※1 記憶を失っている時の名前は変換できません。
128.異動内示が意味するもの (斎藤・夢主・張)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
武尊は張に肩を叩かれ我に返った。
斎藤と二人きりの部屋。
武尊は吸い寄せられるように窓辺に行き、空を見上げた。
特に何を見たいわけではなかったが武尊は空を仰いで流れて行く雲をぼんやりと目に映していた。
すると斎藤が、
「やられたかもな・・・。」
とぼそっと呟いた。
武尊は『え?』と思いながら斎藤を振り返った。
斉藤は武尊の顔を見ながら、
「今回の異動、若しかしたら仕組まれた物かもしれん。」
と言った。
「・・どういう事?」
「疑いだせば切りがないが、この時期の異動にしてはあまりにも急な話だ。別に俺にさせたい仕事があるならそれを命じるだけで足りるはずだ。」
「確かに・・・。」
「どうやら向こうは俺が東京にいるのが邪魔なんだろう。」
「ちょっと待ってください、それってやっぱり相手は政府の中にいるって事ですか?!」
「政府の中にいるのか、政治家に顔が聞く奴かは分からんがな。」
「そんな!今回の武器だって一部が政府高官が集う夜会を襲撃するために使われたんですよ、それを阻止した斎藤さんがお払い箱になるなら誰がみんなを守るっていうんですか!・・・って私の所為・・・。」
武尊ははっとした。
若し自分が密輸武器の事なんか放っておけば、気が付かなければ斎藤が北海道へ飛ばされるってことなんか起きなかったと。
「私の所為だ・・・私が変な事にこだわらなければ・・・ごめんなさい、斎藤さん・・・。」
後悔よりも悔しくて武尊の声が震える。
「あくまでも仮説だ武尊。武尊が気にすることではない。それにたとえそうだったとしても実際に指示をして密輸武器を海に沈めたのは俺と張だ。」
「でもっ!」
「もう決まった話だ。」
武尊はショックだった。
斉藤は仮説というが、自分達が密輸武器を海に沈めてしまったということは紛れもない事実で、となると当然大枚をはたいて買った側は面白くないに決まっている。
そしてそのつけが川路や斎藤に来たというのは十分に考えられるからだ。
(確かこの時代はまだ北海道は原野だ・・・雪の少ない函館ならまだしも、札幌なんか・・・。)
と武尊は自分が暮らしていた未来の石狩平野を思い出した。
凍てつく寒さに前も見えない程の吹雪が包む北海道の冬。
そして何もない白い、白い世界。
そんな所へ斎藤さんが・・・。
「どうして!何でそんな話を受けたんですか!何で斎藤さんが飛ばされないといけないんですか!海軍将校を殺ったのは私です、密輸武器の場所に気が付いたのも私です!(奴らが)私に恨みがあるなら私を首にして終わりにすればいいじゃないですか!(どうせもう首だけど。)」
と、武尊は悔しくて斎藤に憤った。
「俺は責任を部下に押し付けるつもりはない。俺自身の正義の為に動いた結果がこうなっただけだ。」
「でも・・・。」
武尊は納得がいかなくて、斎藤に申し訳なくて、
目からまた水滴が、ぽろり、ぽろりとこぼれた。
(ああ・・・斎藤さんの前では泣かないようにってあれほど自分に言い聞かせたのに・・・。)
「くっ・・。」
それでも歯を喰いしばって声を抑えている武尊に斎藤は両腕を差し出してそっと武尊を抱きしめた。
「!」
「俺も今は只の官憲だからな・・・命令が下れば従うしかない。それに開拓使が問題が山積みと言うのは本当のようだからな。」
斉藤は腕の中で肩を震わせている武尊に穏やかな声でそう言った。
「・・・・・ごめんなさい。」
「武尊の所為じゃないと言っただろ。」
「・・・んくっ、・・・・っく・・。」
斉藤は嗚咽をこらえている武尊の髪をくしゃりと撫でてやった。
「それに何処に行こうが社会のダニはいるもんだ。そういった輩を一つ一つ潰していくのが俺が警察にいる理由だ、分かるな武尊。」
「うん・・・。」
さらに頭を撫でられようやく武尊は顔をあげた。
斉藤は武尊の顔を見てふっと笑うと、
「ただ・・・お前に会えなくなるのが正直辛い。」
と言った。
それを聞いて止まりかけていた武尊の涙がまたポロリポロリと落ちていく。
何か言葉を出したいけれども何も喉から出てこない。
斉藤はもう一度武尊の頭を撫でてやると机に戻った。
そして書類をパラリとめくり始めた。
それを見て武尊が斎藤の方へ近づき机の前でこう言った。
「斎藤さん・・・何か仕事はありませんか。何でもいいです。・・・何かさせてください、斎藤さんの手伝いがしたいんです。」
斎藤は、泣いているのにその眼に強い意志の光を放つ武尊を見て目を細め、引き出しから別の書類を出した。
「ではこれの写しを頼む。向こうにはこういった資料はまだまだ少ないそうだ。」
「これは?」
「薬物についての資料だ。使用した薬物によって出る詳細な症状まで書いてある。」
手渡された資料を武尊がパラパラめくって見ると、時折挿絵も入っている薄手のものだった。
「わかりました。」
と、武尊は向こうの机で硯と筆を準備し静かに写し始めた。
2014.1.13
斎藤と二人きりの部屋。
武尊は吸い寄せられるように窓辺に行き、空を見上げた。
特に何を見たいわけではなかったが武尊は空を仰いで流れて行く雲をぼんやりと目に映していた。
すると斎藤が、
「やられたかもな・・・。」
とぼそっと呟いた。
武尊は『え?』と思いながら斎藤を振り返った。
斉藤は武尊の顔を見ながら、
「今回の異動、若しかしたら仕組まれた物かもしれん。」
と言った。
「・・どういう事?」
「疑いだせば切りがないが、この時期の異動にしてはあまりにも急な話だ。別に俺にさせたい仕事があるならそれを命じるだけで足りるはずだ。」
「確かに・・・。」
「どうやら向こうは俺が東京にいるのが邪魔なんだろう。」
「ちょっと待ってください、それってやっぱり相手は政府の中にいるって事ですか?!」
「政府の中にいるのか、政治家に顔が聞く奴かは分からんがな。」
「そんな!今回の武器だって一部が政府高官が集う夜会を襲撃するために使われたんですよ、それを阻止した斎藤さんがお払い箱になるなら誰がみんなを守るっていうんですか!・・・って私の所為・・・。」
武尊ははっとした。
若し自分が密輸武器の事なんか放っておけば、気が付かなければ斎藤が北海道へ飛ばされるってことなんか起きなかったと。
「私の所為だ・・・私が変な事にこだわらなければ・・・ごめんなさい、斎藤さん・・・。」
後悔よりも悔しくて武尊の声が震える。
「あくまでも仮説だ武尊。武尊が気にすることではない。それにたとえそうだったとしても実際に指示をして密輸武器を海に沈めたのは俺と張だ。」
「でもっ!」
「もう決まった話だ。」
武尊はショックだった。
斉藤は仮説というが、自分達が密輸武器を海に沈めてしまったということは紛れもない事実で、となると当然大枚をはたいて買った側は面白くないに決まっている。
そしてそのつけが川路や斎藤に来たというのは十分に考えられるからだ。
(確かこの時代はまだ北海道は原野だ・・・雪の少ない函館ならまだしも、札幌なんか・・・。)
と武尊は自分が暮らしていた未来の石狩平野を思い出した。
凍てつく寒さに前も見えない程の吹雪が包む北海道の冬。
そして何もない白い、白い世界。
そんな所へ斎藤さんが・・・。
「どうして!何でそんな話を受けたんですか!何で斎藤さんが飛ばされないといけないんですか!海軍将校を殺ったのは私です、密輸武器の場所に気が付いたのも私です!(奴らが)私に恨みがあるなら私を首にして終わりにすればいいじゃないですか!(どうせもう首だけど。)」
と、武尊は悔しくて斎藤に憤った。
「俺は責任を部下に押し付けるつもりはない。俺自身の正義の為に動いた結果がこうなっただけだ。」
「でも・・・。」
武尊は納得がいかなくて、斎藤に申し訳なくて、
目からまた水滴が、ぽろり、ぽろりとこぼれた。
(ああ・・・斎藤さんの前では泣かないようにってあれほど自分に言い聞かせたのに・・・。)
「くっ・・。」
それでも歯を喰いしばって声を抑えている武尊に斎藤は両腕を差し出してそっと武尊を抱きしめた。
「!」
「俺も今は只の官憲だからな・・・命令が下れば従うしかない。それに開拓使が問題が山積みと言うのは本当のようだからな。」
斉藤は腕の中で肩を震わせている武尊に穏やかな声でそう言った。
「・・・・・ごめんなさい。」
「武尊の所為じゃないと言っただろ。」
「・・・んくっ、・・・・っく・・。」
斉藤は嗚咽をこらえている武尊の髪をくしゃりと撫でてやった。
「それに何処に行こうが社会のダニはいるもんだ。そういった輩を一つ一つ潰していくのが俺が警察にいる理由だ、分かるな武尊。」
「うん・・・。」
さらに頭を撫でられようやく武尊は顔をあげた。
斉藤は武尊の顔を見てふっと笑うと、
「ただ・・・お前に会えなくなるのが正直辛い。」
と言った。
それを聞いて止まりかけていた武尊の涙がまたポロリポロリと落ちていく。
何か言葉を出したいけれども何も喉から出てこない。
斉藤はもう一度武尊の頭を撫でてやると机に戻った。
そして書類をパラリとめくり始めた。
それを見て武尊が斎藤の方へ近づき机の前でこう言った。
「斎藤さん・・・何か仕事はありませんか。何でもいいです。・・・何かさせてください、斎藤さんの手伝いがしたいんです。」
斎藤は、泣いているのにその眼に強い意志の光を放つ武尊を見て目を細め、引き出しから別の書類を出した。
「ではこれの写しを頼む。向こうにはこういった資料はまだまだ少ないそうだ。」
「これは?」
「薬物についての資料だ。使用した薬物によって出る詳細な症状まで書いてある。」
手渡された資料を武尊がパラパラめくって見ると、時折挿絵も入っている薄手のものだった。
「わかりました。」
と、武尊は向こうの机で硯と筆を準備し静かに写し始めた。
2014.1.13