊は悩んだが、その悩み意外にまた一つ閃いたことがあった。
「ピカリ!」
思わず指をならした武尊を操はびっくりして見た。
武尊は現実主義すぎる蒼紫よりも、精神年齢がときどきお子様な操にひらめくものがあったのだ。
そしてびっくりしている操に一歩詰め寄って言った。
「ねぇ、操ちゃん、操ちゃんって幽霊とか見た事ある?」
「は?いきなり何、武尊さん。」
「いや、操ちゃんって霊感ある?」
ずいっと近寄られて操はたじっとなりながら、
「幽霊なんて見た事ないって・・・・あっ・・。」
と、操は葵屋での戦いの時に般若が夢の中に現れ蒼紫が戻って来ることを告げられたのを思い出した。
「『あっ』って何か心当たりでもある?」
「んー、見たっていうか夢になら死んだ仲間が出て来たことがあったけど、それが何か・・?」
武尊はそれを聞いて蒼紫よりはやっぱり操のほうが霊に対する感受性が高そうだと確信した。
「これね・・。」
と言いつつ武尊は半紙を開いて御札を操に見せた。
「これ、私が書いたの・・。お世話になった四乃森さんと操ちゃんの為にって、そんな偉そうな物じゃないけど帰り道のお守りにと思って。」
「あ、ありがと武尊さん。」
どうせくれるなら美味しいお菓子がよかったなと、一瞬考えた操だった。
「でも、蒼紫様が一緒だから絶対安心なんだけど・・。」
だから『いらない』と言おうとした操だったが流石に武尊が厚意でしてくれた事に対し、そう邪魔にならない物に対して断るのも悪いと思い断れなかった。
そう思っている間に武尊の説明が続く。
「帰る時でいいからこっちの御札は操ちゃんが持っていて。」
と、武尊は悪霊退散の御札の方を示した。
「これは・・操ちゃんの判断でいいから、何か嫌な感じがするとかって思ったら、その方向に投げてくれるだけでいいから。そしてこっちは・・。」
と、もう一つの、諸願成就の御札を示した。
「・・・こっちは祈り事をする前に静かにその場所に置いてって・・・四乃森さんに渡してくれる?」
「・・お祈り事?蒼紫様が?」
蒼紫が何かに祈るなんて、そんな姿が想像すら出来ない操は首を傾げた。
それでも武尊は蒼紫が京都へ帰る事を操に告げていない段階で、帰路の途中に御庭番衆を埋葬した所へ寄るとは言ってないのだろう、と思いそこには触れなかった。
「う~ん・・・それは帰る日が決まってから四乃森さんに聞いた方がいいかも。」
と、武尊は濁すように言った。
蒼紫が御庭番衆四人のお墓に寄るという事は蒼紫が操に伝えるべき事で、部外者の自分が言う事ではないと思ったからだ。
再びパタパタと半紙を折った武尊はまだ首を傾げている操の手に御札を握らせると、
「じゃ・・お願いね、操ちゃん。」
と、ギュッと操の手を握りしめた。
「え・・まあいいけど。」
「ちなみに・・・今日四乃森さんは?」
「蒼紫様なら朝から座禅を組んでいらっしゃるわ。ま、そんな蒼紫様に話しかけられるのは緋村ぐらいしかいないけどね。」
「そっか・・。操ちゃんごめんね、買い物の途中で引き止めたりして。」
「ううん、別に急ぎじゃないしこっちこそごめん。ってさ、今日はあいつは一緒じゃないの?」
と、操は急にヒソヒソ声で武尊に囁いた。
「え?『あいつ』って?」
「斎藤よ、斎藤。武尊さんいじめられたりしてない?大丈夫?」
「あ、ああ~~。 (確かに斎藤さんはいつも険しい顔してるし、皮肉も飛ばしまくっているから言われた方からしたらそういう印象でおかしくないよねぇ・・。) 」
と、武尊は苦笑いした。
本気で心配してくれる操の気持ちもわからないではないが、斎藤が自分だけに見せる優しさに改めて武尊は優越感というか嬉しさが湧いて来る。
思わず顔がにやりと緩みそうになる。
「『あ~』じゃ分からないわよ。」
「ありがとう操ちゃん、大丈夫。それに毎日充実してるよ。」
「そっか、それならいいんだけど・・。何かあったら私の所に来てね、蒼紫様も緋村もいるから。」
「あ、うん・・、ありがと。」
その気持ちだけ頂いときます、と武尊は操に手を振って別れた。