少女は誰にも愛されないと思っている





「いらっしゃい、美夜さん。今日の体の調子はどう？」

『普通、です。』


おずおずと保健室に入っていく美夜。

学園に来てからというものの、この少女はたびたび保健室にお世話になっている。
傷が多く、体がかなり弱っていたので体調管理が必要だったからだ。
彼女が普通の人ではないのも、その理由の一つであった。



ー呪い？

ー学園で調べた所、どうやらあの少女は呪われているらしい

ー何でも親がとある術者に恨まれ、生まれる子に呪いをかけたんだとか



そんな話が、学園に広まっていた。
少女に確認をしたところ、彼女もそれを肯定したらしい。


「（どうしたら、この子を救えるんだろう。）」


伊作はずっとそのことについて考えていた。
彼にとって呪いといったものは恐怖の対象ではない。
自分自身もあまりに不運であったがために、近寄ると不運が移ると言われて避けられた経験がある。
だから美夜の置かれてる状況や、その気持ちがよくわかるのだ。


『その怪我、どうかされたんですか？』

「これ？さっき石につまづいちゃって。もう大丈夫だよ。」

『それなら、良いのですが。』


伊作は、美夜が誰も気にもとめないような怪我であっても心配してくれるのが嬉しかった。
自分以外の人たちは、誰もが怪我をたいしたことないと思って放置してばかりなのだ。

どんなに小さな怪我でも、軽く見てはいけないのに。
いつかは大きな怪我になるのに。
少なからず痛めているものなのに。
それをわかってくれる鈴音のために、伊作は精一杯尽くしている。


「はい。これで今日の診察は終わり。」

『保健委員さん、ありがとうございます。』


けれど、少女は伊作の心情など全く知らない。
保健委員だから仕方なくやっていることなのだろうと、思っていた。
なにせ、傷ついたことしかなかったのだから。

だがしかし不運ゆえか、彼はそれに気づかない。