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127.張の宣戦布告 (斎藤・夢主・張)
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「もう!斎藤さんの前で何てこと言うの!」
いくら自分の背中の傷を『斎藤が付けた』というのが嘘の芝居だったにしろ、まさか張がその様なことを言いだすなんて武尊は思ってもいなかった。
そして斎藤も言葉を失って一瞬煙草を吸うのも忘れて固まったのを武尊は見てしまった。
(斎藤さんは困っていた・・・。)
武尊は斎藤の反応をそう受け取って悲しくなったと同時に何故か一昨日夜、斎藤が武尊に言った
『俺は武尊が何であろうと愛している!』
という言葉が武尊の頭の中に思い出された。
愛し愛されても結ばれる事はかなわない現実。
武尊にとって張の言葉は叶わぬ夢の果ての言葉だった。
だからンあはその悲しみを怒りの感情にすり替えて張を睨んだ。
「何今更照れとんや、二人ともそういう仲なんちゃうんか。武尊ももう二十五やで、よく自分の歳考えてみい、この機会に旦那にもらってもらった方がええんやないか。わいは武尊の為思うて・・。」
「誰がそんな事お願いしたの!」
と、武尊が張の言葉に噛みついた。
自分には叶わない夢。
願ってはいけない夢。
斉藤の心にふれる度に自分を制して心に念じているのに。
そんな自分の心の鍵を張は更に叩き壊そうとする。
だが武尊の反論に張も引かなかった。
「わいは真面目や。てっきり『実はもう結納終わらせました。』ぐらいの返事が返って来よると思うとったのに。」
「そんなわけないじゃない!何言ってるの、斎藤さんはすでに他の人と結婚してるんだよ。」
「それがどないしたっちゅーんや、あんたらそんな軽い気持ちで付き合っとんか、旦那も好きな女にそないな傷つけといて責任取らんちゅう・・。」
「私はこの傷で自分が傷物になったなんて思ってなーい!」
所詮この身は人斬りの罪で穢れた身。だから顔の三本傷だって、背中の傷だって、関係ない!
武尊にとって己の肉体の傷痕なんてどうでもよかった。
武尊はそう叫ぶと、洗面器を落として張の胸倉を掴んだ。
張は武尊の勢いに驚いて目を見開いた。
ハアハア言いながら武尊は張を上目使いに睨んで言った。
「それに・・・私は斎藤さんとの結婚なんか望んでない・・・。斎藤さんには素敵な奥さんがいる・・・勝手な事言わないで!それ以上言うと張でも許さないから。」
武尊と張は互いの眼を見ていた。
武尊はすべての感情を張にぶつけていた。
張は武尊の怒りの裏にある悲しい気持ちをその眼からやっと理解した。
「・・・すまん。」
張が謝ると、武尊は張の襟を握った手を震わせてゆっくり手を離した。
武尊は張の謝罪の言葉を聞くと張っていた気がようやく弛んだ。
そして少しだけ冷静になった。
事態は張が勝手にどう言おうと変わらないのだから・・・と。
この想いはどうにもならなく、心の宝箱にずっとしまっておくしかないんだから。
そう考えると、張にこれ以上あたってもどうしようもなく、張だっていつものお調子乗りで言ったに過ぎないんだからと武尊は思った。
「・・・もう、いつも早やとちりなんだから・・・、気を付けなよ・・。」
武尊はそう言うと落ちた洗面器と飛び散った包帯を拾い、井戸の釣瓶を落とした。
滑車の乾いた音の後に水の音がした。
武尊が縄を引っ張ろうとすると張は武尊の手に自分の手を重ねた。
武尊驚いて後ろを振り返った。
「傷、痛むやろ・・わいにも手伝わせてえな。」
張はにっと笑いながら武尊を見た。
「ありがとう。」
武尊も笑って張の申し出を受け入れた。
いくら自分の背中の傷を『斎藤が付けた』というのが嘘の芝居だったにしろ、まさか張がその様なことを言いだすなんて武尊は思ってもいなかった。
そして斎藤も言葉を失って一瞬煙草を吸うのも忘れて固まったのを武尊は見てしまった。
(斎藤さんは困っていた・・・。)
武尊は斎藤の反応をそう受け取って悲しくなったと同時に何故か一昨日夜、斎藤が武尊に言った
『俺は武尊が何であろうと愛している!』
という言葉が武尊の頭の中に思い出された。
愛し愛されても結ばれる事はかなわない現実。
武尊にとって張の言葉は叶わぬ夢の果ての言葉だった。
だからンあはその悲しみを怒りの感情にすり替えて張を睨んだ。
「何今更照れとんや、二人ともそういう仲なんちゃうんか。武尊ももう二十五やで、よく自分の歳考えてみい、この機会に旦那にもらってもらった方がええんやないか。わいは武尊の為思うて・・。」
「誰がそんな事お願いしたの!」
と、武尊が張の言葉に噛みついた。
自分には叶わない夢。
願ってはいけない夢。
斉藤の心にふれる度に自分を制して心に念じているのに。
そんな自分の心の鍵を張は更に叩き壊そうとする。
だが武尊の反論に張も引かなかった。
「わいは真面目や。てっきり『実はもう結納終わらせました。』ぐらいの返事が返って来よると思うとったのに。」
「そんなわけないじゃない!何言ってるの、斎藤さんはすでに他の人と結婚してるんだよ。」
「それがどないしたっちゅーんや、あんたらそんな軽い気持ちで付き合っとんか、旦那も好きな女にそないな傷つけといて責任取らんちゅう・・。」
「私はこの傷で自分が傷物になったなんて思ってなーい!」
所詮この身は人斬りの罪で穢れた身。だから顔の三本傷だって、背中の傷だって、関係ない!
武尊にとって己の肉体の傷痕なんてどうでもよかった。
武尊はそう叫ぶと、洗面器を落として張の胸倉を掴んだ。
張は武尊の勢いに驚いて目を見開いた。
ハアハア言いながら武尊は張を上目使いに睨んで言った。
「それに・・・私は斎藤さんとの結婚なんか望んでない・・・。斎藤さんには素敵な奥さんがいる・・・勝手な事言わないで!それ以上言うと張でも許さないから。」
武尊と張は互いの眼を見ていた。
武尊はすべての感情を張にぶつけていた。
張は武尊の怒りの裏にある悲しい気持ちをその眼からやっと理解した。
「・・・すまん。」
張が謝ると、武尊は張の襟を握った手を震わせてゆっくり手を離した。
武尊は張の謝罪の言葉を聞くと張っていた気がようやく弛んだ。
そして少しだけ冷静になった。
事態は張が勝手にどう言おうと変わらないのだから・・・と。
この想いはどうにもならなく、心の宝箱にずっとしまっておくしかないんだから。
そう考えると、張にこれ以上あたってもどうしようもなく、張だっていつものお調子乗りで言ったに過ぎないんだからと武尊は思った。
「・・・もう、いつも早やとちりなんだから・・・、気を付けなよ・・。」
武尊はそう言うと落ちた洗面器と飛び散った包帯を拾い、井戸の釣瓶を落とした。
滑車の乾いた音の後に水の音がした。
武尊が縄を引っ張ろうとすると張は武尊の手に自分の手を重ねた。
武尊驚いて後ろを振り返った。
「傷、痛むやろ・・わいにも手伝わせてえな。」
張はにっと笑いながら武尊を見た。
「ありがとう。」
武尊も笑って張の申し出を受け入れた。