丞とその彼女(11話/未完)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
遠出以降のお話 最終までの雑多メモ
丞夢の今後と終焉までのあらすじ
「バイクで遠出する」この約束は6月くらいに果たされます。
出かけ先は岐阜県
(全国で北海道の次、2番目に道の駅が多い都道府県です)
(北千住から岐阜へ入るまでのルートを、
バイク乗りの友人に考えてもらうという気合の入れっぷりでした)
1泊2日の旅行で、二人は二人の知らなかった一面に気付いたりします。
その後、東さんと絡んだり、紬と庭いじりしたり、仕事でセクハラ受けたり、色々な日常を通じて主人公と丞はゆっくりと愛を育てていきます。
転機が訪れるのはその年の年末でした。
実家に帰る予定を話す丞を主人公は複雑な表情をして見ていました。
その表情の違和感に丞は気付くようにはなっていましたが、
本音までは分かりません。
もやもやとした不透明さを抱えて、寮の大掃除をしていました。
とりあえず地元へ一緒に帰る約束はしていたので(もちろん紬も)
丞の車に乗せてもらうべく、約束の時間に主人公は寮を訊ねます。
しかし運が悪く、丞といづみとの会話を聞いてしまいます。
「監督もついてくるか?…なんてな、冗談だ。良いお年を。」
主人公はもちろん冗談だと分かっている。
けれど、以前丞より聞いていた、いづみの家族の事情と自分とを比べてしまうのです。まだ、丞には明かせていない、自分の苦しみとを。
「いづみさんと一緒に帰るなら、私は…いいかな。実家にも別に帰らなきゃいけないってわけじゃないから」
言った後で後悔してもどうする事も出来ません。
自分の家の事情といづみの事情とを比較したこと、家には招かれていない自分と彼女とを比べ劣等感を抱いたこと、どちらもただの八つ当たりでしかありません。
ハッとなり謝ろうと口を開きますが、丞の少し苛立った表情と言葉に、売り言葉に買い言葉で言い合いとなります。
その場は紬がうまく納めて3人で地元へ帰る事となりました。
しかし道中でも丞はいづみの家庭事情を慮り、主人公の発言には心がなかったと苦言を呈します。
「なにも……知らないくせに…」
泣きながら主人公は車を降りて走り出します。紬が追うように急かしても、丞は見て見ぬふりでそのまま自宅の方へと車を走らせるのでした。
丞は本当は主人公を自宅に招くつもりでした。
けれど結局タイミングを逃し、いつも通りの正月を家族と迎えます。
彼女がいる事をしっている丞の家族は「なぜ連れてこないのか」「今からでも連れてきたらいい」と彼をからかいます。
「実家に帰りたくない様子だったんだろう?何か事情があるんじゃないのか」家族のその言葉に丞は違和感を思い出します。
「(帰省の話をした時に感じた違和感……エリカは、もしかして実家に帰りたくなかったのか)」と。
急ぎ車を出し、彼女の実家へと向かいますが、そこに彼女はいないようでした。疑問に思いながらも、思いつく居場所、彼女のアパートまで戻ります。
渡されていたカギでドアを開けると、勢い強く冬の風が流れ込んできました。
窓が、開いている。こんな冬の日に。
不審に思った丞は急ぎ部屋の中へと入ると、真冬に窓を開け放し、テーブルに突っ伏し頬を寄せる彼女の姿を見て、血の気が引きます。
急ぎ抱き起した彼女の顔は涙で赤くなり、頬は腫れあがっていました。
触ると痛むらしいそこは、口の中が切れて血が出ているようです。
「…顔は商売道具の一つだから…冷やしてたの。窓を閉めないで」
「は!?」
自分を顧みない彼女の言動も行動も、丞には理解が出来ません。
とりあえず冷蔵庫からアイスパックを取り出し、氷嚢の代わりとすることで窓を閉め、部屋をあたためます。その間、彼女をずっと背中から抱きしめるように囲っていたのですが、二人とも、無言でした。
しばらくして、とうとう彼女は言葉を発します。
ぽつりぽつりと話し出すそれは、彼女の家庭事情でした。
いわゆる機能不全家族の中で育った彼女。
低い自己肯定感と周囲に怯える毎日…。
いづみとの件で言い争いとなった理由。
あってないようなその「家」に、帰りたくない事情を丞は知ります。
そんな環境から抜け出したいと思えたのは、学生の時の丞と出会っていたから。たとえ隣に並ぶなんてことはできなくても、何か一つ共通するものの中でつながっていたい。自分を変えていきたい。
そう思えたのはあなたがいたからなのだと、主人公は涙ながらに自分の思いを吐露します。
ずっと伝えられなかったものをすべて明かした彼女を、丞は静かに抱きしめるのでした。
結局丞の実家に連れて帰って、あたたかい正月を過ごします。
一年で最も家族というつながりが濃厚となる時間を共有することは、家族のあたたかさを知らない主人公にとっては戸惑うものでしたが、悪い心地ではありませんでした。
丞を育んだ家のあたたかさに、家族の思いやりに、あたたかい涙を流す彼女を見て、丞は「放っておけない」と感じるようになります。
それから相変わらずの日常が続くのですが、以前よりも丞が主人公を気にかけるようになりました。
はじめは可哀想な自分に同情してくれているのかもしれない、と思っていた主人公ですが、丞の本心からの気遣いに少しずつその思いは薄れていきます。
マスカレードパーティで、丞はいづみに対し「監督の事はすぐに見つけられる」と話します。そして会場に来ているはずの主人公の姿を探します。
ドレスの色も形も知っている。なのに、丞はその姿を探し出せません。
各地探し回ってもその姿は見えず、焦り始めた丞の背に声をかける人影。
それはずっと会場の中にいた主人公でした。
「私、気配を殺すの…癖みたいだから」
生い立ちの上に得た処世術を冗談に笑うその顔を見て、
丞は一層「(目を離せない、放っておけない)」と思うのでした。
それからも二人、月日を重ね、結婚、出産…と恋人から夫婦、そして家族となっても二人の時間は続いていました。
あたたかい家庭を知らない主人公の子育てや家庭というモノの在り方についてはとても苦労がありましたが、丞も相手の気持ちを考えるという歩み寄りを経て、少しずつそれは歪ながら形となって行きました。
舞台俳優からテレビ、ドラマ、映画でも活躍していく高遠丞。
それを誰より喜び、一番近くで応援していたのは主人公でした。
ベテランと呼ばれるようになっても、それでも、繊細に泣くという演技だけは納得できないまま、今日まできてしまいました。
主人公が息を引き取りました。
あっけない死でした。最期まで丞の事を応援していました。
丞はこれまでの人生、全て自分の力で切り開いてきたと自負しています。
もちろん良い仲間、家族、パートナーと巡り合い、切磋琢磨した結果と思います。
けれど決してなれ合う事なく、己を見据えて突き進んできたはずでした。
亡くなったのは妻です。自分ではありません。
けれどどうしようもなく、胸がぽっかりと空いたような虚無感が漂うのです。それでも演技は、出来てしまうのですが。
紬と仲互いをした時、悲しくて、寂しくて。
けれど何より憤りが勝っていた。
いくらかの女性と付き合い、別れを繰り返しても、
女々しくすがるような事はなく、いい恋だったと前を向いていた。
自立のもと、すべて自分と他人とを切り離してきたはずだったのに。
どうしようもない悲しみと愛おしさと懐かしさとが丞を襲うのでした。
言葉では言い尽くせない焦がれる胸の衝動を涙へと逃がす。
瞳に溢れんばかりの衝動を溜め込んでいる傷つきやすい妻。
よく泣いていた彼女はこういう気持ちだったのだろうか。
高遠丞最後の舞台で、とうとう丞は繊細に泣く演技を果たす。
彼女はその人生全てをかけて、高遠丞を「万能の役者」へと仕立てたのであった。
(高遠丞に一矢報いる(?)傷をつける、女の話)
( 19.01.06 雑話(返信)から引用 )