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127.張の宣戦布告 (斎藤・夢主・張)
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斎藤が再び煙草に火を点けしばらく書類を見ていると二人が帰って来た。
(ん?)
先程とは違って和気あいあいと帰って来た二人を斎藤はいぶかしげに見た。
「斎藤さん、洗濯終わりました。」
と武尊が言うと張が、
「せや、小田原から蒲鉾買ってきたんやった。旦那も武尊も食べへんか。」
とソファーに置きっぱなしだった蒲鉾の包の紐を持ち上げて言った。
「あ、食べる!斎藤さんも食べるよね。私、下で切って来るね。」
と、武尊は張から包を受け取ると部屋を出てった。
斉藤は武尊が部屋を出ると張に、
「・・どうやって機嫌を取った。」
「別に。下で武尊に・・・ごっつう怒られたわ。」
「当たり前だ。戻って来た時武尊が泣いている様だったら・・どうなっていたか分かっているだろうな。」
「分かってまんねん!勘弁や旦那。わいやって武尊の涙なんか見とうないわ。」
「フン、これに懲りて勝手な推測はせんことだ。」
「推測言うたって旦那!武尊をほんまどないするつもりや。旦那がもらわんなら・・・わいがもらうで。」
といきなりの宣戦布告に斎藤の眼が一瞬見開いた。
やたらに武尊にちょっかいを出していると思っていたらそれほど武尊を好いているのか、と、苦々しく思いながらよく武尊の本命を目の前にしてそんな口がきけると呆れながら、
「阿呆が、お前なんか武尊の眼中にもない。」
と言うと、張はそれでも、
「わかってんねんそんな事は。せやけど女ちゅうのは大事に扱こうとけばそのうちに情ちゅうもんが移ってくるちゅうもんや。わいは一生武尊を大事にしてみせんねん。嫁さん怖くて女の一人も世話できん甲斐性なしの男に武尊はやれんわ。」
と斎藤にがんをとばした。
斉藤も売られた喧嘩なら買ってやろうかと張を睨んだ。
カチャ。
戻って来た武尊に構うことなく二人は睨み合っている。
すぐに部屋の空気の異変に気が付いた武尊は二人の間に入り込むと、
「もう、どうしていつもそうなの!同じ仕事する仲間なんだからそんなに睨み合わない!」
と言いながら武尊は楊枝に刺した切った蒲鉾を斎藤の口に持っていった。
斎藤はむっとしながらも口を開けたので武尊は一つ口に入れた。
そして次に張の口へ持っていくと張は大きな口を開けて武尊が一切れ入れてくれるのを待った。
「武尊に食べさせてもらえるなんてめっちゃ幸せやな、わい。」
と顔を崩しまくって喜んだ。
武尊は張の口にも蒲鉾を入れるとその後に自分も人斬れ口に入れ、
「ん、おいしいね。」
と、にこッと笑った。
「そやろ?わいもこの店のが一番美味いと思うて買ってきたんや。」
武尊に喜んでもらえて張は土産屋が連なっていた通りの様子を面白可笑しく武尊に聞かせてやったのであった。
蒲鉾はすぐになくなり(武尊が一番たくさん食べた)、斎藤が、
「張、蒲鉾よりも大事な事があるんじゃないのか。」
と突っ込んだ。
「もちろんそうや。」
「そうそう小田原の伊藤卿ってどうだったの。」
「そ、それが・・。」
と、張の歯切れが突然悪くなった。
「ええ感じで伊藤を二人っきりになったまではよかったんやけど結局はぐらかされて何も聞けんかった。」
斉藤は見下すような視線で張を見ながら、
「お前の報告は全く要点がわからん。聞けなかった事は聞けなかった事として何か掴んだところはないのか。平田の事は何て言ってたんだ。」
と言った。
武尊はなるほどと思いながら斎藤と張を見ていた。
「平田の毒殺の件は伊藤が平田を殺れと言ったことについては『有り得ん。』と言っとった。わいがこの耳で平田の言葉を聞いたちゅうてもや。ほんで武器密輸もあんたが絡んどんやろって聞いたんやけどこっちもあかんかった。」
「だめなのはお前の方だ、阿呆が。それでお前の身元が警視庁の密偵であると伊藤に分かってしまったな。密偵が自分達の動きを動きにくくしてどうする。ちっ・・・相手が相手だけにやりにくくなったな・・・。」
と、斎藤はますます眉間を寄せて煙草の煙をを吸いこんだ。
すると張が、
「旦那・・伊藤が妙な事言うとったで。」
斎藤がそれは何だと言う顔で張を見ると、張は、
「この件についてはもう旦那は調べる権利はないんやちゅうとったで。あ、川路もやった。これはどういう意味なんや。」
と言った。
「・・・。」
斎藤は黙って煙草をふかし、そしてその視線をちらっと武尊に送った。
北海道への赴任・・・・。
今この場所で、このタイミングでその事を言わねばならなくなった事を斎藤は少しだけ・・・少しだけためらった。
余談雑談:
実は川路は【大警視】(現在の警視総監)の他に【陸軍少将】の階級も持ってます。
明治10年の西南戦争時、警察も【警視隊】というのを作って別働第三旅団として官軍の勢力として参加しました。
川路はその旅団長(司令官)として途中まで指揮をとりました。
激戦地【田原坂の戦い】では西郷軍の抜刀隊に対抗するために警視隊の中から剣術に優れたものを選び同じく抜刀隊を作り戦果を挙げました。
戊辰戦争で近代戦を用い勝利を収めたということで明治政府は剣術を軽視する傾向にあったそうですが西南戦争で剣術が有効であることがわかり、剣術・柔術は見直されるようになりました。
川路は『撃剣再興論』というのを著し、明治12年の訓示で、
「・・武術を知らぬ警察官ほど物足りないものはあるまい。何となれば、有事の際に一人前以上の腕力があって凶徒を制圧し得てこそ国民信頼の警察官である。その力の足りない人は何をおいても武術を錬ることが肝心、私も若い時から武術をやっているが、警察武術というものを打建てねばならぬと考えている・・・」
と言ってます。
あ、斎藤さんも【別働第三旅団豊後口警視徴募隊二番小隊半隊長】として西南戦争に参加してます。(ちょっと負傷してしまいましたが・・。)
ああ、どうしてこんな話になったんだろう?
と思いましたら、そうそう、洗濯物の話からでした。
もちろん、明治の警視庁の敷地、建物の見取り図なんてどこを探してもわかりませんでしたので、物干し場があったり、井戸があったりしたのは私の妄想ですが、そういう理由からあってもいいな・・と、思ったのがこれを書いた理由です。
(ん?)
先程とは違って和気あいあいと帰って来た二人を斎藤はいぶかしげに見た。
「斎藤さん、洗濯終わりました。」
と武尊が言うと張が、
「せや、小田原から蒲鉾買ってきたんやった。旦那も武尊も食べへんか。」
とソファーに置きっぱなしだった蒲鉾の包の紐を持ち上げて言った。
「あ、食べる!斎藤さんも食べるよね。私、下で切って来るね。」
と、武尊は張から包を受け取ると部屋を出てった。
斉藤は武尊が部屋を出ると張に、
「・・どうやって機嫌を取った。」
「別に。下で武尊に・・・ごっつう怒られたわ。」
「当たり前だ。戻って来た時武尊が泣いている様だったら・・どうなっていたか分かっているだろうな。」
「分かってまんねん!勘弁や旦那。わいやって武尊の涙なんか見とうないわ。」
「フン、これに懲りて勝手な推測はせんことだ。」
「推測言うたって旦那!武尊をほんまどないするつもりや。旦那がもらわんなら・・・わいがもらうで。」
といきなりの宣戦布告に斎藤の眼が一瞬見開いた。
やたらに武尊にちょっかいを出していると思っていたらそれほど武尊を好いているのか、と、苦々しく思いながらよく武尊の本命を目の前にしてそんな口がきけると呆れながら、
「阿呆が、お前なんか武尊の眼中にもない。」
と言うと、張はそれでも、
「わかってんねんそんな事は。せやけど女ちゅうのは大事に扱こうとけばそのうちに情ちゅうもんが移ってくるちゅうもんや。わいは一生武尊を大事にしてみせんねん。嫁さん怖くて女の一人も世話できん甲斐性なしの男に武尊はやれんわ。」
と斎藤にがんをとばした。
斉藤も売られた喧嘩なら買ってやろうかと張を睨んだ。
カチャ。
戻って来た武尊に構うことなく二人は睨み合っている。
すぐに部屋の空気の異変に気が付いた武尊は二人の間に入り込むと、
「もう、どうしていつもそうなの!同じ仕事する仲間なんだからそんなに睨み合わない!」
と言いながら武尊は楊枝に刺した切った蒲鉾を斎藤の口に持っていった。
斎藤はむっとしながらも口を開けたので武尊は一つ口に入れた。
そして次に張の口へ持っていくと張は大きな口を開けて武尊が一切れ入れてくれるのを待った。
「武尊に食べさせてもらえるなんてめっちゃ幸せやな、わい。」
と顔を崩しまくって喜んだ。
武尊は張の口にも蒲鉾を入れるとその後に自分も人斬れ口に入れ、
「ん、おいしいね。」
と、にこッと笑った。
「そやろ?わいもこの店のが一番美味いと思うて買ってきたんや。」
武尊に喜んでもらえて張は土産屋が連なっていた通りの様子を面白可笑しく武尊に聞かせてやったのであった。
蒲鉾はすぐになくなり(武尊が一番たくさん食べた)、斎藤が、
「張、蒲鉾よりも大事な事があるんじゃないのか。」
と突っ込んだ。
「もちろんそうや。」
「そうそう小田原の伊藤卿ってどうだったの。」
「そ、それが・・。」
と、張の歯切れが突然悪くなった。
「ええ感じで伊藤を二人っきりになったまではよかったんやけど結局はぐらかされて何も聞けんかった。」
斉藤は見下すような視線で張を見ながら、
「お前の報告は全く要点がわからん。聞けなかった事は聞けなかった事として何か掴んだところはないのか。平田の事は何て言ってたんだ。」
と言った。
武尊はなるほどと思いながら斎藤と張を見ていた。
「平田の毒殺の件は伊藤が平田を殺れと言ったことについては『有り得ん。』と言っとった。わいがこの耳で平田の言葉を聞いたちゅうてもや。ほんで武器密輸もあんたが絡んどんやろって聞いたんやけどこっちもあかんかった。」
「だめなのはお前の方だ、阿呆が。それでお前の身元が警視庁の密偵であると伊藤に分かってしまったな。密偵が自分達の動きを動きにくくしてどうする。ちっ・・・相手が相手だけにやりにくくなったな・・・。」
と、斎藤はますます眉間を寄せて煙草の煙をを吸いこんだ。
すると張が、
「旦那・・伊藤が妙な事言うとったで。」
斎藤がそれは何だと言う顔で張を見ると、張は、
「この件についてはもう旦那は調べる権利はないんやちゅうとったで。あ、川路もやった。これはどういう意味なんや。」
と言った。
「・・・。」
斎藤は黙って煙草をふかし、そしてその視線をちらっと武尊に送った。
北海道への赴任・・・・。
今この場所で、このタイミングでその事を言わねばならなくなった事を斎藤は少しだけ・・・少しだけためらった。
余談雑談:
実は川路は【大警視】(現在の警視総監)の他に【陸軍少将】の階級も持ってます。
明治10年の西南戦争時、警察も【警視隊】というのを作って別働第三旅団として官軍の勢力として参加しました。
川路はその旅団長(司令官)として途中まで指揮をとりました。
激戦地【田原坂の戦い】では西郷軍の抜刀隊に対抗するために警視隊の中から剣術に優れたものを選び同じく抜刀隊を作り戦果を挙げました。
戊辰戦争で近代戦を用い勝利を収めたということで明治政府は剣術を軽視する傾向にあったそうですが西南戦争で剣術が有効であることがわかり、剣術・柔術は見直されるようになりました。
川路は『撃剣再興論』というのを著し、明治12年の訓示で、
「・・武術を知らぬ警察官ほど物足りないものはあるまい。何となれば、有事の際に一人前以上の腕力があって凶徒を制圧し得てこそ国民信頼の警察官である。その力の足りない人は何をおいても武術を錬ることが肝心、私も若い時から武術をやっているが、警察武術というものを打建てねばならぬと考えている・・・」
と言ってます。
あ、斎藤さんも【別働第三旅団豊後口警視徴募隊二番小隊半隊長】として西南戦争に参加してます。(ちょっと負傷してしまいましたが・・。)
ああ、どうしてこんな話になったんだろう?
と思いましたら、そうそう、洗濯物の話からでした。
もちろん、明治の警視庁の敷地、建物の見取り図なんてどこを探してもわかりませんでしたので、物干し場があったり、井戸があったりしたのは私の妄想ですが、そういう理由からあってもいいな・・と、思ったのがこれを書いた理由です。