「それは時尾さんと斎藤さんが暫く会えなくなるからです！居候でしかも女の私が家に居たら、その・・やっぱり気を使うじゃないですか・・・斎藤さんはいいかもしれませんが時尾さんは気にすると思います、御夫婦のお邪魔はしたくなかったんです！」



「勘違いするなよ武尊、武尊が居ようが居まいが俺は時尾を抱いている。実際この一か月間に武尊が居る時も何度な。邪魔になんかなるか。それより武尊と最後の夜を三人で過ごそうと言っていた時尾や俺の気持ちを考えろ。」



（そんなにはっきり【抱いた】って・・・聞いたこっちが恥ずかしくなるって・・・でもいったいいつやってたんだろ・・。）



そんな突っ込みはともかく、自分の考えはちょっと浅はかだったのか？と武尊は自分の行動を早合点したかと思ったがやっぱり昨晩は二人っきりにさせてあげたかったんだ、それが自分の気持ちだと武尊は思った。



武尊が何も言えずに黙っていると、



「まあいい、だが今後は素直にさせる必要がある。」



と斎藤は言った。



「素直にって・・・私はいつも斎藤さんには素直だと思ってますが。」



とって付けたような斎藤の言葉尻に武尊は斎藤が本気でそんな事を言っているのかと顔をあげて斎藤の眼を見た。



（いや・・斎藤さんにしては無理やりこじつけた理由みたいな気がする。）



しかし自分を抱こうとしているのは本気だとそれだけは伝わってくる。



それよりもどうして時尾さんと二人きりの時間を取って欲しかったという自分の気持ちを分かってもらえないんだろうと武尊は思った。



そしてつい・・・



「そんな分からず屋の斎藤さんは・・・嫌いだ・・・。」



武尊は自分でも無意識のうちに言葉が口にでてはっとした。



（嫌いじゃない、大好きなのに・・・。）



どうしてそんなことを口走ってしまったのか、慌てて心の中で訂正するがそれを口に出す雰囲気ではなくそのまま言えずにいた。



ポーカーフェイスをを装ってはいるが微妙な斎藤の表情の変化を武尊は感じ取った。



斎藤は冷静に、そしてゆっくりと口角を上げて言った。



「上等だ・・・上司にそんな言葉が吐けないようにしっかりと体に教え込んでやる。」



武尊の手が斎藤から逃げようと魚の様にもがこうとした。



武尊の本能が瞬時当てられた殺気にも似た気に反応したからだ。



「くっ。」



空いているもう片方の手で斎藤の手を引きはがそうとした武尊だったがびくともせず逆にもう片方の手まで斎藤に抑え込まれてしまった。



身動きが取れなくなって武尊は、



「こんなやり方は好きじゃない！」



と抗議した。



「・・・上司に対して反抗的な目だ。」



「狡い！力でかなうわけないじゃない！」



「これが現実というものだ。警官は・・密偵は特に命令に絶対服従・・最初に教えなかったか？」



「無理やりやって楽しいの？！」



「減らず口はもういいか？躾時間だ・・・覚悟はいいな。」



「い・や・だ！」



話が噛み合わない会話。



だが斎藤はそれを気にすることなく行為を達成しようと行動に出た。