「武尊。」



斎藤は担いでいた武尊をベッドに下ろした。



武尊の尻は真っ赤になって熱を持っていた。



武尊はうつ伏せに寝かされたままぐったりしてもはや足をバタつかせる元気もなかった。



斎藤は武尊の横に腰かけると顔を自分の方に向けた。



涙にぬれた武尊の瞳。



「もういいの？」



武尊の声は小さかった。



「まだ叩かれ足りないのか？」



「まさか・・・でも嫌だって言ってもやめてくれないじゃない。だから言うのやめたの。」



「今なら逃げてもいいんだぞ。」



「冗談でしょ、こんな格好で外に出ろと？それに逃がす気があるならわざわざこんな所まで来てこんな事しないでしょ。」



「そうだな・・・逃がす気はないな。」



「じゃあ・・・・・・・・・・・



　　　　・・・・・・・・・・・・・・・・・優しくしてよ！」



そう言った武尊の目から止まっていた涙があふれ始めた。



「優しくしてくれるならどんなにお尻を叩いたっていい・・・拘束されたっていい・・・怖いよ斎藤さん・・・。」



と、武尊はぽろぽろと涙をこぼした。



「昨晩帰らなかったのはごめんなさい・・でもやっぱり時尾さんと二人っきりにさせたかったの、【藤田五郎】という人の転勤だもの・・。」



「・・・そうか、すまなかったな。俺は武尊が張と四乃森がいる所にいる事自体が許せなかったんだ。武尊にその気がなくともあいつらがその気になれば今の俺のように力ずくで武尊を襲えるからな。」



斎藤はやっと武尊の気持ちに折れた。



分かってはいたのだ、武尊が自分達【藤田夫婦】の事を思って行動していたことは。




「・・・。」
「・・・。」



武尊は真っ直ぐな瞳で斎藤を見た。



斎藤もまたいつもの武尊だけに優しい眼に戻って武尊を見つめた。



普通の雑魚なら手出しされようものなら倍返しどころか１００倍返しぐらいにしてやると、またそれくらいの事は出来ると武尊は自信を持っている。



だけど蒼紫や張は今は武尊にとっては友人、反撃するのにきっと自分は躊躇してしまう。



それだけではなく二人とも格闘技に置いて自分より腕がある、斎藤の言うとおり若しもあの二人がその気になったら自分ではかなわないだろう。



万が一にもそんなことはあの二人に限ってないと武尊は信じていたが男の斎藤には男と言うものがどういうものか良く分かる。



武尊という存在は自分で言うのもなんだが培った理性なんてどうでも良いと思わせてしまうほど魅力があるのだ。



武尊に惚れた男として武尊に絶対手出しはさせたくはなかったのだ。



武尊も実際斎藤に力ずくで抑え込まれたら手も足も出ないという事を実感させられて自分をそこまで心配して帰って来いと言ってくれた気持ちにようやく気が付いた。