喫煙車両はおっさんが・・仕事か道楽か分からないが男ばかりでむさくるしく詰まっていた。



そしてたまたまなのだろうか、武尊と斎藤がのった客車は思ったよりも空いていて、二人掛けの椅子に向かい合う様に武尊を斎藤は座った。



「なんか制服で乗るのって変・・・。」



と呟く違和感一杯の武尊に対して斎藤は全然そんな事は感じないらしい。



（まあね・・・警官にしろ軍人にしろ制服って国家権力の象徴の一部だからこの時代は気にならないのかな？）



なんて思いつつも武尊は動き出した車窓に釘づけだった。










出発して物珍しそうに外を見ていた武尊だったが昨晩の睡眠時間が少なかった所為か汽車の心地よい振動にいつしか目を閉じて眠ってしまった。



そんな武尊を斎藤はじっと見ていた。



斎藤のほうこそ昨晩の睡眠時間は一時間にも満たないものだったが、これから己が行おうとする事を考えると眠気など寄せ付けない程に脳が覚醒する。



（このあどけない寝顔が・・・。）



食い入るように武尊の寝顔を見ていた斎藤だったが少し罪悪感を感じたのか、視線を外へ移し遠くを眺めていた。