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121.九月三十日夜(小田原の影、そして神谷道場)(伊藤卿、剣心、薫、左之助、操、弥彦、蒼紫)
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「伊藤卿、大丈夫でしたか。」
張が歯ぎしりしながら退散した後、伊藤の部屋の奥から声がした。
「折角よい女とこれからいい所だったというのに、お主らも無粋な奴じゃ。」
と伊藤は襖の奥に向かって言った。
「御冗談もほどほどにしてくださいよ、あのデカ女、いや男・・・かなり腕が立つとみました。控えている方が冷や汗をかきましたよ。伊藤卿にはまだまだ健在でいてくれませんと。」
「いい加減、儂につきまとうのはやめてくれまいか。いくら宮様が御望みになられても、儂は今回のようなやり方は好かん、もう十分ではないか。儂などに言わなくとも御自分で政治の舞台にお立ちになればよいのだ宮様も。」
「宮様が未だ禁門の変により謹慎を命ぜられたことが心に深く傷ついておられるのを御承知の上でおっしゃられているなら口が過ぎますぞ、伊藤卿。ですが、内務卿である伊藤卿のお力で此度の川路大警視とその密偵斎藤の東京からの追放に御協力いただいたことは感謝しております。それから上海筋の隠ぺいにも・・。今夜はこれくらいで退散いたしますが、私が伊藤卿の御力になれることがございましたらいつでもまた御連絡くださいよ、では今後もよしなに・・・。」
と、伊藤卿との話を終えたその男は静かにその場所を離れて行った。
そして同じ宿の別の部屋に戻り、数名連れて来た部下と酒を飲んだ。
(いくら御立派な事を言っていても未だ人斬り抜刀斎のような者の助けを借りている奴が何を言う。だが伊藤卿に媚を売る日が終わるのは近い。我々は直に手に入れる・・・フフフフ・・抜刀斎に匹敵するともいえる力を持った奴をな。)
「影宮様、何か楽しい事でもおありですか?口元が緩んでますよ。」
「・・・再び我が一族がこの日本を掌中に収める日が目に見えるのだ、楽しくないわけがないであろう。」
「左様でございますね。蘭子の方は御命令通りしばらく泳がせておいてもよいのでしょうか。」
「かまわん、どうせあれは薬がなければただの器、逆に手を出して斎藤に何か嗅ぎつけられてみろ、厄介どころではなくなるからな。」
「わかりました、仰せの通りに。」
「それより全力を以て市彦を探しだすのだ。さあ、明日からまた忙しくなるぞ、今夜は飲め。」
そう言って部下に酒をふるまいながら男は頭の片隅で今まですっかり気にもしていなかった市彦の事を考えていた。
(ここ十年、十六夜丸の姿も噂もなく死んだと思って諦めていたが、今一度あの力があれば宮家が・・否、我が一族が再びこの日の本を治めるのも夢ではない。だが問題はある、あれを呼び出す薬、それがないと器があっても役には立たぬ。市彦も十六夜丸の力、使いようが分かれば分かるほど手放すはずがあるまい。市彦がもっているはずだ、あの薬を・・早く手に入れなければ。)
張が歯ぎしりしながら退散した後、伊藤の部屋の奥から声がした。
「折角よい女とこれからいい所だったというのに、お主らも無粋な奴じゃ。」
と伊藤は襖の奥に向かって言った。
「御冗談もほどほどにしてくださいよ、あのデカ女、いや男・・・かなり腕が立つとみました。控えている方が冷や汗をかきましたよ。伊藤卿にはまだまだ健在でいてくれませんと。」
「いい加減、儂につきまとうのはやめてくれまいか。いくら宮様が御望みになられても、儂は今回のようなやり方は好かん、もう十分ではないか。儂などに言わなくとも御自分で政治の舞台にお立ちになればよいのだ宮様も。」
「宮様が未だ禁門の変により謹慎を命ぜられたことが心に深く傷ついておられるのを御承知の上でおっしゃられているなら口が過ぎますぞ、伊藤卿。ですが、内務卿である伊藤卿のお力で此度の川路大警視とその密偵斎藤の東京からの追放に御協力いただいたことは感謝しております。それから上海筋の隠ぺいにも・・。今夜はこれくらいで退散いたしますが、私が伊藤卿の御力になれることがございましたらいつでもまた御連絡くださいよ、では今後もよしなに・・・。」
と、伊藤卿との話を終えたその男は静かにその場所を離れて行った。
そして同じ宿の別の部屋に戻り、数名連れて来た部下と酒を飲んだ。
(いくら御立派な事を言っていても未だ人斬り抜刀斎のような者の助けを借りている奴が何を言う。だが伊藤卿に媚を売る日が終わるのは近い。我々は直に手に入れる・・・フフフフ・・抜刀斎に匹敵するともいえる力を持った奴をな。)
「影宮様、何か楽しい事でもおありですか?口元が緩んでますよ。」
「・・・再び我が一族がこの日本を掌中に収める日が目に見えるのだ、楽しくないわけがないであろう。」
「左様でございますね。蘭子の方は御命令通りしばらく泳がせておいてもよいのでしょうか。」
「かまわん、どうせあれは薬がなければただの器、逆に手を出して斎藤に何か嗅ぎつけられてみろ、厄介どころではなくなるからな。」
「わかりました、仰せの通りに。」
「それより全力を以て市彦を探しだすのだ。さあ、明日からまた忙しくなるぞ、今夜は飲め。」
そう言って部下に酒をふるまいながら男は頭の片隅で今まですっかり気にもしていなかった市彦の事を考えていた。
(ここ十年、十六夜丸の姿も噂もなく死んだと思って諦めていたが、今一度あの力があれば宮家が・・否、我が一族が再びこの日の本を治めるのも夢ではない。だが問題はある、あれを呼び出す薬、それがないと器があっても役には立たぬ。市彦も十六夜丸の力、使いようが分かれば分かるほど手放すはずがあるまい。市彦がもっているはずだ、あの薬を・・早く手に入れなければ。)
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