・凍り豆腐
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山を登っている途中で、スズネさんに出くわした。
別れた日に俺が降りて行った方向を頼りにわざわざ迎えに来てくれたらしい。
そこで、ようやく俺は彼女一人に暗い夜道を出歩かせてしまったことに気が付いた。
豆腐作りに夢中だったとはいえ、そんな危険なことをさせてしまっただなんて!
「すいません!よく考えれば、こんな夜に山で会おうだなんて不用心にもほどがある話でした。」
『いいえ。それを承諾した私も悪いんです。でも、どうしても約束を守りたくてきちゃいました。』
彼女も、あとからその危険性に気づいたらしい。
それでも会いに来てくれた。
俺のことを信頼して。
『それに、久々知さんがいなかったら、一人っきりでしたから。余計に危なかったですよ。あなたのおかげで、諦めずにすみました。ありがとうございます。』
「そんな、お礼なんてやめてくださいよ。むしろ、お礼を言いたいのは俺の方なんですから。せめて帰りは俺に送らせてくださいね?」
二人でゆっくりと、豆腐が崩れないように山を登っていく。
今夜は本当に寒くて、だからなのか山賊も姿を見せることはなかった。
おかげで彼女といろんな話をすることができた。
とはいっても、ほとんど俺の話ばっかりだった。
ここに来るまでに話していた同級生たちとのこと、豆腐作りへのこだわり。
彼女は、飽きることなく聞いてくれていた。
「そろそろですね。」
なんだかあっという間だった気がする。
いつの間にか、俺たちは頂上へとたどり着いていた。
「『わぁ・・・っ。』」
森を抜けて見えた山の空は、見たことが無い美しさだった。
冬の夜空はより澄んで見えるというけれど、それだけではない。
だって、今夜は特別な夜だから。
『久々知さん、見えますか?あの夜空。』
「はい。どの星も綺麗に輝いてますね。」
『よかったぁ。私だけの、夢や、錯覚ではないんですね。』
「当たり前じゃないですか。だから俺、こうして豆腐を持ってあなたに会いに来たんですよ?・・・あ。」
『そ、そうだ豆腐!』
俺としたことが、うっかり忘れてしまうところだった。
二人で協力したのもあってか、わりと早く作業をやり遂げることができた。
その後は、カマクラに入りながら二人で星空を見上げた。
寒いだろうと、俺が豆腐を持ってくる代わりに布を持ってきてくれていたので、一緒にそれにくるまった。
正直、恥ずかしくなるぐらい近い。
『寒くないですか?』
「だいぶ寒くなくなりました。お気遣い、ありがとうございます。」
むしろ俺としては、君の方が心配なんだけど。
多くの星々が空にちりばめられていて、その全てが光り輝いている。
彼女の話を聞いていなければ、こんなにも素晴らしい夜空を見ることも、感動することもなかっただろう。
「スズネさん、今回は本当にありがとうございました。俺、今すごく胸がいっぱいで。なんか幸せです。」
『久々知さん・・・。私も、そう言っていただけてとても嬉しいです。っくしゅ。』
やはり彼女はまだ寒かったようだ。
くしゃみのあと、少し身震いしたのがわかった。
「あの。もう少し、くっついても良いですか?俺も、まだ少し寒いので。」
『あ、はい。』
相手も了承してくれたので、こちらからしっかりと包み込むようにくっついた。
こうでもしないと、彼女にこの寒さは辛いだろう。
彼女は戸惑いながらも、小さな声でお礼を言ってくれる。
寒かったけど、今はむしろ熱いぐらいだ。でも、離しはしなかった。
そうしているうちに、時間は過ぎていって。
早朝の頃には、豆腐の仕上げの作業に取りかかっていった。
「そうだ!俺の豆腐料理、食べてくれませんか?今回のお礼に、この凍り豆腐で作った俺の特製の豆腐料理を、ぜひともあなたに食べて欲しいんです!」
『いいんですか!?むしろ大歓迎ですっ。』
俺がどれだけ豆腐にこだわってるか。豆腐料理にのめりこんでるか等々。
いろいろ話していたからか、とても喜んでくれていた。
あれから何時間かかったことだろう。本当に夢のような時間だった。
「さ、帰るとするか!」
彼女を家まで送ってから、分けあった豆腐を土産に忍術学園まで戻った。
凍り豆腐を見た皆からはまた質問攻めで、いつもの俺だったら豆腐の基礎から話したくなるほど語ったことだろうが、なぜだかそんな気にはなれなかった。
あの一時は、俺だけの心にしまっておきたい。そんな風に思えたから。
そのぐらい、幻想的な出来事だった。
さて、それからどうしたのかというと。
せっかく作った凍り豆腐だ。もったいないけど食べない訳にはいかない。
実は、彼女を家に送ってからすぐに煮込んで試食していた。
待ちきれない!という気持ちもあったが、最初の一口はどうしても彼女と二人で食べたかったのだ。
その一口がもうたまらないほど美味で、二人して言葉を失った!
忍術学園の皆にも味わって欲しくて、食堂のおばちゃんと一緒にふるまうと、皆も大絶賛だった。
春の新学期。もう凍り豆腐は残っていなかった。
だけど俺はまた、スズネさんのそばで。
今度は花見をしながら寄り添っていた。
〆
別れた日に俺が降りて行った方向を頼りにわざわざ迎えに来てくれたらしい。
そこで、ようやく俺は彼女一人に暗い夜道を出歩かせてしまったことに気が付いた。
豆腐作りに夢中だったとはいえ、そんな危険なことをさせてしまっただなんて!
「すいません!よく考えれば、こんな夜に山で会おうだなんて不用心にもほどがある話でした。」
『いいえ。それを承諾した私も悪いんです。でも、どうしても約束を守りたくてきちゃいました。』
彼女も、あとからその危険性に気づいたらしい。
それでも会いに来てくれた。
俺のことを信頼して。
『それに、久々知さんがいなかったら、一人っきりでしたから。余計に危なかったですよ。あなたのおかげで、諦めずにすみました。ありがとうございます。』
「そんな、お礼なんてやめてくださいよ。むしろ、お礼を言いたいのは俺の方なんですから。せめて帰りは俺に送らせてくださいね?」
二人でゆっくりと、豆腐が崩れないように山を登っていく。
今夜は本当に寒くて、だからなのか山賊も姿を見せることはなかった。
おかげで彼女といろんな話をすることができた。
とはいっても、ほとんど俺の話ばっかりだった。
ここに来るまでに話していた同級生たちとのこと、豆腐作りへのこだわり。
彼女は、飽きることなく聞いてくれていた。
「そろそろですね。」
なんだかあっという間だった気がする。
いつの間にか、俺たちは頂上へとたどり着いていた。
「『わぁ・・・っ。』」
森を抜けて見えた山の空は、見たことが無い美しさだった。
冬の夜空はより澄んで見えるというけれど、それだけではない。
だって、今夜は特別な夜だから。
『久々知さん、見えますか?あの夜空。』
「はい。どの星も綺麗に輝いてますね。」
『よかったぁ。私だけの、夢や、錯覚ではないんですね。』
「当たり前じゃないですか。だから俺、こうして豆腐を持ってあなたに会いに来たんですよ?・・・あ。」
『そ、そうだ豆腐!』
俺としたことが、うっかり忘れてしまうところだった。
二人で協力したのもあってか、わりと早く作業をやり遂げることができた。
その後は、カマクラに入りながら二人で星空を見上げた。
寒いだろうと、俺が豆腐を持ってくる代わりに布を持ってきてくれていたので、一緒にそれにくるまった。
正直、恥ずかしくなるぐらい近い。
『寒くないですか?』
「だいぶ寒くなくなりました。お気遣い、ありがとうございます。」
むしろ俺としては、君の方が心配なんだけど。
多くの星々が空にちりばめられていて、その全てが光り輝いている。
彼女の話を聞いていなければ、こんなにも素晴らしい夜空を見ることも、感動することもなかっただろう。
「スズネさん、今回は本当にありがとうございました。俺、今すごく胸がいっぱいで。なんか幸せです。」
『久々知さん・・・。私も、そう言っていただけてとても嬉しいです。っくしゅ。』
やはり彼女はまだ寒かったようだ。
くしゃみのあと、少し身震いしたのがわかった。
「あの。もう少し、くっついても良いですか?俺も、まだ少し寒いので。」
『あ、はい。』
相手も了承してくれたので、こちらからしっかりと包み込むようにくっついた。
こうでもしないと、彼女にこの寒さは辛いだろう。
彼女は戸惑いながらも、小さな声でお礼を言ってくれる。
寒かったけど、今はむしろ熱いぐらいだ。でも、離しはしなかった。
そうしているうちに、時間は過ぎていって。
早朝の頃には、豆腐の仕上げの作業に取りかかっていった。
「そうだ!俺の豆腐料理、食べてくれませんか?今回のお礼に、この凍り豆腐で作った俺の特製の豆腐料理を、ぜひともあなたに食べて欲しいんです!」
『いいんですか!?むしろ大歓迎ですっ。』
俺がどれだけ豆腐にこだわってるか。豆腐料理にのめりこんでるか等々。
いろいろ話していたからか、とても喜んでくれていた。
あれから何時間かかったことだろう。本当に夢のような時間だった。
「さ、帰るとするか!」
彼女を家まで送ってから、分けあった豆腐を土産に忍術学園まで戻った。
凍り豆腐を見た皆からはまた質問攻めで、いつもの俺だったら豆腐の基礎から話したくなるほど語ったことだろうが、なぜだかそんな気にはなれなかった。
あの一時は、俺だけの心にしまっておきたい。そんな風に思えたから。
そのぐらい、幻想的な出来事だった。
さて、それからどうしたのかというと。
せっかく作った凍り豆腐だ。もったいないけど食べない訳にはいかない。
実は、彼女を家に送ってからすぐに煮込んで試食していた。
待ちきれない!という気持ちもあったが、最初の一口はどうしても彼女と二人で食べたかったのだ。
その一口がもうたまらないほど美味で、二人して言葉を失った!
忍術学園の皆にも味わって欲しくて、食堂のおばちゃんと一緒にふるまうと、皆も大絶賛だった。
春の新学期。もう凍り豆腐は残っていなかった。
だけど俺はまた、スズネさんのそばで。
今度は花見をしながら寄り添っていた。
〆